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ダークサイズ本拠地・カリペロニア要塞化計画の巻

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ダークサイズ本拠地・カリペロニア要塞化計画の巻

リアクション

ダークサイズ本拠地・カリペロニア要塞化計画の巻



 シャンバラ南端の都市、空京から離れて東に広がる雲海には、名もなき小さな島々が浮いている。
 その島の多くは放置されているが、わずかに買い取られたり使用されている島もある。
酔狂な富豪が別荘を持ったり、よからぬ研究を人知れず行うマッドサイエンティスト、浮き世を捨てた修験者など、思い思いに島を利用しているようだ。
そして、その島々のうちの一つには、パラミタ大陸征服を密かに狙う、悪党どもの本拠地が置かれていた……

 カリペロニア島

 何かの言い間違えのような名を冠した一つの孤島。
 今まで見向きもされないどころか、その存在は全く知られてなかったわけだが、その島に今日、気球や飛行艇をはじめ、様々な交通手段で多くの人々が大挙して押し寄せている。

「あれが、カリペロニアですか…」

 島へと向かう数機の小型飛空艇。
 その先頭の一機を駆る松平 岩造(まつだいら・がんぞう)は、双眼鏡をのぞきこむ。

「ダークサイズめ、これ以上好き勝手にはさせんぜ。俺たちが来たからには、今日が貴様らの最後だ」

 飛空艇のハンドルを握るドラニオ・フェイロン(どらにお・ふぇいろん)も息巻いている。
 武者鎧 『鉄の龍神』(むしゃよろい・くろがねのりゅうじん)が、他の飛空艇に無線で通信を入れる。

「よいか、おぬしら。今回の作戦の大枠は、さきほど空京で打ち合わせた通りじゃ。各々ぬかりのないようにの」

 今回も、正義の名のもとに同盟を組んで、打倒ダークサイズのために集結した者たちがいる。

「いやーっはっはっは! この俺がいるからには心配ないですよ! どうも、お茶の間のヒーロークロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)です! いやあ、舳先で浴びるパラミタの風は気持ちいいですね!」

 クロセルは飛空艇の舳先に片足をかけて腕を組み、誰に言っているのか、大声で自己紹介までしている。
 そんなクロセルに、ドラニオがクレームをつける。

「おい、貴様邪魔なんだよ。前が見えねえだろうが」
「いや、失敬失敬。それにしても助かりました。俺以外に飛空艇を持参していない人がいるとは。おかげでレンタル費用がだいぶ浮きましたよ」
「れ、レンタルって言うな! 恥ずかしいだろ」

 カリペロニアに向かう交通手段として、空京でのレンタル飛空艇を選んだクロセルと、岩造たち。彼らは人数的にも共同で飛空艇をレンタルしていた。
 クロセルは上空を見上げ、

「それにしても、あれはうらやましいですねえ。俺もワイバーン欲しいなぁ」

 と、飛空艇より少し上を颯爽と飛ぶ、ジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)のワイバーンを見上げる。

「くくく、ダークサイズねえ……やつらがどれほどのものか。本当に俺のライバルとしてふさわしいかどうか……楽しみだぜ」

 ワイバーンの背中の上で、ジークフリートはダークサイズとの戦いを思い浮かべて、にやりとする。
 それにクリームヒルト・ブルグント(くりーむひると・ぶるぐんと)が話しかける。

「ジーク、火薬の準備は万端だ。館の完成前には仕掛け始めたい。やつらに細工がばれないように」
「よし。さあゆけ、ワイバーン!」

 楽しみで仕方なくなったジークフリートは、ワイバーンに発破をかける。

「あっ! 抜け駆けずるい! おまえらが先に行ったら、俺たちのことがばれちまうだろー!」

 スピードアップしたジークフリートたちに、文句をつけているのはエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)。彼は自前の小型飛空艇から、同じく飛空艇持参の湯島 茜(ゆしま・あかね)に無線を入れる。

