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ザナドゥの方から来ました シナリオ2

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ザナドゥの方から来ました シナリオ2
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リアクション

                              ☆


 朝霧 垂は『王の間』の扉の前に佇んでいた。
「この扉の向こうにDトゥルーがいるはずだ……準備はいいか?
 せーのっ!!」
 パートナーのライゼ・エンブへの掛け声も勇ましく、垂は扉へと体当たりを敢行した。

「うわーっ!!」
「し、垂―っ!?」

 だが、反対に強固な扉に跳ね飛ばされて、通路の端まで転がる垂。

 スペランカー朝霧 垂。扉の前に死す。


「死んでる場合じゃないよっ!!」


 だが、その垂たちの頭上を飛び越えて来た者がいた。
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)である。
 ダッシュローラーを利用した恐るべきスピードと威力で、垂を弾き返した強固な扉にハイアンドマイティを叩きつける。

「……すごいっ!!」

 ライゼは声を上げる。
 ルカルカに続き、パートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)、そして夏侯 淵(かこう・えん)が続く。
 極力迷宮での戦闘を避けて王の間へと戦力を温存して来たルカルカ達。気合は充分であった。

「……ここまで問答無用だと、こちらもやりがいがあるのだがな」
 と、玉座に座ったDトゥルーは剣を抜き、王の間に入り込んだルカルカ達と、垂を見下ろした。
「見つけたぞDトゥルー!! お前を倒して俺達は世界に平和を取り戻してみせる!!」
 スペランカー魂で何度目かの死の淵から蘇った垂は、ルカルカたちの後ろから一人、Dトゥルーへと突進して行った。

「ふん!!」
 だが、Dトゥルーは瞬時にルカルカや垂の戦闘力を見抜いたのであろう。すぐに背中から無数の触手を伸ばし、突進してくる垂にぶち当てた。
「あーーーっっっ!!!」
 あっけなく触手に跳ね飛ばされて、垂は3回点半しながら王の間の壁にぶち当たるのだった。


 スペランカー朝霧 垂。触手に死す。


「さて、今度はそちらの番だ」
 Dトゥルーは部屋中に触手を張り巡らせた。自在に動くその触手は、隙あれば絡み付き自由を奪い、射撃や魔法の邪魔をするだろう。接近すれば、強力な威力を秘めた剣や、闇の魔術を発する盾の相手をしなければならない。
 しかし、ルカルカはDトゥルーに対して一歩もひるまず、強く、張りのある声で言った。


「人間は屈しない――侵略には戦うわ。国を護るために――私は在るのだから!!」


                    ☆


 緋桜 遙遠――いや、『魔法少女ハルカ』とリフィリス・エタニティアの戦いの場にも、乱入者がいた。
 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)である。
「我が名は蒼空戦士ハーティオン!!」
 地球から来た心に正義の炎を燃やす者、それがコア・ハーティオンである。
 ハルカと戦いを続けるDトゥルーに対し、コアは宣言する。
「戦いと殺し合いを好む魔族、Dトゥルーよ!!
 この地に邪悪なるトゥ・ザナドゥなどという世界を築かせるわけにはいかない!!」
 その様子を見て、Dトゥルーは高笑いをした。ハルカの魔鎧であるリフィリスが発したサンダーブラストを、盾で防ぐ。
「ふ――はははは!! いいぞ、小難しい交渉などより、よほどお前らのような奴らのほうがスッキリする!!」

 コアもまた、その言葉に反応し、叫んだ。
「ぬぅ、邪悪なる魔族め!! 可憐なる魔法少女よ、及ばずながら助太刀するぞ!!
 この一刀に全ての力を込めて!!」

 コアはブレード・フォンを構えて、次々に己の持てる光の力を集結させた。

「行くぞ、Dトゥルー!!」
 まずは『武器の聖化』によりもたらされる100万光パワー!!
 そこに『破邪の刃』の力を込めることで光の威力を2倍に!!
 さらにスプリングから受け取った『破邪の花びら』を加えることで4倍の光パワー!!
 『パワードバックパック』から謎の噴射を行なうことで普段の2倍の加速!!
 そして! 必殺の光『女王の剣』を放つことで!!
「Dトゥルー! お前を超える1600万光パワーだーっ!!」


