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カラーゴーレムゲーム

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《6・ゲームの楽しみ方は人それぞれ》

 チーム『雪月花』のレオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の三人は、
 レオンはチェシャ猫の効果、ルカルカとダリルはベルフラマントの隠れ身で身を隠しながら動いていた。
 最初のうちは例のメガネを宝と位置づけ、トレージャセンスを用いて探し回っていたが。 道中見つかったのは黄色のゴーレムが一体と、紫と黒のゴーレムくらいだった。
 黄色と紫のゴーレムは破壊後に核だけ抜き取って、ランドセルにしまってある。
 だが開始から40分を過ぎてもまだ博士とも助手とも会えぬままで、そろそろ方針を変えていくべきかとも考えはじめていたが。
 そんな三人は、他とは違ってものものしい赤銅色の無骨な扉の前に辿り着いていた。
 その先の部屋には天井もついているようで、なにかあると言っているようなものだった。
「あきらかに怪しい雰囲気で、逆に驚きなのだよ」
「でも、入ってみないわけにもいかないよね」
「そうだな。気は進まないが、行くぞ」
 ギギギ……とさびた鉄同士がこすれあう嫌な音とともに、扉を開くと。そこには、
「やあ。いらっしゃい」
 この迷路工場の各エリアが映し出されたモニターが多数あり。
 部屋の中央で回転する椅子にゆったり腰掛けている白衣の青年、博士がいた。
「やっと発見、か。もっとも、参加者を監視したり要望を聞いたりする必要がある以上、司令室のような場所にいるんじゃないかとは踏んでいたけどな」
 レオンはつかつかと博士の前まで歩み寄り、早急に用件を切り出す。
「メガネを渡してくれ」
「んー。どうしよっかなぁ」
 しかし博士は口笛吹いて、くるくると椅子を回してふざけた態度をとってきて。
 レオンの機嫌が悪方向に傾きかけたが、そこでルカルカが間に入って。
「まあまあレオンさん。ここはルカに任せてよ」
 こほん、と可愛らしく咳払いをしてからニッコリと笑顔をみせ、
「でもホントすごいよね! 色んな機能を持ったゴーレムがたくさんいて、驚いちゃった。ゴーレムにこんな魅力があるなんて知らなかったなあ」
「ん。そうかい?」
 博士としては、どう考えてもお世辞を言われているのはわかっているものの。
 かわいい女の子に褒められるのは、悪い気がしないようで照れ始めている。
「眼鏡を渡してくれたら、お礼にこのさきゴーレムの起動テストとかやるときに、参加するから。ね? ね? おねがーい」
 両の手を合わせ、ぱちりとウィンクしてお願いの姿勢。
「もーしょーがないなー。そこまで言われちゃ、私も鬼じゃないからね。はいどーぞ」
 これに博士はあっけなく白旗をあげ、近くの机の引き出しからメガネをちゃんと人数分渡してくれた。
(まあ、ルカにここまでさせて断ったら殴り飛ばしてたけどな)
 レオンは密かに握り締めていた拳をほどいて、メガネを受け取る。
 ダリルもこっそり魔道銃に手をかけていたが、それは秘密にしてメガネを装着させた。
 これでもう用はないと、レオンはさっさと部屋を後にすべく扉を開けたところで。
 緑のゴーレムが襲い掛かってきた。
「やれやれだ。意表をついたつもりなのか?」
 が、レオンは動じた様子もなく疾風突きを胴部分に叩き込んでやる。
「ここから俺らは全力でいくから、むしろお前たちが注意するべきなんだけど。そのあたりわかっているか?」
「ふふ♪ そこ、落とし穴あるから気をつけてね」
「主催者が相当に底意地が悪いなら、油断したところを襲わせるかもと踏んでたが当たりだったようだな」
 よろめいたゴーレムは、ここへ入る前にルカルカが落とし穴キットで作っておいた穴に足をとられて。そこをさらにダリルのレーザーナギナタで押さえつけられる。
 そ知らぬ顔で口笛を吹く博士に目をやりつつ、レオンは新しい技を出す必要もないとばかりに、もう一度疾風突きをゴーレムへお見舞いして機能停止へと追いやるのだった。
 あとはそのまま何事もなかったかのように、取り出した核をウエストポーチにしまって三人は歩いていくのだった。
「ふふ、本当に面白い人達が集まってるなあ。さて、他の参加者はどんな感じかな」
 博士はそんな言葉を漏らしつつ、モニターのひとつに目を向ける。
 そこに映っているのは――