「なあなあ、ダークサイズを捕まえたら、報奨金って出るかな? 出るよな?」
「え? さあ……どうかな。誰かが懸賞金かけてたらでるだろうけど」
「え、かかってねえの? あいつら空京放送局乗っ取ったんだろ?」
「それはそうだけど、一応ちゃんとお金出して買ってるからねぇ」
「ええ! あいつらそんな金持ってんの? そういやカリペロニアなんて島一つ持ってるもんなぁ」
「そんな名前出さないでよ! 悪の拠点がそんなえっちい名前なんて冗談じゃないっ!」

 茜はダークサイズ拠点の卑猥な響きが許せないらしい。
 そんな茜の後ろでたくさんの掃除道具をを持参して、準備万端名装いのエミリー・グラフトン(えみりー・ぐらふとん)

「島は結構広いようであります。であれば、ダイソウトウの館もかなりの広さでありましょう。ハウスキーパーの腕が鳴るであります! ピッカピカにしてみせるであります」
「ちょっとエミリー。あたしたちの目的はあくまで打倒ダークサイズだからね?」

 目的を見失わないよう、あくまでエミリーに念をおす茜。
 一方、グラン・アインシュベルト(ぐらん・あいんしゅべると)は、老人でありながら力強く飛空艇を操る。アーガス・シルバ(あーがす・しるば)オウガ・ゴルディアス(おうが・ごるでぃあす)伽耶院 大山(がやいん・たいざん)も後ろに控えている。

「まさかダークサイズが本拠地なぞ持っとるとはのう。要塞になるとなれば、阻止せんわけにはいかんわい」
「グラン殿、落とし穴用のスコップが三つしかありませぬが、これでよいのでござろうか?」

 オウガが後ろからグランに声をかける。

「む? 当然四つ必要じゃろうが。罠を作る道具の用意は大山殿に任せておったはずじゃが」

 と、グランの指摘に、大山はどきりとする。

「お、おかしいですな。確かに準備をしたはずですが……仕方ない。道具が足りないのであれば、我は飛空艇で待機いたします」
「何を申される大山殿! 拙者たち四人で罠を張らねば、ダークサイズに大けがを負わすことは叶わぬでござるよ」
「しかしですな、我は山伏ですから、その、力仕事はちょっと……」
「なんと大山殿! 貴殿、サボるつもりでござるか! スコップを忘れたのもわざとでござるな!?」
「いや、サボるとかそういうことでは……」
「あのカ、カリペルニャ、カリペローニャ……言いにくいでござる」
「カリペロニアだ、オウガ殿」

 カリペロニアを上手く言えないオウガに、アーガスが冷静に突っ込む。

「そう! そのカニペロリーアは」
「そっちの方が言いにくいであろう。どういう噛み方なのだ……」
「恐るべきダークサイズの拠点! 草一本残さず徹底的に破壊しつくすでござる」
「やれやれ、これではどっちが悪か分からぬな……」

 アーガスが呆れているのを尻目に、オウガは大山にまくしたてている。そんなやりとりを後ろに聞きながら、

「どうでもいいが、やはり今回も正義の味方は少ないのう……世も末じゃ」

 と、グランは一人、ため息をつく。


☆★☆★☆


「ここがカリペロニアね…島自体には何の変哲もないわね。ここをどんな風にしようっていうのかしら……」

 島に降り立った宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)は、目の前に広がる草原と森を、腕を組んで眺める。
 祥子の隣では、那須 朱美(なす・あけみ)が早速ビデオカメラを回し始めている。

「なーんだ。まだなんにもないじゃない。祥子、来るの早かったんじゃないの? もう少しいろいろ出来上がってからでも……」

 朱美はビデオを覗きながら祥子に言うが、

「いいえ、バカばっかりに見えるけど、意外にやる時はやるのよ。実際何だかんだで空京放送局を支配下に置いてるし。スパイとしてダークサイズの全貌を把握するには、この拠点が出来上がっていく様を最初から記録しなきゃだめね」

 と、祥子は、まだダークサイズを詳しく知らない朱美を注意する。

「母様」

 そこに上空から声がする。
 祥子たちが上を見上げると、空飛ぶ箒を乗りこなして同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)が降りてくる。
 秘め事はストッと箒から降りてデジタルカメラを掲げ、祥子に報告する。

