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リアクション
間章
太平洋上空。
『しかし、たかだか艦一隻沈めるのに、これだけの戦力を割くとはねえ。上も何を考えてるんだか』
十数機のイコンが飛行している。それらは、パラミタの旧王都戦において鏖殺寺院が駆っていた機体だ。
『海上都市でパラミタと繋がっているとはいえ、地球産のエネルギーがなければ都市の機能は停止する。その補給を断つことが目的だ』
どうやら、寺院のパイロットはそう言い聞かされているらしい。
『だが、そのためにロシア軍を敵に回すのは分が悪いだろう』
『所詮は地球の軍隊だ。我々のイコンには手も足も出まい。今回は、連中への見せしめでもあるんだとよ』
無線通信で二人のパイロットが会話をしている。若い声の方は、イコンの力に自信を持っているらしい。
『それに、今回はカミロ様も出撃しているんだ。何を不安に感じる必要がある?』
『あの方が前線に出られているからだ』
取るに足らない作戦行動ならば、自分達だけで十分だと、彼は考えている。
『あんまり気にしたって仕方ねーだろ。俺達は命令通り、タンカーを発見次第襲撃すればいいんだ。どうせ、お偉いさん方の考えなんて分かんねーんだからな』
『……使い捨ての駒にされてなきゃいいが』
『なんだお前、まさか日本のイコンにビビってんのか? だらしねーヤツだな』
『そうじゃない。日本製イコンに搭乗しているのは、ほとんどがガキだって話だ。万が一にも負けることはないだろう』
『じゃあ、なんだよ?』
重々しく、パイロットの一人が口を開く
『カミロ様が出ているってことは、俺達の手に負えない不確定要素を上が危惧しているから、という可能性がある。敵の隠し玉がタンカーに乗ってるかもな。それを見越した上で、俺達は単なるデータ収集のための生贄にされてる、ってことも考えた方が良さそうだってことだ。俺達レベルのパイロットなど、いくらでも代わりはいるのだからな』
『お前は難しく考え過ぎなんだよ。それに、例えそんなもんがあったとしても、出る前に潰しちまうんだから関係ねーよ』
『……そうだな』
* * *
「カミロ様、暗号通信です」
「なんだ?」
カミロ・ベックマンの駆るシュバルツ・フリーゲはイコン部隊の後方でホバリングした状態だった。
量産型であるシュメッターリングの姿を眺めながら、待機している。
「タンカーはやはり偽装のようです。内部にはロシア海軍、極東新大陸研究所の研究員、そして契約者達が乗っていると」
ルイーゼ・クレメントが説明する。
「そして、おそらく『ファーストコントラクター』あるいはそれに準ずる何かが搬入されているのは間違いないとのことです」
「あの男の予測も馬鹿には出来ないものだな。だが、向こうも油断はしていなかったようだ。契約者が乗り込んでいるのがその証拠だ」
カミロが不敵に微笑む。
「だが、まだ甘いな。内部の伏兵に気付かないとは」
「彼らは、隠密行動に特化するよう、モデリングされています。地球人は言うに及びませんが、契約者でも発見するのは困難でしょう。テストはおおむね順調なようです」
タンカー内部の潜入要員について、二人は話している。
そうこうしているうちに、前方を行くイコンはレーダー上にタンカーを捕捉する。そろそろ頃合だ。
「ルイーゼ、そろそろだ。通信を入れろ――行動開始、と」
「はい、カミロ様」
いよいよ、タンカー内部に潜む影が動き出す。
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