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カラーゴーレムゲーム

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《7・アニメのオープニング曲が新しくなると、なんかテンションあがる》

 ゲーム開始から、もう1時間以上が経過した頃。
 チーム【龍雷連隊】のリーダーとして指揮をとっている松平岩造は、ジェットドラゴンで上空より工場全体図を【銃型HC】で映して、逐一ゴーレムの位置を確認していた。
 あらかた確認し終わったところで降下し、同じチームの弁慶とトマスに合流する。
「おお、岩造様。丁度よいところに」
 見れば、弁慶が開始時に偵察に送っておいたパラミタカナリアが戻ってきていた。
 ピチチチとさえずってるだけだが、弁慶にはなんとなく言いたいことが通じているらしくしきりに頷いていたかと思うと。
「どうやらこの通路の先に、ゴーレムが密集している一角があるようでござるよ」
「ああ。俺も上空から大体は確認してきた。道筋も把握してある」
「それじゃあ僕らも、いよいよ本格始動だ!」
 三人は戦いの渦中へと駆け出していく。
 彼らにはとある作戦があり、ここまではそれまでの準備期間として迷路内の構造やゴーレムの位置などを、あらかた網羅していったのである。もちろん現在も、トマスは岩造の映したデータを確認しながらマッピングを欠かさないでいる。
 やがて辿り着いたのは、太めの円柱がいくつも並び立っているやや見通しの悪い空間。どうやらこれも迷路としての趣向のようで、柱の陰からゴーレムが狙ってくるという展開らしい。
「参るぞ!!」
「了解でござる!」
「僕もオーケーだ!」
 が、三人は臆することなく突き進み、一番手前に潜んでいた黄色ゴーレムを弁慶がトレジャーセンスで発見する。ふと見れば、そいつの胴体には『37』とナンバリングがされている。
 それになんの意味があるんだろう、という疑問を岩造たちは思わない。なぜならこれこそが彼らの作戦なのだから。
「37番の色は、15分前から黄色のままだ。つまりコピーである可能性は無しだ!」
 岩造の言葉を受け、弁慶はレーザーナギナタを手にチェインスマイトで胴体をひといきに薙ぎ払い、体から核を飛び出させた。
 その隙をついて現れた紫色のゴーレムは、岩造が【龍光尾】と銘打たれたグリントフンガムンガを投げつけ。柱にはりつけにする。
 岩造はそいつの背中に書かれた28という番号と銃型HCを見比べ。なにかを確認したあとひとり頷くと、龍光尾をもう一度叩き込んでとどめを刺し、核を取り出した。
「トマス気をつけろ! その30番は、すこし前まで赤色だったらしい! コピーに間違いない!」
「よし、わかった!」
 言われてトマスは、新たに襲ってきた青色のゴーレムへ慎重に光術をくらわせ。確実にその核を取り出し、壊さないよう気をつかいながら袋に入れてしまっておいた。
 こうして怒涛の勢いで三人は次々と核を収拾していき。
 円柱だらけのこの場にいたゴーレムを一掃する頃には、一気に核の破壊数は6個にまでのぼり、コピーの核もふたつ手に入れるのだった。