「母様、まずは上空から島の鳥瞰写真を撮影してみましたわ。この島は、このような……」

 と、秘め事は何故か写真を見せずに、身体を左に向けて、自分の左乳房をくいっと持ち上げて強調して見せる。

「……形をしていますわね」
「えっと、つまりアルファベットのDを逆さまにしたような形?」
「そうとも言いますわね」

 秘め事は続いて、自分の乳房の側面を指でなぞりながら、

「まだ正確に確認していないのですけれど、島の縁に沿って、結界のようなものがすでに張られていますわ」
「結界? すでに侵入者への警戒を始めているのね……珍しく手を打つのが早いじゃない」

 と、眉をひそめる祥子の隣で、朱美が指をさす。

「っていうことは、あそこから入ることになるのかしらね?」

 その方向には、簡易的ではあるがゲートのようなものが作られている。そこでは手をバタバタさせながら、受付と口論をしているような人影もある。
 祥子はそれを見ながら、

「行ってみましょ。静香、あなたは空から撮影お願いね。結界に気をつけて」

 と、秘め事に指示を出す。

「分かりましたわ」

 秘め事は箒にまたがって空へと飛び去る。祥子と朱美は、ゲートへと向かっていった。

「ちょっとぉ! 何で入れてくれないのよ!」

 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、島の入口で思わぬ足止めを食っている。

「でもぉ、美羽ちゃんはダークサイズの人じゃないですぅ」

 と、受付のブースで美羽を引きとめている神代 明日香(かみしろ・あすか)
 彼女はこのカリペロニア島の受付嬢を買って出て、早速仕事を始めている。

「ダークサイズじゃない人は、入場料をいただくことになってるですよぉ」
「そんなの聞いてないわよ! 敵の本拠地に入るのにお金取られるなんて、冗談じゃないわ」
「ダークサイズに入ったらタダで入れますよぉ」
「だ、誰がダークサイズになんて入ってやるもんですかっ」

 美羽はむきになってダークサイズ入りを拒否する。
 そこに祥子と朱美がやって来て、

「どうしたの?」
「カリペロニア入場の受付を作ったですぅ。ダークサイズじゃない人は入場料をいただくですぅ」
「ふうん」
「ふうん、じゃないわよ! このままじゃあいつに会えない、じゃなくって、敵地の視察ができないじゃない」

 と、腕をぶんぶん振って抗議する美羽をよそに、明日香は祥子に向き直る。

「お名前をどうぞぉ」
「宇都宮祥子よ」
「はい、どうぞぉ」

 明日香が祥子の入場をすんなりOKするのを見て、

「ええー! ちょ、ちょっとぉ!」

 と、美羽はさらに明日香に食って掛かる。

「何で私はダメでこの人はいいのよ!」
「だってぇ、ダークサイズの幹部なんだもん」

 明日香は受付ブースの引き出しから、首かけのストラップがついたカードを取り出す。

「ちゃんとダークサイズ幹部カードをつけるですよぉ」

 祥子は明日香が差し出すカードを受け取りながら、

(いつの間にかこんなものまで作ってたのね……一応ダークサイズに入ってたのがこんなところで役に立ったわ)

 と、カードを見つめる。
お菓子のおまけのような名刺サイズの厚紙には、

『だーくさいず幹部☆二重スパイと連絡網作成班 うつのみやさちこ』

 と、明日香の丸文字で幹部名と名前、さらに簡単なプロフィールと顔写真が載せられている。
 これを見て驚くのは祥子である。

「な! いつの間に私たちの情報をまとめてたのよ!」

 連絡網作成班を請け負っていたはずの祥子。しかし本人の知らぬ間に、ダークサイズメンバーの情報が掴まれていたのである。

「{SNM9998900#ダイソウ・トウ}さんにおねだりしたら、もらえたですぅ」
「あ、あいつ、いつの間に……」

 祥子は、自由行動はなはだしいダークサイズを、いつの間にか把握していたダイソウに、

(ダイソウトウ……やっぱり時々油断ならないわね)