 あくまでも光パワーの基準と倍数はコアさんの自己申告ですので、ご了承下さい。


「……なんか無茶苦茶言ってるですのぉ」
「我の闇パワーが1000万とか言った覚えはないのだが」
 思わず突っ込むハルカとDトゥルーだが、コアの剣に込められた光属性の攻撃力は本物だ。
 これを利用しない手はないと、カメリアの『バキュー夢』で取り出したアイテム 『リリカルホイッスル』を使うハルカ。
 『リリカルホイッスル』から流れる美しい音色は、それを聞く周囲の者に愛と勇気と幸せの気持ちを芽生えさせ、それを魔法の力に変えるミラクルアイテムである。

 その際、周囲の人間から愛と勇気と幸せの気持ちが吸い出され、具体的に魔力へと変換されるシステムであることは気にしてはいけない。

 だが、これもまたそこに込められた魔力は本物である。コアから愛と勇気と幸せをいかんなく吸い取ったハルカは、真正面から全力の攻撃を放つ。


「いくですのぉっ!! 愛と勇気の!! シューティング・スターーーッ!!!」
 そこにタイミングを合わせ、コアの必殺剣が炸裂する。
「勇心剣! 必殺!! 流星・一刀両断斬りーーーっ!!!」


                    ☆


 ここは『王の間』の扉の前。
 カメリアは、数人の仲間と共にDトゥルーを訪れようとしていた。確かに、最前線に出ることを諦めたカメリアだが、完全に人任せにしておくわけにもいかない。そこで、数人のコントラクターと同行することにしたのである。

 したのであるが。

 そのカメリアの肩に手を回して、10歳くらいの鬼崎 朔(きざき・さく)がニヤリと笑った。
「なんかよくわかんないけど、私にまかせとけって、何しろ私はせーぎのみかただからな!!」
 早速ザナドゥ時空に取り込まれ、無意識的に『ちぎのたくらみ』で子供に戻った朔は、ことのついでに精神年齢まで外見通りに子供に戻ってしまったのだ。
「……おい朔、お主大丈夫か」
 カメリアの心配もよそに、朔は笑って、カメリアの手を取った。
「だーいじょうぶっ!! カメリアを泣かせるやつは私がみんなぶっとばしてやるからな!!」
 子供の頃はガキ大将で鳴らしたクチなのだろうか、とカメリアは思った。しかし、ザナドゥ時空の影響ということも考えられるので、今の朔の性格がどうしてこうなのかは、カメリアには判断がつかない。
 ブレイズから剥ぎ取った白銀のパピヨンマスクの形をした『正義マスク』を装着し、朔はポーズをとった。
「真・月光蝶仮面! 参上だぜ!!」

「そうそう……みんなで頑張るんじゃよ、カメリアちゃん」
 そしてもう一組の仲間、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は呟いた。
「……こっちはこっちでまだ戻ってこないし……」
 カメリアは更に呟く。タワー前の戦いではザナドゥ時空の影響でカメリアの両親になってしまった美羽とコハクだったが、今度はどうやら一足飛びにおじいちゃんとおばあちゃんになってしまったらしい。
 外見はあくまでいつもの二人だが、その精神はすっかりお年寄りになってしまった。今の二人は縁側に並んで座ってお茶を飲み、愛猫の背中を撫でながら元気な孫娘を見守り、時折夫婦の思い出を語るようなすっかり枯れたおしどり夫婦なのだ。


 枯れてる場合か。


「いいからこれでも飲んでおれ、ほれ若返りの茶!!」
 カメリアが『バキュー夢』を使って自分の想像から『若返りの茶』を作り出して美羽に無理やり飲ませた。結局のところ、ザナドゥ時空の思い込みなので、それを解消するきっかけを与えてやればいい。

「――大丈夫ですよカメリアさん。いろいろ突っ込みたい気持ちは分るけれど、今はDトゥルーとの戦いに集中すべき時」
 そんなカメリアに声を掛けるのは、風森 巽(かぜもり・たつみ)とパートナーのティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)だ。
「……大丈夫かの、蒼空刑事ツァンダーと大魔女ティアドーラは」
 【混沌の通路】での出来事を人づてに聞いていたカメリアは巽に突っ込むが、すでに正気に戻っているティアは後ろからカメリアの口を塞いだ。
「こ、細かいことは気にしちゃダメだよっ!!
 とにかく、ここから戦いは本番なんだから、気合いれていかなきゃ!!
 ザナドゥ時空に対抗するためには、心や想いを強く持たなきゃね!!」
 やや強引ではあるが、今は巽とティアの前向きさはカメリアの心を強くしてくれる。
 ティアの要請に従い、『バキュー夢』をティアに渡したカメリアは、扉を開けた。


