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葦原明倫館の休日~ティファニー・ジーン篇

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葦原明倫館の休日~ティファニー・ジーン篇

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第7章  ☆シリーズ★今日の工房☆

 そう、みながハイナの思いつきにつきあってわいわいやっているこのときにも、修行に明け暮れる者達がいた。
 葦原明倫館の工房へ潜入するっ!

「ふぁ〜」

 っていきなり気が抜けたっ!
 炉の前には、相変わらず眠たそうな火軻具土 命(ひのかぐつちの・みこと)の姿。
 というかもう、寝てる?

「……ドージェ、あとはまかせたでぇ………Zzz」

 ビシッと親指を立てるのは、『パラミタペンギン』のドージェくん。
 あ、ペンギンの手に指とかないか。

「ふー、両眼でやってた作業をいきなり片目でやると難しかったわ」

 額の汗をぬぐいながら、水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)は顔を上げた。
 道具を置き、すっと立ち上がる。

(ようやく片眼での作業にも慣れてきたんだけど……うーん、なにかしら?
 昔に比べたら格段にいい物を打てるようになったと自負できる……けど、私が目指しているものとはなにか違うのよね)

 いましがた鍛え終えた刀を、眼の高さまで持ち上げた。
 あらゆる角度から視てみるが、うんと言えない、納得できない。

(はぁ〜、片眼の視力が失われる前に『ワンオブウェポン』を造れるかしら)

 緋雨はそっと、左眼へと手をやった。
 最早なにも視ることのできない、左眼へと。

(って、ダメダメ、弱気になったらダメ!)

 ぶんぶんと首を左右に振って、両手を打ち合わせた緋雨。
 邪念を払うように、全身をぱんぱんとはたいてみる。

(左眼を代償に捧げるとき、残った右眼の視力が失われる前に造るって決心したんだから!!)

 あのときから、不安を常に背負っていた。
 もし、もしも……残った右眼まで視えなくなったら。
 だがそんな不確定要素を気にしていても、どうしようもないことも分かっていた。
 要は自分が、心配が現実になる、その前に。
 目標を達成してしまえばよいのだ、と。

(緋雨め、あせっておるな……だから言わんこっちゃないのじゃ)

 命のわきに座っていた天津 麻羅(あまつ・まら)が、内心でため息をつく。
 これは、いまの緋雨にたいしてではなくて、緋雨が左眼を捧げたことにたいしての嘆息。

(まったく……)
「そこのおぬし、刀を打つのにちぃと手を貸して欲しいのじゃ」

 麻羅は、工房一の職人に声をかけた。
 相手の快諾を受け、次は。

「おい、命……っと寝ておるのか。
 ならドージェ、炉の熱をもっと上げてくれ」

 先ほどと同じように、親指を立て……たような気がした。
 ペンギンくんは、あくせくと炉に薪をくべ始める。
 しっかしこんな暑いところでそんだけ動くとは、ほんまにペンギンかいなこいつ。。。
 というツッコミは置いといて。

「……あら、麻羅?
 どうした……っていまから打つの!?
 え、ど、どうして?」

 緋雨の席をぶんどると、麻羅は職人の助けを借りながら鉄を打ち始めた。
 かんかんと、高い音が鳴り響く。

「ほれ、即興で打った刀じゃ」
「すごい……あれだけの工程で、これだけのものを造るなんて」

 ほどなくして差し出された刀を眺め、驚愕する緋雨。
 自分とは違い、まったく無駄のない最低限の工程しかとおっていなかったのに。

「おぬしの打ったものよりはよい出来じゃろう?」
 緋雨、それを視てどう感じるかえ?」
「確かにこれはすごいと思うけど、なにか私の造りたいものじゃ……ない?
 なんでそう思っちゃうんだろう……ただすごいものを造るだけじゃダメ?」
「それは刀、武器として優れておるだけじゃ。
 おぬしの造りたかったものはただ単に武器として優れたものじゃったかえ?」
「え?」
「おぬしの目指しているものを造るには、確かに技術は必要じゃ。
 じゃが技術だけでは造れん」
「それだけじゃ造れない???」
「そうじゃ。
 いまの状況であせるなとは言わんが、ちぃと落ち着け」

 麻羅が刀を打ったのは、あせる緋雨を踏みとどまらせるためだった。
 もう一度……地に足をつけて、目標をきちんと視つめなおさせたかった。
 そうしないとすべてを視失いかねないことを、麻羅は識っていたから。

「……うん、ありがとう」

 軽く眼を伏せて、緋雨は考える。
 造りたい物を、目指している者を、そして、手に入れたいモノを。
 再度、開かれた緋雨の瞳には、それまでにはなかった輝きが宿っていた。

担当マスターより

▼担当マスター

浅倉紀音

▼マスターコメント

お待たせいたしました、リアクションを公開させていただきます。
雪合戦のはずが、参加していない人の方が多かったのではなかろうか。
そのぶんいろいろな場面を描写できたことはよかったのですが。。。
 まさか匡壱とゲイルを手伝ってくださる方があんなにいらっしゃるとは!?
 そして房姫と絡みたい方々の数ったら!?
 てかハイナは人気投票したらティファニーと佐保に負けそうな勢いなのですね!?
そんなこんなで、休日篇は一段落しちゃいました……次のネタどうしよう。
っとまぁ!
楽しんでいただけていれば幸いです、本当にありがとうございました。