 ここで一度、説明が必要だと考えられるので。
 岩造をリーダーとする第1班とは別に動いていた、ミカエラ、テノーリオ、魯粛子敬の三人からなる第2班の行動を解説しておく。実はこの三人の役割とは、
「よし、どんどん番号つけていってやるからな!」
 まずテノーリオが、見つけたゴーレムの胸や背中に片っ端からペイントでミカエラが指示する『識別用番号』を順番に振っていく。もちろん番号をつけるだけで、戦うことはしない。
「相手の攻撃は、気にしないでいいですからね」
 その際、反撃されそうになれば子敬が歴戦の防御術で守り、そのまますぐに逃げて次のゴーレムのナンバリングへと移行していく。
 時には飛んでいる赤ゴーレムに対し、
「がんばりなさい、テノーリオ! 空を飛ぶ相手でも、しがみついちゃえばこっちのもんです! 番号書いたら、落っこちてきなさい!!」
「いや、当然のように言ってるけど何気にそれ怖すぎるんだけど!?」
 などという無茶もやらかしながら、どんどん番号を書き連ねていった。
 そしてこちらのリーダーであるミカエラは【籠手型HC】に識別番号と番号付与時間、その時の色を入力していき。その情報をHC同士で通信して教えておく。
 この情報さえあれば、第1班のコピー判別の基準となるというわけだった。
「この1時間で、40体か。上出来よふたりとも! それじゃあ一度ここで小休止にするわ!」
 ほとんどは、別の参加者に撃破されてしまうだろうが。
 ここまで多く番号を振っておけば、きっと第1班の役に立つことだろう。
 序盤からかなり飛ばして駆けずり回ったので、三人は一度壁へとよりかかり。終盤に備えて体を休めるのだった。

 その壁を挟んだ反対側で、ちょうど同じようによりかかっている人物がいた。
 パーティを組まず単独で挑んでいるケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)である。
「はぁ、はぁ。さ、さすがにさっきのは我でも危なかったのだよ」
 わずかに血のにじむ頭を押さえながら、息を整えるケーニッヒ。
 彼はここまで、割と順調にことを進めてきた。じつはもうすでに虹色のゴーレムを二体も撃破している。
 もっともこれは単純な幸運ではなく、単独で倒せないゴーレムたちをうまく迂回しながら迷路内を駆け回り。そのうえで発見して倒した、純粋な努力による成果だった。
 とはいえさすがに黒、緑、茶色という遭遇したくないベスト3に囲まれた時には、ケーニッヒも肝が冷えた。
 どうにか逃げ切れはしたものの、その際に負った傷が痛む。この状態であと4時間近く戦うのはどう考えても自殺行為だ。
 ただ。ケーニッヒとしても、方策がないわけではない。しかしそれにはまず、
「さきに目の前の敵を、倒さないといけないのであろうな」
 ズンズンと、目の前から迫ってくるのは桃色のゴーレム。
 まず倒せる相手であることに安堵する。むしろ単独プレーヤー向きの敵なので、ぜひとも核の数を稼いでおきたいところだが。負傷している今、無理をするのは得策ではないかもしれない。
「どぉりゃあああッッッ!!!!」
 が、それでもケーニッヒは駆けた。
 神速で素早さを向上させ、残心と心頭滅却も活用し防御力と魔法防御力も高める。
 一気に片をつけるつもりでありながら、万一のことも考えての配慮も欠かさずに軽身功で壁面を走り。相手の後ろへと回り込む。
 ズキリと一瞬傷が痛んだが、それでもケーニッヒは開いた手を握りしめ。鳳凰の拳による集中打を浴びせてやると。やがてゴーレムは動かなくなった。
 が、そこへ背後から近寄る何者かの気配がして。
(しまった。まだいたか!?)
 振り返るとそこにいたのは、
「ああ、戦っていたのはケーニッヒだったんだな」
 同じ教導団員で形勢されたチーム【カイゼレグ】の面々で、思わず肩の力が抜けるケーニッヒだった。

 カイゼレグのメンバーはリーダーのクレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)をはじめとして、島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)三田 麗子(みた・れいこ)
 そしてゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)レナ・ブランド(れな・ぶらんど)天津 幻舟(あまつ・げんしゅう)の六人。
「これでよし、と」
「助かった。感謝する」
 ヴァルナから大地の祝福をかけてもらい、傷を癒したケーニッヒ。その礼として虹色から取り出した核をひとつ渡す。実は事前にこういう取引を随時行なうと打ち合わせしてあったのである。
「いい具合に休めた。なにかあったら連絡してくれ、それじゃあな」
 あとははやばやとゲームへと戻るケーニッヒ。
 なんともノンストップな彼にクレーメックは軽く感心しつつ、
 ふとケーニッヒが破壊したゴーレムの背に、ペイントで『9』と描かれているのが目に止まった。
(時々ゴーレムに番号が振ってあるが。これはなんなんだろうな?)
 疑問を抱くものの答えは想像するしかなく、自分たちもゲームに戻ることにした。

