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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)
「了解した」
 そのまま、ローザマリアは上杉 菊(うえすぎ・きく)と共にティセラ・クローンを追う。
「ティセラがいっぱいね」
 残ったグロリアーナはふうっとため息をつくと
「女王気取りか。惨めなババアだの……」
 とアンジェラをサラッとババア呼ばわりしてしまう。
 しかしアンジェラは顔色一つ変えない。
「女王はなるものではない。真の女王とは、生まれたその瞬間から女王なのだ――其方のような変態ババアが、軽々しく名乗ったところで滑稽極まりないだけだぞ?」
 クスッとわらうアンジェラ。
「どこかで見た顔ね。イングランドの処女王さま。猫ちゃんが傷口を舐めないように、ってあなたの名前が付いたエリザベスカラー、滑稽よねぇ。あれが美しいと思っていた時代もあったなんて。それが今では動物の医療品。ふふ、ええそうね。本当の女王様にふさわしいのは、確かにあなたね。愛する男やメアリー・ステュアートを処刑してきたあなただもの。そのくせ処女でもないのに、ヴァージニアなんて州をアメリカに作らせる、そんな厚顔無恥、私には到底無理だわ。地位や国の為に自分のみならず、愛するものを犠牲にするなんて、くだらない生き方よ。女王の座なんて欲しくもないわ。私はいくつになっても私。老女になろうと、堂々と振る舞うのがラテンの女の生き様よ」
 そういうと、アンジェラは鞭をしなやかに振るい、グロリアーナが繰り出してくるさざれ石の短刀を次々とはね退ける。
 上杉 菊(うえすぎ・きく)は、グロリアーナの攻撃開始に呼応してブリザードを繰り出し、弓で射抜きながら多くの敵を引き付けた所で再度ブリザードを使う。
 アンジェラに立ち向かう他の契約者をブリザードや弓で援護しつつ他の一般の隊員を弓で射抜き手勢を減らさせようとするが、アンジェラ隊は本気で女に興味が無いらしく、一気に撤退すると同時にパンツを取られて頭に来ていたのか、ベアトリーチェがボウガンで打ちまくり、その上、矢が尽きたところでクレイモアをガンガン振りまわす。
 その間にアンジェラは
「マリア、部下を連れてミケロットの元へ向かいなさい!」
「了解!」
(ティセラ・クローン…いくらティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)そっくりとは言え、あの中身はほぼ、シャムシェル・ザビクだわ…めんどくさいことにしたくない)
 アンジェラはローザマリア、菊と対峙しながら、全体の状況を伺っている。
 こんなところで、死ぬつもりはアンジェラにはさらさら無かったのだ。それこそ、老女になりでっぷりとパスタで太り、マンマミーアとして家族を取り仕切って生きていくつもりだったのだ。

 ミケロットの近くには藤野 真珠(ふじの・まこと)も居たが、黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)がかばうようにして、ミケロットや他の部下達から守っている。
「真珠、逃げよう!」
「…にゃん丸さん…そういうわけにはいかないの! 姉様と伯父様を止めなければ!」
「さて、そう上手くいくのかしら」
 そこにすうっと美しい影が現れた。
「ティセラ…!」
 一同は驚く。
「いや、違う、こいつはティセラじゃない」
 ミケロットはシャープシューターを構え治すと、ケセアレに攻撃を加えようとする生徒たちだけに焦点を当て、しかも、急所を外して撃っていく。
「…あんた、何してんだよ」
 にゃん丸の言葉にもう一丁のシャープシューターをミケロットは突きつける。
「う…」
「にゃん丸!」
「にゃん丸さん!」
 リリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)と真珠が同時に叫ぶ。が、ミケロットは照準をすぐににゃん丸から外してしまう。
「…手加減してるのかよ」
 にゃん丸の言葉にミケロットは応えない。
 その代わり、ティセラそっくりのティセラ・クローンがしゃべり出す。
「ミケロットは優柔不断ですわ。未だ迷っているのね。でもミケロット、あなたには何もできないですわ」
 ティセラとそっくりの口調で立ち居振る舞いもエレガントであったが、微妙におかしな点がある。
 そこにローザマリアがスナイパーライフルで、ティセラを一発必殺の腕で射貫こうとするが、しかし、ティセラはその弾丸を巨大なレプリカ・ビックディッパーで防いでしまう。
「ふふふ、面白くてよ。もっと私を楽しませて」
「ティセラの外見と、シャムシェルの中身…?」
 ローザマリアはその言動に違和感を覚える。



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 閃崎 静麻(せんざき・しずま)は崩壊しかけている城の中を調べてルクレツィアの清符が何なのかを調べ上げていた。資料や研究記録、城に居た人の日誌、過去を記した物を手当たり次第当たっていく。
「…なんだ、これは」
 ある本の中に『清符は【命の復元】を司る』と記されていることを見つける。
「いのちの、ふくげん…? その黄金の血のみを以て、命を再生すること叶うなり…」
 静麻は早速、「おやっさん」こと如月佑也にメールで連絡を入れておいた。
「『黄金の血』とは一体何を差すんだ…」
 静麻はそれをも調べようとしたが、崩壊が進み、資料部屋も危なくなってきたため,撤退を余儀なくされてしまう。



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 天 黒龍(てぃえん・へいろん)は、高漸麗に携帯で城が爆破され崩壊し始めている事を知らせた上で大型飛空挺にいる生徒に
「城に乗り込んだ生徒の小型飛空挺や空飛ぶ箒の回収ができないか、頼んでみてくれ!」
 と携帯で連絡を入れた。
「やってみる!」
 漸麗の言葉に生徒達は残っていた飛行艇を駆使して、空に浮かんだままの飛行艇や空飛ぶ箒の回収にあたった。
「もし、城を外から見て危険そうな箇所がわかれば、それも教えて欲しい…内部の生徒達へ伝える!」
 高 漸麗(がお・じえんり)は先刻、激しく起こった爆音に驚き、真珠達の安否を心配していた。
(黒龍くんからの要望にはなるべく応えたいな…操縦室まで行けば誰かいるはずだ…壁伝いに向かってみよう…!)
「高 漸麗、おまえの手伝いをしてくれる人間はいないか?」
「えっと…」
「ワタシが手伝うわよん」
 ニセフォール・ニエプス(にせふぉーる・にえぷす)が漸麗の手を取る。
「これが終わったら、浮遊島の脱出の準備に行くけど、漸麗ちゃんのお手伝いくらいならおちゃのこさいさい。任せておいて、黒龍ちゃん」
「…頼む」
「ちゃん」づけされて、少々、戸惑った黒龍だった。