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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

リアクション

「……ありがとう、ございますね」
「……お?」
「へ?」
「ちょ、ちょい待った!」
「先輩…………泣いている!?」
 その様子を見ていたカイ、三月、彼女を取り押さえていた孝高、ラナロックを心配そうに見ていた薫が思わず声を上げた。
「え、その…だめだった? かな? それ…」
 若干の焦りの色を見せるレキに対し、首を振るラナロック。
「嬉し泣き、の様だな」
「おいマンボウ。そんな野暮ったい事するんじゃねぇよ……良い場面が台無しだ」
 冷静にラナロックの状況を説明するウーマに対し、アキュートはやれやれ、と突っ込みをいれた。
どうやらこの状態には全員が驚いたらしく、全員が全員、開いた口が塞がらないらしい。
「鬼の目にも涙。って感じか…?」
「らなしゃん、ないてうろ……かなしい?」
 どうにもバツが悪そうに樹が呟くと、彼女の膝に座ってパソコンへと向かっていたコタローが心配そうに呟いた。
「きっと嬉しかったんですよ、皆さんがこうして彼女の為に何かをやり、彼女の誕生日を祝っているのが」
 セレアがコタローの頭を撫でながら呟く。
「私たちもこんな事なら、なんかプレゼント持って来ればよかったですかねぇ……」
「いいんじゃない? ウォウルさんを見つけるってのがプレゼントでも」
 うーん、とでも言いたそうに顎の下に指を当てて天井を見上げる友見に対し、緋葉が返事を返した。
「皆さん、ありがとうございます。それで――ごめんなさい」
 ラナロックは未だ泣き止まないまま、一同に頭を下げる。
「そんな、いいんですよ。水臭いです。って、ちょっと待ってくださいね」
 困った様な笑顔でラナロックを励ましていた衿栖はふと、携帯電話を取り出した。
「やっと繋がったぁ……え? 何? ううん、こっちの話。あのねお父さ…カイさん」
「ん? なんだ? 呼んだか?」
 同じ部屋にいるカイが思わず衿栖の方へと向く。
「あ、ごめんなさい。こちらの話なんです。カイさんはカイさんでも、私が呼んだのはこちらのカイさんでして……」
「あぁ、そうか。悪かったな」
 ひらひらと手を流し、再び腕を組んでラナロックたちの方へと目を向けるカイ。もう一度「すみません」と苦笑の後、衿栖は電話の向こうの相手の話を再開させた。
「ごめんなさい……――って切らないでぇ! たまたま此処にも『カイさん』がいらっしゃいまして……え? 複雑だ? それは良いんです。あの、今どこにいますか? あ、じゃあ近いですね。あの、ちょっとこっちに来てもらえないですか?」
「ねぇカイ。あの子誰に電話してるの?」
 その会話を興味深そうに聞いていた渚が、この場にいるカイへと質問した。
「何で俺に聞くんだ? 俺が知る訳ないだろ」
「まぁね」
「なっ!? お前なっ!」
「電話中よ、カイ君お静かに」
「……っく!」
 二人のやり取りが面白かったのか、一同が笑いながらカイ、渚の事を見ている。
「――よろしくね! はーい……ごめんなさい、皆さん。今助っ人呼びましたんで」
 と、突然部屋の扉が開く。
「呼んだか、衿栖よ」
「早っ!」
 現れたのは南大路 カイ(みなみおおじ・かい)。どうやら衿栖が呼んだ助っ人らしい。
「随分早かったですね」
「あぁ、急ぎと言うではないか。だから久しぶりに全力疾走してしまった。あぁ、そうだ。途中な、“雅羅に呼ばれた”と言っていた彼も一緒だ」
 彼が自分の後ろに視線を向けると、そこには目を回した日下部 社(くさかべ・やしろ)の姿。
「あ、あんさん……飛ばしすぎでっせ…ホンマ、死ぬかと思ったわ」
「すまんすまん、少し年甲斐もなく本気で走ってしまった。次からは気を付けよう」
「つ、次て……んな殺生なぁ……」
「社さんじゃない! 来てくれたのね」
「ん? おう! お友達の好やさかい、来るのは当然やで」
 雅羅が社に向かって声を掛ける。
「あぁ、後なぁ……此処に来る途中で人手がいる、思ってな。ちょいとそこらへんでスカウトしてきたんや!」
 社がにこにこしながら一度部屋の外に出ると、今度は武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)と、ヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)を連れて入ってきた。
「さて、役者も揃うた事やし、事情をとっくり聞かせて貰おうかいな」
 ウォウルの部屋はそこまで広くはない。この段階で、ほぼ数人が座れずにいるこのタイミング。更に協力者は増えていく。