と、ヒヤリとする。
 そこに美羽がまたクレームをつける。

「ず、ずるいっ! あんたたちばっかり! ダークサイズのくせに!」
「ずるいも何も、ここダークサイズの拠点なんだから」
「私にもそれちょうだい!」
「ダークサイズに入ったらあげますぅ」
「だ、だれがダークサイズなんて入ってあげるもんですかっ」

 と、堂々巡りの話をし始める。
 そんな中、相変わらずビデオを回す朱美が何かを見つける。

「祥子、あれは?」

 見ると、少し先にある森の木が、がさがさと揺れる。そこから一頭の巨大な山羊と、それにまたがる男性と、さらに女性が一人乗っている。

「あっ」

 と、まずそれを指さすのは美羽。
 山羊が小走り気味に明日香の受付窓口までやってくると、山羊に乗っている男が声を発する。

「止まれい、コクオウゴウ」
「だ、ダイソウトウ!」

 美羽が思わず声を上がると、軍帽に隠れた馬上、いや山羊上の男の目がキラリと光る。

「いかにも。私は、謎の闇の悪の秘密の結社・ダークサイズの大総統、ダイ……」
「ダイソウさん、エメリヤンを乗り物扱いしないでくださいー」

 ダイソウの名乗りをいつものように遮って、文句を言い始める高峰 結和(たかみね・ゆうわ)

「何を言う。私を乗せるのは、ダークサイズ幹部であるコクオウゴウの仕事だ」
「あーん、エメリヤンをコクオウゴウって呼ばないでー」
「バーニーセーター号……」

 ダイソウと結和の言い合いの隙間をついて、コクオウゴウと名付けられたエメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)は、本来希望している幹部名をつぶやく。
 そんな中、祥子がダークサイズ幹部カードをダイソウに付きつける。

「ちょっとダイソウ。これどういうこと?」
「何がだ?」
「連絡網作成班を請け負ってた私としては、勝手にこういうもの作られるのは釈然としないわ。大体いつの間にメンバーの情報をまとめたのよ?」

 祥子はスパイとしてのプライドにかけて、情報に関して抜け駆けされたのが気に入らない。

「お前が途中まで集めていた情報を、私がまとめ上げたのだ。仕事を全部横取りしたわけではないから大丈夫だ」
「何が大丈夫なのよ。ダークサイズ全員分、このカードを作ったってわけ?」
「そうだ、その話をしにきたのだ」

 ダイソウは祥子との話もそこそこに、エメリヤンを降りて受付に歩み寄る。

「明日香よ」
「何ですかぁ?」
「私の幹部カードを受け取りに来た」

 と、ダイソウは明日香に手を出す。
 しかし、明日香はきょとんとし、

「ふぇ? ないですよぉ」

 と、答える。
 明日香の返答を聞いてダイソウが硬直する。

「な……今、何と言った……?」
「ダイソウさんには幹部カードないですぅ」
「なん……だと?」

 ダイソウには予想外の回答だったらしく、ショックを受けた顔で後ずさる。

「な、なぜ私のカードはないのだ? 私はダークサイズのリーダーだぞ」
「なおさらですよぉ。ダイソウさんはみんな分かるから、必要ないですぅ」

 明日香は当然の理由を言うが、ダイソウは納得いかない。

「みんな付けているのに、私だけないなどおかしいではないか」
「別におかしくないと思いますぅ」
「今すぐにカードを作るのだ」
「ダイソウさんには要らないですよぉ」
「何故そんなにかたくななのだ。作ってくれればいいではないか」

 珍しくテンション高めに食い下がるダイソウを、明日香は面白がって無意味に拒否する。
 そこに祥子が口を出す。

「ダイソウ、幹部カード欲しいの?」
「当り前だ。何か私だけ仲間外れみたいではないか」
「何寂しがってるのよ」
「それに、カードがないばかりに部外者と思われて追い出されたらどうする」
「ありえないわよ……」