 レーゼマンたちのチーム【GUN・DOG】。
 そのチーム名が示しているように、レーゼマンもルースも銃が主要武器のスナイパー。残るソフィアもメイドさんという組み合わせ。要するに、基本的には物理攻撃しかできないのだ。
 ゆえに狙うゴーレムも絞られ、三人はメインを赤、次点が茶色と紫色。そしてトレジャーセンスを使用しながら黄色ゴーレムを探しているのだが。スタート以降に出くわすのは、白や黒などの倒せないゴーレムばかりで。
 さきほどようやく紫のゴーレムを発見し、蜂の巣にして核を破壊できたところだった。
「まぁこんなものか」
「でもせっかくソフィアを囮にしてるのに、まだ成果がたった一体とはね。もしやゴーレムたちにはメイド属性が無いのでしょうか」
「人を囮にさせておいてよくそんな冗談が言えますね、もう」
 などと悪態をつきながらも、ソフィアはふんふふふん〜♪ と囮役を続けるべく、迷路内を目立つように歩いていく。
 レーゼマンも今一度トレジャーセンスを行使してみるが。近くにそれらしい反応はなく、
(どうしたものか。もうすこし効率よく倒していきたいところなのだけど。ん?)
 空を見上げて思案してみたところへ、赤い影が視界に飛び込んできた。
「見つけた……そこだルース!」
「え? あ、ああ了解!!」
 レーゼマンが上空へ向けて対物ライフルを構えたのを受けて、ルースも巨獣ライフルを構える。
 そこからはまずレーゼマンがシャープシューターで飛行中の赤ゴーレムへと弾丸をぶつけ、わずかに態勢を崩させ。隙ができたところをルースがスナイプを使い銃撃をヤツの頭部へとぶちかました。
 すると相手は落下し、三人の目の前へとけたたましい音を立てて墜落。全身のパーツを粉砕させて見事にブッ壊れ。衝撃で飛び出した核は、きっちり銃弾で破壊しておいた。
「こいつも意外とあっさりだったな」
「それにしてもどうやって飛行していたんでしょうね。他のゴーレムとほぼ同じような外見なのに」
 と、そんなことを話し合っているとどこからともなくエンジン音が響いてきて。
 なんだ? と考えた頃には三人の後ろからバイクで疾走してきた帆村 緑郎(ほむら・ろくろう)が到着していた。
「なんだか物凄い音がしたと思ったけど。もう終わったみたいだね」
 緑郎はバイクから一度降り、にこりと笑いつつ会釈をして。
「こんにちは。俺は帆村緑郎。同じこのゲームの参加者です」
 一度壊れているゴーレムと、その核に目を向けたあと、再び三人と視線をあわせ、
「そこのはバラバラだからわかりにくいけど赤色なんですね。他の色のゴーレムも、何体か倒したんでしょうか?」
 質問をされて、一瞬三人は顔を見合わせて返答に困った。
 このゲームは蹴落としあいもあり得るので、正直に言っていいのか疑問に思うところがある。とはいえ、べつに無理に隠すほどのことでもないか? ということでここは素直に答えることにした。
「まだこの赤と、紫を一体倒しただけだけど」
「なかなか倒せるゴーレムに会わなくてね」
「あなたのほうはどうなんですか?」
 それを聞いて、緑郎はあははと笑い声をあげて。
「いやぁ、情けないことに俺はまだゼロなんですよ。目当てのゴーレムに会えなくって。ついさっきも、あっちにゴーレムがいたんですけど。探しているのではなかったので放置しましたし」
「え? 何色だったんですか?」
「茶色でしたよ。ひとりきりじゃどうしようもないので、さっさと逃げてきたわけです。おっと、長話してすみません。それじゃあ俺は失礼しますね」
 茶色、と聞いて若干期待感を抱いた様子の三人を置いて、
 緑郎は再びバイクで走り出した。

