百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

続・悪意の仮面

リアクション公開中!

続・悪意の仮面

リアクション

「司の居所だったら分かるわ。仮面をつけた人を止めにいくというなら、協力してもらえない?」
「ああ、それなら案内を頼もう」
 仮面の情報を探っていたアキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)はシオンから情報を仕入れる。
「アキュート、情報が入ったんですか?」
「ああ。今から向かおう」
「わかりましたわ」
 アキュートのパートナー、クリビア・ソウル(くりびあ・そうる)はその言葉に頷いた。



「いやーーーー!!!!」

 廃墟の一角で目を覚ましたミーナは、ヒラニプラ中に響き渡りそうな大きな悲鳴をあげた。
 知らぬ間に露出の多い服へと着替えさせられていれば当然のことだろう。
「何コレ何コレ何コレェェエエエ!!?? 何でミーナはこんな格好してるの!?」
 混乱しているミーナに声量を気にする余裕などない。
「うわ、ちょっ……このままだと誰かに見つかってしまいます」
 用事を終え、丁度部屋から出ようとした司は慌て出した。
「おっと、まさかこのまま逃がすと思ってはいないだろうな?」
「仮面をどうにかするまでは逃がしませんわ」
 入り口を塞ぐようにアキュートとクリビアが立ちはだかる。
「司、そろそろやめてもらおうかしら。パートナーとして恥ずかしいわよ」
「自分でけしかけたくせに、よく言うよね」
「何か言った? ロキ」
「いいえ〜」
 揶揄う口調でぼそりと突っ込みを入れたロキに、シオンは牽制するように笑みを向ける。
「こっち……着替えて……」
 ミーナを保護したアイリスは、代わりの服を用意して渡す。
「あ、ありがとう」
 ミーナは自分が助かったことを認識し、ホッとした。
「もう……こうなったら突破するしかありませんね」
 不利を感じた司は超人的肉体で自らを強化し、アクセルギアで速度を上げて体当たりで扉を突破しようとする。
「……っく」
 扉の側にいた皆は咄嗟に散る。
 だが、逃がすまいとアキュートはバーストダッシュを使い、司の前に回りこんだ。
「やってくれるじゃないか。……まあいい、契約者と戦えるせっかくの機会だ。楽しませてくれよ?」
 アキュートはにやりと笑みを浮かべる。
「クリビア、そっちから逃がさないようにしろよ?」
 アキュートは挟み撃ちのように司の背後に立ったクリビアへと呼びかける。
「私はあまり敵に容赦しないほうなのですが……。アキュート、本気で殺っては駄目ですか?」
「駄目だ。クリビア、お前殺気が漏れてるぞ?」
「ふふ……。気のせいです、きっと」
 二人の恐ろしいまでの掛け合いに、さすがに司は背筋を震わせた。
「こうなったら……どうにでもなれ!」
 司は黒薔薇の銃で出口に近いアキュートを狙い打つ。
「……はっ、危ないな。だが、これはどうだ……!」
 アキュートは咄嗟にしゃがみ込み、どうにか弾を避ける。
 バーストダッシュで近づき、足を振り上げる。
 司は背後に大きく跳んだ。
「あら、わざわざ私のほうに来るなんて、私の存在を忘れたわけではないでしょうね」
 背後からクリビアが槍を振りかざす。
「うぁ……っと!」
 司は横へ飛びながら、地面を転がった。
「司、僕らのことも忘れたわけじゃないよね?」
 転がった先にはロキが控え、光条兵器を構えていた。
「これで、仮面はおしまい――っと、あれ。手が滑って衣装の方切っちゃった」
「――あっ」
 白々しいロキの台詞に、司の衣装を見たアイリスは声をあげた。
「ちょ……っ、ロキ、これわざとじゃないですか!?」
 司は破れた服を抑えながら立ち上がる。
 その瞬間、出口から赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)が飛び込み、光条兵器で背後から斬りかかる。
 仮面だけが綺麗に割れ、地面に落ちて砕けた。

「……司……破らないって言ったのに……」
「いた……っ、痛いですって……!」
 アイリスは服を破られた怒りで箒で司を叩きまくる。
「あ、ちょっと……それ、殴りすぎじゃないですか。そもそもの元凶は仮面なので許してあげては……」
 さすがに心配になり、霜月はアイリスを止めようとする。
「あー、手柄を取られてしまったな」
 その背後でアキュートが零す。
「まあ、良いじゃないですか。これで仮面に関する事件はひとつ解決いたしましたわ」
 なだめるようにクリビアが声をかける。
「そうだが。本音を言うともう少し暴れたかったな」
「えーっと、ごめんなさい。どうもあのタイミングが一番良さそうだったので……」
 微妙に不満そうな二人に、霜月は思わず謝った。
「いや、冗談だ。そんなに気にしないでくれ」
 そんな霜月に、アキュートは苦笑気味に返した。
「では、解決したことですしそろそろ行きましょうか」
 廃墟を出るよう霜月が促す。
 そうして皆が出口に向かった時、アイリスは足元にある紙に気付いた。
『おかげで良い怪談ネタが思いついたわ、 纏めたいからロキと一緒に先に帰ってるわね☆』
「慌しくて忘れてたけど、そういえばシオンに仮面を被らされたんでしたっけ……。それでちゃっかり私をネタにするとは……」
 アイリスの様子が気になり戻っていた司が、紙を覗き込んで疲れたようにため息を吐く。
「それ、一番の元凶はシオンさんってことでは」
「俺たちはその元凶にここまで連れてきてもらったわけだが……」
 そこで霜月とアキュートは黙り込む。
「えっと……ご愁傷様です」
 霜月は同情しつつ、他にかける言葉が見つからないようだった。