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イコンお料理大会

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イコンお料理大会

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食材の到着

 
 
「ここに下ろせばよいのであるな」
「はいはーい、御苦労様です、マナさん」
 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が、大きな冷凍コンテナをかかえて戻ってきたマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)を出迎えた。今は巨大化して、巨大マナ様となっている。
「それにしても、これだけ大量の雪だるま、何に使うのだ? ちゃんと、女王陛下の許可はとってあるのだろうな」
「ははははは、もちろんですよ。この冷や水売り、クロセル・ラインツァート、年寄りは飲んじゃだめよ、に手抜かりはありません」
 にこやかに、クロセル・ラインツァートがマナ・ウィンスレットに答えた。
 もちろん、許可なんてとってあろうはずもない。ばれるような手抜かりはないということだ。
 
    ★    ★    ★
 
「こっちですよー」
「こっちですぅ」
 パラミタペンギンたちで誘導路を作ったスノー・クライム(すのー・くらいむ)が、肩にルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)を乗せてグレイゴーストに手を振った。S−01をベースとしたマットメタルグレイの機体だ。カナード翼を有する機首部は平たいトライアングラータイプで、フォワード・スウェプト・ウイングによるドッグファイト重視の機体となっている。とはいえ、今回は輸送機として働いているので、ちょっと安定性が悪くてふらふらしていた。
「変形して着地するよー」
「よし、やってみなさい」
 アニス・パラス(あにす・ぱらす)が、グレイゴーストを人形に変形させるのを佐野 和輝(さの・かずき)が見守った。
 胴体下部と翼下部から手足がのびるに従って機体が中央から分かれて折れ、重心が激しく移動する。それによって飛行状態からホバリング状態に移行しつつ、グレイスケールが着地して野菜類をおろした。
『もう一度輸送に行ってきます。暇でしょうから、会場を見ていていいですよ』
 そうスノー・クライムたちに告げると、グレイゴーストが再び浮上して飛行形態に変更した。今度も、アニス・パラスが操作を行ったが、ちゃんと佐野和輝が陰で細かいサポートを行っている。
「アニス、この輸送でラストだ。頑張れ」
「うん、頑張るー。でね、でね、全部ちゃんと出来たら御褒美がほしいのー」
「なんだ? うまく出来たらなんでもやるぞ」
「じゃあね、じゃあね……膝枕して!」
 ちょっともじもじしながら、アニス・パラスが叫んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「お待たせしました。巨大イカ捕ってきました」
 ロープでグルグル巻きにしたイカを運んできた樹神よもぎが、ふうと一息ついた。
「待ってましたあ、これでなんとかなるかなあ」
 待ちかねていた立川 睦(たちかわ・ちか)が、喜んでそれを迎えた。
 その横では、巨大伊勢エビを背負ったNight−gauntsが、ズンズンと進んでくる。
「葵、とったどーにゃ」
「グリちゃん、お帰りー。これで勝つるよね!」
 秋月葵が、待ってましたとばかりにイングリット・ローゼンベルグを出迎えた。
 そこへ、やや遅れて車体から水をぶちまきながら、白熊号が会場の荷下ろし場に到着した。
「まったく、ひどい目に遭ったぜ。ここまで走って来られたのが奇跡だ」
 運転席に水は入り込まなかったものの、エンジンなどはいったん水浸しになっている。本来なら動かないところだが、そこは白熊号、根性でここまで走り続けてきたのだが……。
 プシュー。
「うがががが……エンジンから白煙が!!」
 あわてて飛び出した雪国ベアが、ボンネットを開ける。焼け付いたエンジンから、もうもうと水蒸気があがっていた。
「あらら、ついに壊れちゃいましたね」
「くそ、修理代は絶対カナタの奴に請求してやるぜ」
「まあまあ」
 怒りの収まらない雪国ベアを、ソア・ウェンボリスが必死になだめ続けた。
『遅いのだ。さて、取り出すとしようかの』
「ええい、文句があるなら自分で運びやがれ……」
「まあまあ……」
 満を持して、悠久ノカナタがアルマイン・マギウスで近づいてきた。悪態をつく雪国ベアとそれをなだめるソア・ウェンボリスを放っておいて、さっそくコンテナを外してタコを調理場へと運んでいく。
 
 ぱからんぱからんぱからん……。
「ここかしら、イコンを料理してもいいという大会は。OK、相手してあげる。。かかってらっしゃい!」
 ペガサスのディジーに乗ったシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が、颯爽とペガサススピアを構えて荷下ろし場に突っ込んできた。
「ちょっと待ちなさーい、フィス。違うから、ちょっとだけ違うから。やーめーてー」
 すぐ後ろを、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)がゼイゼイと息を切らせて追いかけてくる。
「さあ、誰が私と戦うの。そのイカをかかえたイコンね。避けてみなさい、とりゃあ
 そう叫びつつ、興奮したシルフィスティ・ロスヴァイセが、イカの荷ほどきをしているあづさゆみ2号にむかって突っ込んでいった。
「えっ? えっ!? どうしたんです、なんなの!? 嫌ー、来ないで!!」
 状況が呑み込めず、樹神よもぎが反射的に大王イカで、シルフィスティ・ロスヴァイセのランスを受けとめた。
 柔らかいイカの身にランスが深々と突き刺さる。
「ノオ、せっかくのカレーの素材が台無しデース。イカスミは、イカスミは無事でスカー!!」
 ちょうど具材搬入の手伝いをしにカレーゴーレムに乗ってやってきたアーサー・レイス(あーさー・れいす)が、現状を見て悲鳴をあげた。
 だが、シルフィスティ・ロスヴァイセに突き刺されたとたん、突然大王イカが息を吹き返した。どうやら、まだ死んでいなかったらしい。
「えっ!?」
 イカが、十本の触手を振り回して、シルフィスティ・ロスヴァイセに襲いかかった。その一つに何かついていたようだが、気にする者は誰もいなかった。
「こんなイカなんか……」
 触手の届かない位置に離れて触手を叩き切ろうとしたシルフィスティ・ロスヴァイセだったが、ディジーの方はそうはいかなかった。背後にいるあづさゆみ2号を見て突っ込んでいったのだ。普段の教育のたまものだと言えるだろう。
 というわけで、あっさりとシルフィスティ・ロスヴァイセはディジーごと大王イカにつかまってしまった。鋭い牙のついたイカ特有の吸盤が、べたべたとくっついてくる。
油断した……かな。がくっ」
「きゃあ、フィス、今助けるから……」
「邪魔デース!」
「きゃあ」
 ペタ。
 急いでシルフィスティ・ロスヴァイセを助けに行こうとしたリカイン・フェルマータであったが、巨大な寸胴をかかえ持ったカレーゴーレムに蹴り飛ばされて、巨大イカのうねる触手のまっただ中に貼りついてしまった。
「逃がしはしまセーン。すべての物はカレーに還元されるのデース」
 アーサー・レイスが、一気に巨大イカに寸胴を被せた。
「さあ、生きのいいうちに、カレーにしてしまうのデース」
 唖然としている立川睦たちを、アーサー・レイスがうながした。
 早くも阿鼻叫喚な会場で、シュラウド・フェイスレス(しゅらうど・ふぇいすれす)が何やらビラを撒いている。いや、ビラといっても、ぱらみたがくしゅうちょうのページを引き破った物なので、微妙に不揃いだ。そのビラには、『シュラスコ売ります。欲しい人はドクロ顔のイコンの前に集合。★シュハスカリア・スカル★』と書いてあった。