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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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10-07 夢の土地

 鉱山、温泉にはこれまでに触れることになったが、もう一つ、オークスバレーにおける重要な地……ハーフオークの里。
 夜霧 朔(よぎり・さく)は、(解放戦役以来)オークスバレーに来ていたハーフオークらと共に、パラ実の襲撃を逃れ、その里へと歩いていた。
 パートナーの朝霧 垂がかつて訪れた、峡谷の外れの村。そこよりもっと、奥地の山の中である。
 実際には、ハーフオークはそこから第四師団本拠のあるオークスバレーにやって来ていたが、こちらからは、誰もまだその土地を訪れたことはないのだ。それは隠れ里のように、探そうとしても見つかることはない土地であると言われていた。
 この緊急の事態に際し、オークスバレーでハーフオークらの面倒を見ていた夜霧を連れ、彼らはひとまずはその里へと避難すべく、延々と歩いてく。
 夜霧は、パラ実の襲撃によって補給路の絶たれたことになる遠征軍を心配し、彼らに、食糧を運んでもらえないか、頼み込むつもりだった。ハーフオークには、ハーフオークの裏道がある。そこを伝って、この峡谷を行き来できると言われていた(「オークスバレー解放戦役」参照)。実際にどういう道なのかは、わからない。
 とにかく、その後は……
 夜霧は、思うと、暗い面持ちになっていた。
 ……戦わねばならない。
 戦争兵器として扱われた自らの過去を思い出す。
「教導団がこの地を解放したときに戦ったという火の機晶姫……
 彼女のように強くはなくとも、人とハーフオークの共存という垂さんの夢の為に、私はこの土地を必ず、奪い返してみせます……!」
 どこかぼんやりとした森の道を行く。何処だろう?
 それに、もう何日も歩いている気がする……。
 火の機晶姫か。
 そう言えば、ハーフオークの里には、夢の機晶石がある、と言われていた。
 垂も、そのことを言っていたことがある。でも、機晶石のことに触れようとすると、ハーフオークは言葉を濁してしまうと。
 研究者の中には、伝承に過ぎない、という者もある。でも、火の機晶石と夢の機晶石は確かに、あったのだ。ならば?
 夢……
 辺りを歩く、ハーフオーク達の姿が、周囲の木々が、山々が、夢の中の景色のように不思議とぼんやりしてくる。
 誰にも知られない土地。どこへどうつながっているのか、わからない、道。そこにあるともないともいう、不思議な夢の、石……
 何処へ……辿り着こうとしているのだろう。