 カイゼレグチームの基本スタンスとしては赤ゴーレムを一掃し、あとは各々が狙うゴーレムを定め、状況に応じて協力し戦いを続けるというものだった。
 時間を節約するためコピーかどうかの判別はせず、核を持ち歩いているので破壊数はZERO〜のままだが。もう既に、ケーニッヒから貰ったぶんもあわせて8個の核を収集している。
「赤色はもう四体も倒したのですし。のこりは他の方々が倒してしまわれたのではないでしょうか?」
「たしかに、赤ゴーレムは最初から空を飛んでいるわけではないのですしね」
「しかし三十分ごとに、赤色に擬態した敵が現れるかもしれんのじゃ。もうすこし警戒を続けてもよかろうて」
 空には、守護天使のヴァルナ&麗子とヴァルキリーの幻舟が控えている。
 この迷路工場は天井がほぼ無いつくりなので、制空権を持っていればかなり有利にゲームを進めることができるゆえのことだ。
 もっとも。それにはリスクもある。
 赤ゴーレムに狙われるだけでなく、他の参加者に目をつけられやすい。
 実際、彼らはさきほど岩造と空で鉢合わせという事態になったりもした。その場は、争うつもりのない岩造が退いたので問題にはならなかったが。この先はどうなるかわからない。
 と、そこへヴァルナたち三人の前に飛行してくる赤色のゴーレムが。
 まだ生き残りがいたのかそれともコピーなのか。どちらにせよ叩いておこうとしたところで、
 誰かの放った天のいかづちが、ゴーレムの体を貫き。そのまま敵は落下していった。
「あら? 赤色には物理攻撃しか効かないのでは?」
「どうやら、倒すことはできなくても多少のダメージは与えられるようですわね」
「ふたりとも、問題はその辺りではなさそうじゃぞ」
 三人が下に目をやれば、
 レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)ミア・マハ(みあ・まは)チムチム・リー(ちむちむ・りー)カムイ・マギ(かむい・まぎ)が落ちた赤ゴーレムを叩いていた。
「飛べないゴーレムはただのゴーレムじゃ」
 とか言っているのはミア。どうやらいかづちを落としたのは彼女らしい。
 そこからはレキとチムチムが攻撃し、カムイがチェインスマイトでとどめをさした。その連携ぶりや迷いなく核を破壊したところを見ても。どうやら既に判別のメガネをGETし、本格的にゴーレム破壊に動いているらしかった。
 それは実際褒め称えるべきところだろうが、獲物を横取りされた格好になったため。地上組のゴットリープやレナたちはレキたちと睨み合う展開になり。
 空気がピリピリしそうになるが、そこは交渉役のクレーメックが前に歩み出て、
「私たちはべつに、争うつもりはないんだ。むしろ回復して欲しいとか要望があれば聞いてもいいくらいだし」
 有益な交渉を持ちかけていく。
 対するレキはにこやかに笑みを返して、
「いや。だいじょうぶだよ、ボクらにも回復してくれる仲間はいるから。お互いゲームは楽しくやらないとね」
 そう言って、この場で衝突することはないままお互いに別々の道へと進んでいった。
 しかし。
 ここでなにもしなかったことを後々悔やむことになるのでは、という思いが一同によぎった。
 同時に、べつに後々になーんにも関係なく伏線にも何にもなってないまま終了するかも、という思いもよぎった。

 どういう結末になるかは、もうすこし時間が経過してわかることとなる。