『王の間』へと続く、戦いの扉を。


                    ☆


 一方、事あるごとに誇らしげに自分の名前を名乗るパートナーと、今や完全にわんこと化したパートナーを抱える四谷 大助は、それでもDトゥルーとの戦いに参戦していた。

「分かった。もういい。気にしなければいいんだ」

 『王の間』では、Dトゥルーと交戦中の七誌乃 刹貴、更に緋桜 ケイと悠久ノ カナタ、そしてソア・ウェンボリスと雪国 ベアがいる。
 刹貴と大助は身の軽さを活かして部屋の壁や張り巡らされた触手などを利用して、目にも留まらぬ速さで飛び回った。
 刹貴の短刀が少しずつDトゥルーの装甲を削り、大助の『魔拳ブラックブランド』が輝くと、幾度かDトゥルーへのダメージを蓄積していく。

 ケイは歴戦の武術や防御術でDトゥルーの攻撃をいなしつつも、その場の者に対して警告を発する。

「……戦いは避けられないにしても!! 命の奪い合いなんてバカらしいと思わないのか!!」
 しかし、その言葉を刹貴は鼻で笑い飛ばす。
「ふん、この魔族どもはそのバカらしいことをしに来ているのさ、はるばる魔界からな!!」
 大助もまた、攻撃の手を緩めることはない。
「そんな悠長なことは言っていられないだろ……!! この時空の中では何が起こるか分からない……一刻も早く殲滅するべきだ」

「……!!」
 ケイは、歯噛みするような想いでサポートを続ける。
 パートナーのカナタは、そんなことはお構いなしに戦いを続けていた。
 何度防がれても連続で放ったファイアストーム、その効果がようやく出始めていた。

「……ほう」
 Dトゥルーは、自らの肉体の変化にようやく気付いた。
 幾度となく放たれた炎はDトゥルーを包む鎧に冷めるを間を与えずに高熱を加え続け、ついにはその鎧を通してDトゥルーの身体に炎の熱を伝えることに成功していたのである。
「……茹でダコになるがいいぞ」
 まだまだファイアストームを打ち続けるカナタである。

 また、ケイと共に戦いの場に乗り込んできたソアは、パートナーのベアと共に部屋中の触手を一手に引き受けていた。
「えーいっ!!」
 次から次と襲い来る触手を、ファイアストームで焼き払うソア。
 そのソアに、触手を伸ばした秋葉 つかさが迫る。
「あらぁ……もっと楽しみましょう……いかがですか、先ほどの続きなど……」
 ソアの装備に向けてパイロキネシスを放ち、同時に他のコントラクターの動きを阻害しようと、触手で攻撃するつかさ。
 しかし、その触手は次々に切り裂かれていった。

「ふっ……その触手はもう通用しねぇぜ!!」
 それはベアがカメリアの『バキュー夢』で取り出した名刀『触手殺し』であった。かつて何かのゲームで遊んだ自分の記憶から吸い出したのである。
 名刀『触手殺し』は触手以外には何の効果もないなまくら刀であるが、触手に対してだけは絶大な威力を発揮するマジックアイテム。
 その刀を存分に振るい、ベアは次々に部屋中の触手を切り裂いていった。

「あらまぁ……なんと風情のない。まあいいですわ、もともと触手プレイはそこまで好みではありませんし」
 と、つかさはソアの追跡を逃れ、ついっと王の間を横切った。
「どこへ行く気っ!?」
 ソアは、戦線を離脱しようとするつかさを追った。しかし、王の間の壁にあいた穴――おそらく、ザナドゥドライブからの管が通っているのだろう――その穴へと吸い込まれるように滑り込むつかさを深追いするのは危険だと判断した。
「ご主人、今はとにかく触手に警戒しよう!! 今のうちに触手を薙ぎ払ってしまえば、Dトゥルーが手薄になるはずだ!!」
 ベアの言葉に頷き、さらに火力を強めるソア。


「うん、そうね……!! 今は目の前の戦いに集中しないと!!」