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太古の昔に埋没した魔列車…アゾート&環菜 前編

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太古の昔に埋没した魔列車…アゾート&環菜 前編

リアクション

 【急募集!】

 火術使える人集合ー!!

「ん、1人か?」
「詩穂はフラワシを使うから、そっちは手伝えないよ…」
「うーん、負担がかかりそうだしな」
「アニス…白衣の中に隠れていないで、話を聞いてみたらどうだ?―…ふぅ、わかった代わりに聞いてやるから、ちゃんとメモしろよ。アニスが火術を使えるんだが、何をすればいい?」
 ふるふると首を振る彼女の変わりに、和輝がエースに話しかける。
「炉の中に火術の炎を放って欲しいんだけど。熱を加えるにしても、温度を調節してもらわなきゃいけないし…」
「その指示は俺に伝えてくれればいい」
 どっちに言えばいいのか迷う彼に、アニスは人見知りするからこっちで伝えるというふうに言う。
「でも何度も術を使うから、SPがきれそうになったら合図でも送ってくれ。無理させたくはないからな」
「フラワシの炎と火術の魔力で、あの土地とサラマンダーの火の熱を超えるようになってるか。ボクがフューラーの近くで数値をチェックしておくね」
 アゾートはメモを取る準備をして彼の傍へ行き、興味津々にモニターを覗き込む。
「気体を水蒸気にいったん混ぜるようにして液体化するには…。いっきに冷却する必要もあるんだよね」
「アゾート先生、それならヨウエンがやりますよ。ブリザードと氷術、どっちがいいですか?」
「吹雪は他の機材まで冷却しそうだから氷術がいいね。容器の外側から冷やして欲しいな」
「送風装置は俺が担当するな、アゾートのお嬢ちゃん」
 そう言うとフィリップは風速のメーターを弱めに調節する。
「こっちも準備出来たよ、フィリップ」
「あぁ、俺の方もいつでも大丈夫だ」
「私がフラワシの方に酸素を供給したら、順番に作業を行ってね」
 メシエはレバーをぎゅっと握り、指サインでゴーの合図を送る。
「まだ燃えないね……。火力足りないかも」
 むぅっと眉を顰めた詩穂が藻の入ったシリンダーを睨みつける。
「火術の炎の火力をもう少しあげてくれないかな?」
「温度が低いのか。―…アニス、火力を上げてくれ」
 エースの声に和輝はアニスの肩をちょんちょんと突っつき、もっと炎の温度をあげるように伝える。
「うん、わかった!あっ…」
 生徒たちの視線を浴びた少女は顔を俯かせ、そっぽを向いたとたんに火力が弱くなってしまう。
「(ふぅ…まったくしょうがない子ね)」
 生徒の目が気になっているアニスに気づき、スノーは彼女の姿を見えないようにさっと傍に寄る。
「ほら、温度が下がると藻が燃えないわよ」
「ありがとう、スノー!」
 にこっと微笑みかけると少女は、炉に火力を上げた火術の炎の熱を送る。
「藻の表面から湯気みたいなのが出始めたよ。アゾートちゃん、ちょっとこっちおいで!」
「燃えているの?この白い煙は気体かな…」
 手招きする詩穂のところへ駆け寄ったアゾートはシリンダーの中の様子を眺め、興味深そうに眼を真ん丸にして食い入るように見る。
「細胞壁の部分が燃え始めているんだと思うよ」
「へぇー…。必要な成分だけ、うまく気化してくれるといいね」
 緑色の表面がじわじわと燃えていく様子を録画しようとデジカメのレンズを向けた。
「放射能やフロンガスなどの成分は発生していませんよ。環境にもよいエネルギーになりそうですね」
 公害物質が発生していないかフューラーは、シリンダーの底に取り付けてある機械からデータを引っ張り分析する。
「なんか虹色の煙も出てきたよ?」
「アゾートちゃん、きっとそれが熱量の元となる成分だよ!」
「えぇええ!?早く、容器の中に気体を移して!!」
 詩穂の声に彼女は慌ててフィリップに指示を送り、送風装置のレバーを上げさせる。
「風速が遅いと途中で燃えてなくなりそうだな。少し風量を増やすか」
 2m/sに調節すると虹色の気体がガラスのような透明な細い管を通り、水蒸気を発生させている丸い球体の中を通過する。
 水蒸気の水分と混ざった気体は熱量として燃えることなく、容器の中へ入り滞留した。
「後はゆっくり溜まるのを待っていればいいですね」
 遙遠の氷術の冷気を容器が吸収し、冷やされた気体が液体化していき、ポタポタと容器に溜まっていく。
 抽出しきると液はぷくぷくと泡出し始め、ターコイズカラーの気泡が生き物のように、ゆら〜…ゆら〜り…と浮かぶ。
「じゃあ風を止めるぞ」
「はい、藻の加熱も停止してください」
「りょーかい!」
「ひとまず抽出の実験は成功したようだな」
 フラワシの炎を止めた詩穂を見て和輝は、アニスに視線を送り術を中断するように指示する。
「これは奥地の方で採った方だよ」
 アゾートはフューラーのところへ容器を持っていき分析させる。
「熱成分が高いですね。魔力の値もすごいですよ!」
「ねぇ、こっちはどこで採ったんだっけ」
「出口から近いところだったと思いますよ」
 シリンダーのラベルと先に実験した方と見比べた遙遠がアゾートに教える。
「じゃあ次はこっちでやってみよう」
「あー…成分が混ざるかもしれないから。こっちでセットしたの使って」
 実験の様子を見ていたリカインはもう1セット必要かな…と準備しておいた。
「うん、じゃあそっちでやろうか」
 生徒たちを連れて隣の研究場所へ移った彼女は、同じように熱を加えてみようと実験を始める。