 祥子は呆れつつも明日香に、

「カードの一枚くらい作ってあげたら?」
「仕方ないですぅ」

 と、明日香は予備の厚紙に手書きで、

『だーくさいず☆大総統 だいそうとう』

 と書き、ダイソウに渡してあげる。
 ストラップを首にかけたダイソウは、

「これでよし」

と、口の端が緩んでいるように見える。
 ダイソウは踵を返し、

「では戻るぞ、コクオウゴウ」

 と、エメリヤンに向かう。

「あ! ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 存在を忘れられかけていた美羽が、ダイソウを引き留める。

「む、何だ」
「わ、私も連れて行きなさいよ」
「では、このダークサイズ幹部カードをつけるのだ」

 ダイソウは自分のカードを自慢げに美羽に見せる。
 しかしダークサイズではない美羽は手を後ろに組んでもじもじする。

「だ、だって私……西シャンバラロイヤルガードなんだもん。ダークサイズなんて……」
「入場料を払ってもらうしかないですぅ」

 明日香は少し同情しながらも、自分の仕事に忠実だ。

「だって立場上、入場料払って敵の陣地に入るなんてできないもん」

 立場上と聞いて、やたら大人の事情を察するダイソウは、目をつぶって少し考え、目を開く。

「……なるほど。ではカリペロニア開発キャンペーンとして、タダで入れてやろう」
「ええー。リーダーがルール破ったら、よくないですよぅ」

 明日香はダイソウに注意するが、ダイソウも今度は明日香をなだめるように、

「我々は悪の秘密結社ダークサイズ。勢力拡大のためには、何者にも門戸を開かねばならん。敵の視察だというのであれば、このカリペロニアの強固な要塞を見せ、ダークサイズの恐ろしさを知らしめてやるのだ」

 と、もっともらしいことを言い、美羽を見て、

「それに、総帥と大幹部が、彼女には世話になっているらしい」

 と付け加える。

「むー。リーダーが言うなら仕方ないですぅ」

 明日香も折れて、余りのカードに『げすと』と書いてダイソウに渡す。ダイソウはそれを美羽に渡しながら、

「我がダークサイズの恐ろしさを、その目に焼き付けるがいい」

 美羽は、

「あ、ありがと……」

 とカードを受け取り、持ってきていた紙袋をダイソウに差し出す。

「ほう、土産か……何! こ、これは……」
「た、ただ入れてもらうだけじゃ悪いから……」
「ろくりんピックまんじゅう!」

 空京放送局争奪戦に夢中で、ろくりんピックに出場できなかったダイソウは、美羽の土産に予想以上の反応で応える。
 結和たちも身を乗り出す。

「わー、おいしそう!」
「一度食べてみたいと思っていたのだ」
「そ、その代わり、今日はきっちり案内してもらうからね!」
「よかろう!」

 美羽のお土産で、むしろ乗り気になってしまったダイソウ。

「おすそわけだ」

 と、まんじゅうを一個明日香に渡し、エメリヤンにまたがる。

「では行くぞ。カリペロニアツアーだ。あ、マジカル・ミステリー・カリペロニア・ツアーだ」
「なにダイソウ、ビートルズ好きなの?」
「略して、マジカリペロニアーだ」
「意味分かんないわよ。ミステリー消えちゃってるわよ」
「ではマミカツだ」
「エビカツの親戚みたいになってるわよ」

 ダイソウと祥子の漫才を聞きながら、結和がはっと気づく。

「そういえば、私ダークサイズに入った覚えないんですけどー……ねえエメリヤン、悪の組織なんてやめようよー」
「でも幹部カード付けてるじゃない」

 と、美羽が指摘する。

「勝手に幹部名付けられちゃったんですよー。カードも渡されたら、捨てるのもあれだし……」
「ところで、コクオウゴウにはどんなシャンプーを使っているのだ?」
「あ、空京で売ってるパラミタツバキを、じゃなくてぇ! 帰りたいんですけどー……」

 と、結和は今日もなし崩し的にダークサイズの内部へと連れて行かれるのであった。