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リアクション
★ ★ ★
「気を抜いちゃだめだ。そろそろ奴らが出てくる季節だものな」
周囲を注意深く調べながら、春夏秋冬 真都里(ひととせ・まつり)は世界樹内を進んで行きました。
奴らとは、マジックスライムのことです。去年は大発生して大変な事件を引き起こしました。今年はそんなことにならないようにと、春夏秋冬真都里は自主パトロールを始めたのでした。
ひとまず去年の被害場所を集中して回りましたが、今のところ怪しいところはありません。あの事件のせいで大幅に改修されて今やジャングル風呂化してしまった大浴場では、なんだかタオル一枚の大量の学外の女の子たちがいて焦りましたが、最近ではよくあることです。はっきり言って、世界樹を温泉か何かと勘違いしているとしか言いようがないのですが、本当にへたな温泉よりも傷や精神の回復に効果があるのですから、なまじ間違っているとも言いがたいのが困ったところです。
「後は、以前教導団の人たちが大量のスライムを見たという噂が立った修練場だな」
春夏秋冬真都里は、修練場にむかいました。途中、何やら騒ぎが起こって、カフェコーナーで女の子たちが男の娘らしい子たちをひんむいているというとても気まずいシーンにも出くわしましたが、ひとまずマジックスライムによってすっぽんぽんにされたわけではなさそうでした。すぐに校長先生の魔法で現れた蔓草によって全員〆められていましたが。なむなむです。
それにしても、何が起きているのでしょうか。
気を引き締めながら、春夏秋冬真都里は修練場に入っていきました。
「そこの男、止まりなさい!」
「止まってくださいです」
突然、四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)と赤羽 美央(あかばね・みお)のぺったんこコンビに誰何されて、春夏秋冬真都里は立ち止まりました。
「胸検査です。胸を見せなさい!」
「見せてください」
完全な戦闘態勢で、二人が近づいてきます。
「ちょっと、いきなりなんだ!? 俺はマジックスライムの警戒にあたっているだけなんだが。だいたい、胸検査ってなんだよ」
反射的に身構えながら、春夏秋冬真都里が聞き返しました。
「男のくせにたっゆんな不届き者を成敗して回っているのです」
「胸で遊ぶなんて……。成敗なのです」
「はあっ!? ちょ、ちょっと……」
まったく状況の読み込めていない春夏秋冬真都里を、四方天唯乃と赤羽美央がボディチェックしていきます。
「ふっ、あなたはノーマルなようね」
ひとまず、四方天唯乃が警戒を解きました。
やれやれと、春夏秋冬真都里も肩の力を抜きました。思わず調べ返してやりたい衝動にかられましたが、逆襲されそうなのでやめることにします。
「あら、また誰か来ます」
赤羽美央が、修練場の入り口をさして言いました。
「あら、こんな所にも人がいたんですね」
つかつかと中に入ってきながら、志方綾乃が言いました。その一足ごとに、たっゆんな胸がむかつく……いえ、豪快にゆれます。
「胸検査です。胸を見せなさい」
「ううっ、ありえない胸です。でも、女の子ですから、ぎりぎり許してあげたいです。男の子だったら、粛清でした」
志方綾乃のたっゆんに敵意を覚えながらも、赤羽美央たちはぎりぎり自重しました。
「あら、男の子のたっゆんを探しているの? だったら、いますよ。いちごちゃん♪」
志方綾乃が、楽しそうに仲良いちごを呼びました。
「呼゛ん゛た゛? 綾゛乃゛お゛姉゛ち゛ゃ゛ん゛」
ずんと、修練場の床と空気すらふるわせて、仲良 いちご(なかよし・いちご)ちゃんが現れました。ちなみに、繰り返しますが、みごとなたっゆんです。多少、筋肉と区別はつきませんが……。
「うぎゃあ!」
「て、敵なの!?」
「だから、何が起こっているんだ!?」
一瞬にして、四方天唯乃たちにパニックが広がります。
「ハ゛ク゛し゛ま゛し゛ょ゛ー」
仲良いちごちゃんが、ドスドスと走り出しました。
「いやあ!!」
「こないでー」
四方天唯乃と赤羽美央が、しびれ粉と毒虫の群れを仲良いちごちゃんにむかって投げつけました。春夏秋冬真都里は、真っ先に逃げだしています。
「気゛持゛ち゛い゛い゛」
心地いい攻撃に、仲良いちごちゃんがたっゆんな胸をだだーんとふるわせて恍惚としました。誰も、仲良いちごちゃんのハグチャージから逃れることはできません。
「ほーっほほほほほほ、さあ、いちごちゃん、あなたの愛を彼女たちにも伝えてあげなさい」
「分゛か゛っ゛た゛」
志方綾乃に言われて、仲良いちごちゃんがスピードをあげました。
「いやー」
「助けてー」
「巻き込むなー」
必死の形相で、春夏秋冬真都里たちが逃げていきます。
「どこか、どこか、逃げ込める場所は……」
追い詰められた春夏秋冬真都里が、修練場の奧にいくつもある扉の一つに駆け寄りました。
「待ってー」
四方天唯乃と赤羽美央が、おいていかれては大変と、春夏秋冬真都里に追いついて我先に逃げようとします。
「無駄なことを。やっておしまいなさい、いちごちゃん」
労せず追いついた志方綾乃が、仲良いちごちゃんに命じました。
「は゛い゛」
仲良いちごちゃんと志方綾乃が、春夏秋冬真都里たちに迫ります。
「ひー!」
三人は、やっとのことで修練場の奧の扉を開きました。
ざっぱーん。
何か、赤い津波のようなものが扉の奥から噴き出してきました。あっと言う間に、春夏秋冬真都里や仲良いちごちゃんまでをも呑み込みます。
一瞬の静寂の後、その赤い津波は、いそいそと修練場の奧へと戻っていきました。律儀に、ちゃんと扉を閉めていきます。後には、すっぽんぽんになった仲良いちごちゃんと春夏秋冬真都里と、鎧やコートだけを残された女の子たちが転がっていました。
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