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リアクション
第8章 彼女のいうことならなんでも
「結構あるな、アリアはどれから乗りたい?」
七尾 正光(ななお・まさみつ)はアリア・シュクレール(ありあ・しゅくれーる)に選ばせてあげようとマップを開いて見せる。
「メリーゴーランドがいいな」
「ちょっとそれは・・・、子供っていう年でもないし」
「ねぇ、一緒に乗ろうよぉ」
腕組している彼の片腕にしがみつき、上目遣いで見上げて青色の瞳をうるうると潤ませる。
「―・・・うっ、そんな顔するなよ。はぁ、仕方ないな・・・」
アリアの可愛らしい仕草に一瞬で負けてしまい、最初に行く場所がメーリーゴーランドに決まってしまった。
「わーい、おにーちゃんだーいすきっ♪」
今にも泣き出しそうだった顔から、ビー玉のようにキラキラと嬉しそうに目を輝かせてぎゅっと正光に抱きつく。
「寒いからくっついて歩こうねっ」
深々と粉雪が降るイブのデートを楽しもうと、アリアはぴったりとくっつくように彼の傍へ寄る。
「いっぱい並んでるね。まだかなぁ」
「もうすぐじゃないか?」
「あ、止まったよ。今度は私たちが乗る番だね!」
メリーゴーランドが止まり、やっと乗れると思ったとたんにアリアはどれにしようかと、正光の腕を引っ張りながら選ぶ。
「そんなに急がなくてもいいじゃないか」
「だって他の子に取られちゃうかもしれないよ。おにーちゃん、あのユニコーンがいいっ」
あれに乗りたい!とアリアはガラス細工のように作りこまれた雪像を指差す。
「2人乗りのやつか?」
「うんっ」
「ほら、乗せてやるよ」
ぴょんと飛び上がって乗ろうとしている彼女を抱きかかえて乗せてやる。
「わーい、ありがとう!わぁ〜回りだしたよ。ここから見るアトラクションも素敵だね、すっごくキレイ〜」
ユニコーンの上から雪像のアトラクションを眺めて、幼い子供がはじゃぐようにアリアは無邪気に喜ぶ。
「あまり身を乗り出すと危ないって!」
乗り物から落ちそうになる彼女の身体を抱えるように支える。
「おにーちゃんがいるから平気だもんっ」
危なかったな、と冷や汗を流す彼の方に振り返ってニコッと笑いかける。
「むー・・・止まっちゃった」
「もう終わりだな。アリア、降りよう」
「えぇ〜っ、まだ乗りたいよ」
「わがままを言うと従業員の人に退かされるって。まぁ、その前に俺が降ろすけどさ」
手足をばたつかせてだだをこねるアリアを馬から降ろす。
「次はお花のやつに乗りたいな」
「コーヒーカップか」
「いいよね?」
「まっ・・・まぁ、アリアが乗ってみたいならな」
じっと見つめる少女の可愛さに一瞬でノックアウトされてしまう。
「これはまたメルヘンな感じだな・・・」
「どれも可愛いね。んー・・・」
考えるように少女が口元に人差し指を当てて周囲をキョロキョロと見回す。
「おにーちゃん、あれにしようよ!」
カラコンエのように4枚の花びらが開いたコーヒーカップを見つけてぱたぱたと走る。
「取っ手の部分が葉なのか。氷雪で作ったものでも、色がつけられているのもあるな」
「氷で出来てるんだよね?ひんやーりしてる」
やっぱり冷たいのか触れてみようと、アリアがカップを撫でる。
「カップに触った時、指に溶けたのがつかなかったよ。座っても濡れないね、なんだか不思議だね〜」
「そういう魔法がかけられているからな。まぁ、いくら冬だからってそうしないと解けてしまうんだろう」
自然的に解けないのと同じく、人が触れたりしても溶けないと書く意味も当然含まれているんだろうというふうに、首を傾げるアリアに言う。
「テーブルは蜜色なんだね。なんだか甘い香りがしてきそう。ねぇ、一緒に回そうよ」
「上に手を乗せた方がよく回るんじゃないか」
「うん、やってみよう!わぁ〜、おにーちゃんと一緒に回すと早く回るねっ」
アリアは楽しそうにくるくるとめいっぱいカップを回す。
「これもいい思い出になるね」
「あぁ、そうだな」
一緒に回してやりながら、ニコニコと笑う彼女に微笑み返す。
「んー・・・止まっちゃった。終わりみたいだね、降りよう♪」
「そろそろ夕食にしようか」
「何があるのかな?楽しみだね」
コーヒーカップを降りた2人は一緒に食事をしようとレストランへ行く。
「賑やかなところがいいな」
「音楽の演奏をやってるとこもあるみたいだけど」
「お食事しながら演奏してもらえるの?そこに行こうよ、おにーちゃん」
「マナーにうるさそうなところじゃないし、そこにするか。隣の店だな」
アリアと腕組をして店内に入り、柔らかいソファーに座る。
「どれにしようかな。刻みネギとキノコの入ったジャーマンポテトと、赤と緑のピーマンのパスタがいい〜」
メニューを開いたアリアは写真を指差して選ぶ。
「俺はつけ合せにアスパラとかホタテがあるステーキとライスにするか」
正光がリンリンと呼び鈴を鳴らして注文をする。
温かい料理がテーブルに並べられ、月光の第2楽章の演奏を聴きながら、2人はさっそく手をつける。
「口についてるよ、取ってあげる」
ソースが正光の口についてるのを見つけたアリアが指で取ってあげた。
「うん・・・?ありがとう」
「どういたしまして♪」
「(アリアの笑顔は心を癒してくれるなぁ・・・)」
指で口の周りで拭ってニッコリと微笑む彼女の姿を見て正光が心の中で呟く。
「へー、こういう味のソースなんだねー」
バター味のソースをアリアがあむっと舐めとった。
「(なっ、これってか・・・間接キスなのか!?)」
「あー、おにーちゃん真っ赤になって照れてるー♪かーわいいー♪」
顔を真っ赤にする彼に、アリアは足をばたつかせてからかう。
夕食後も可愛らしく笑顔を振りまく彼女と園内を歩き、クリスマスイブのデートを終えた。
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