 かと思ったら、曲がり角を二回ほど回ったところで緑郎は再び止まり。
 わずかに息をついた。
「やれやれ。ですます口調はやっぱり俺には合わないな」
 やはり先ほどまでの言動は演技であり。情報を得るための芝居であった。
「どうやらどの参加者も、まだあまりゴーレムを壊せてないみたいだね。目当てのゴーレムを全部破壊される心配は、当分なさそうだな」
 懸念があるとすれば、チームの数が30以上だったりすると1チームが壊せる核がかなり減るので、さっきのチームの成果が少ないからといって安心はできないが。バイクであらかた回っても、片手で数えるほどのチームとしか出会えてないことを鑑みればそれは杞憂ですむだろうと。緑郎は分析しつつ、
「それにしても、さっきの三人。コピーかどうかを気にせず戦う方針なのか? だとしたら、さっき出くわしたゴーレムを倒した時点でゲーム終了だな」
 実際さっきの話で嘘はついておらず。茶色ゴーレムを見かけたのは事実なのだが。それがコピーであることは意図的に隠しておいた緑郎だった。
 コピー判別の眼鏡をくるくると左手で弄びながら、右手は銃型HCを使い仲間へと連絡をとることにする。
「もしもし? ついさっき助手から例の眼鏡を貰ったから、一度合流したいんだけど。え? ああ、わかった。すぐそっちに向かうから」
 ちゃんと通信を切ってから、再びバイクのアクセルをふかし迷路内を走っていく緑郎。

『みんなも、自転車やバイクに乗りながら携帯とか使っちゃダメだゼ!』

「? なんだいまの」

『気にしちゃダメなんだゼ♪』

「……まあいいか。それにしても思ったより、眼鏡を確保するのに時間がかかったな。急がないと」
 スピードをあげ、事前に決めておいた集合地点であるベンチがぽつんと鎮座している公園くらいのスペースがある場所へと到着すると、
 パートナーのザッハーク・アエーシュマ(ざっはーく・あえーしゅま)ライラ・メルアァ(らいら・めるあぁ)が待っていた。
「お、緑郎! そなた遅いではないか!」
「緑郎様。お早くこのゴーレムたちを」
 ただ、待っていたのはふたりだけではなく。
 なんと三体ものゴーレムが彼女らを追いかけまわしていた。
 ふたりは、緑郎が眼鏡を探している間、ライラがトレジャーセンスで黄色のゴーレムを探して。同時に紫のゴーレムを引きつけるようにして動いていたのだが。
 ライラがうまく隠れていた黄色ゴーレムを発見したとき、ザッハークが紫色のゴーレム×2と遭遇し。そいつらに追い回される羽目になったのだった。
 もっとも全速力で走れば逃げ切そうであったが、それでは核を誰かに壊されてしまうかもしれないので。途中途中軽く攻撃し、なんとかこの場所まで引き連れてきたのだった。
 緑郎はそんなふたりの疲労を感じながら、眼鏡を装着し確認をとる。
「よし、ついてる! こいつらは全部本物だ!」
「ふふ。そうとわかれば!」
「これまでのぶん、まとめて返して差し上げますわ」
 そのあとは、黄色ゴーレムをザッハークとライラが袋叩きにして。
 二体の紫は緑郎が、パートナー達を苦しめたぶんをしっかりお返ししてあげて。
 みっつの核の破壊に成功したのだった。