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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

リアクション

     ◆

 鳳明、ヒラニィ、天樹、緋雨、麻羅達が到着し、いよいよもってこれからの行動を話し合おうとなっているウォウルの部屋の中。
たった今来たばかりの面々が状況の流れを説明された後、樹、幸祐が立ち上がった。
「さて、どうする? ヘラ男がどこにつれて行かれたのか、その情報が入らないとどうにも動きが取れないが……」
「俺もざっとこの中を見回しましたが、特にこれ、と言うものはありませんでしたね。コタローちゃんとやらの情報収集、社さんとヴァルさんの情報網が頼り、と言うのが現状ですね」
 二人が現状を纏めていると、緋雨が徐に穴だらけになった机にある一枚の紙を手に取った。どうやらサイコメトリーで持って残留思念を読み取ろう、と言うのが考えらしい。と、そこで薫が緋雨に声を掛けた。
「あ、そのメモ書きはさっき衿栖ちゃんが――」
 が、それは衿栖によって遮られる。薫が思わず彼女の顔を見ると、何やら含みのある笑みを浮かべる彼女は口の前に人差し指を当てていた。
紙に残っていた残留思念を読み取り終わっただろう緋雨が、衿栖の顔を見て何かが伝わった、と言う表情をしている。次に彼女は隣で不思議そうに緋雨を見ている麻羅に目配せする。どうやらなんとなく、ではあるが彼女としても緋雨が言いたかった事はわかったらしい。そこで――問題は発生するのだ。
「わかったぞ!」
 突然ヒラニィが声を上げた。「これからどうするべきか」と頭を抱えていた一同が、彼女の一言に顔をあげヒラニィへと目を向ける。
が、すぐさまその注意はある一点に向けられた。
「……時間がねぇ、ないのよぉ…!」
 今度はラナロックである。おどろおどろしい口調に戻っている彼女の突然の発言に、思わず声を上げたヒラニィも驚きと恐怖のあまり声を止めた。
「もういいわ、私は自分で探しに行くっ!」
「ちょっ……先輩!」
 と、此処で雅羅が止める。
「何よぉ!」
「あの…先輩? その、とっても言い辛い事なんですけど、ね?」
 雅羅に代わり、今度はベアトリーチェが苦笑しながらラナロックに声を掛けた。焦りを見せた一同も、数名が笑いを堪え始めたのだ。
「その――それは置いて行っても、良いんじゃないですか?」
「ど、何処に向かうつもりなんです、それ……」
 ベアトリーチェが指を指して言い、カムイは驚愕した顔のままに呟く。ラナロックは――美羽、ベアトリーチェからもらったプレゼント(中身は巨大扇風機)を担ぎ、髪を結んで風鈴をそれに飾っている。そしてそれを指摘された彼女は、思わず顔を赤らめながら、しかし怒っている状態の口調で口ごもりながらも呟いた。
「気に……入ったのよ」
「あっはっはっはっはっは!」
「ウォウル先輩も吃驚だ、それ。ぷっくく」
 彼女のリアクションと発言に対し、遂に堪えられなくなった勇刃が大声で笑った。北都も我慢できなかったのか、言いながら語尾の辺りで笑っている。
「う、うるさいなぁ! 初めて貰ったんだから喜ぶでしょ! もう、ほっといてよ!」
 そう言うと、やはり扇風機を担ぎ、風鈴を髪飾りにしたまま部屋から出ようとする。
「ラナロック先輩! だったらそれ、私たちが持つから貸してよー!」
「あ、美羽さん! それではみなさん、お先に失礼しますね! 待ってくださーい!」
 美羽、ベアトリーチェが慌ててラナロックの後を追い、部屋を後にする。
「私たちも行きましょう。カイさん、力をかしてくださいね!」
「うむ。何かそのウォウルとやらの匂いがついてる物を借りていくとしよう」
 近くにあったウォウルのジャケットを一枚ハンガーから下ろしたカイは、衿栖と共に更に美羽、ベアトリーチェの後を追う。
「ではみなさん、解決したら改めて!」
 言い残して部屋を後にする衿栖を見送る一同。
「仕方ないなぁ……これ以上被害者が出てもしかたないし、僕もラナロックさんを止めに行くよ。じゃあみんな、後でね」
「僕も行こうかな」
「ならば私も」
「被害が出るのは避けなきゃ。って事で、俺も行きます!」
 託、北都、リオン、淳二はそう言うと、彼女たちの後に続き部屋を飛び出していった。