校長室
学園祭に火をつけろ!
リアクション公開中!
「ちょっと、どうするの? あの人多分すっごく怒ってるよ。だからあんな怖い顔してるんだって」 「や、今俺もどうしようか考え中なんだよ……………」 アキュートたちに聞こえないように話す二人。あまりにオロオロしているものだからか、ウーマがアキュートに向かって呟く。 「アキュートよ。そなた、顔が怖いから恐れられているのではないか?」 「そんな訳あるか。俺の見た目はこの際関係ないだろう」 「ならば、試しに彼らへ微笑みかけてみれば良かろう」 ウーマそう言うと、アキュートは不承不承に笑顔を浮かべ、再び聖と璃央へとその笑顔を浮かべた。 「ひっ! ねぇ、やっぱりあの人凄い怒ってるって!!! 笑顔ひきつってるし、目が笑ってないもの!」 「どうするかなぁ、謝って素直に許して貰いてぇけど………そういう訳にもいかねぇよなぁ」 一層恐怖に苛まれる二人を前に、真顔になったアキュートがウーマを睨んだ。 「ほらな、俺の顔が怖いって訳じゃあねぇだろ」 「うーむ………考えられる可能性としては一番妥当だと思ったのだがな」 アキュート、ウーマのやりとりと、聖、璃央のやりとりの両方を聞いていたラナロックは、苦笑しながら聖たちの元へと歩いていく。 「お姉さん、何処に行くですか」 「彼らの元に。どうやら貴女のパートナーさんが誤解をされているようなので、その誤解を解きに行くのですわ」 「なら、ペトも頑張るのです」 ラナロックに抱き抱えられているペトがやる気を見せたのか握り拳を作って胸の前でガッツポーズをする。 「あの――」 「は、はい!」 ラナロックの声に慌てる璃央と、しりもちをついた姿勢のまま数歩分後退る聖。 「お怪我はありませんか?」 「え……? あ、あぁ。俺は平気さ。でもねぇ………あそこに立ってる兄さんがちぃとばっかし怖くてね、これから怪我、するかもねぇ」 何処か諦めた様に笑顔を浮かべる聖を見て、ラナロックは苦笑した。 「あの方、その様な程度では怒らないと思いますわよ?」 「ペトもそう思うのです」 「だからそこまでお気になさらず。一言謝罪をするだけで良いと思いますわ」 「ペトもそう思うのです」 「それって……本当ですか?」 「ペトもそう思っ――あ、間違えたです」 隣に立っていた璃央も心配そうに訪ねるが、ラナロックが笑顔で頷くと、座り込んでいた聖の手を取り立ち上がらせて背中を押した。 「善は急げってね! 早く謝っちゃいましょうよ」 やや驚いた様な表情で聖たちを見ているアキュートの前に立った聖は、口ごもりながらも謝罪する。 「す、すいませんでした」 「ん? 何がだい? にーちゃん。何で急に謝られんだ、俺は」 「え、だって俺がぶつかったの、怒ってるんじゃ………」 「……………ぶっ! あっはっはっは!」 突然豪快に笑いだしたアキュートに、ただただ目を丸くするしかない聖と璃央。アキュートはそのままバンバンと聖の背中を叩き、豪快な笑顔のままに言った。 「何だよにーちゃん、わざわざんな事心配してたのか、律儀だねぇ。誰も怒ってなんざいねぇよ! 気にすんなって、寧ろ注意不足はこっちの方だしな」 「じゃあ…………」 「だから謝ったろ? 手ぇ貸してやろうと思ったらにーちゃんが後退っちまうからよ」 安堵のため息を漏らす二人の背後からラナロックが声を掛けた。 「ほらね、その方はお優しいお方ですわ。少し――見た目が怖いだけですわよ」 何処か含みを持って語尾の方でアキュートを向いた彼女。 「無事で何より。それより――そこに居るペトがこれからライブをするのだが、これも縁。そなたたちも見には来ないかね」 「「マンボウ!?」」 「うむ、如何に――」 「だからいちいち光るんじゃねって」 ウーマが回復魔法を(無意味に)かけようとしたのをアキュートが止める。 「そんな訳、良かったらいかねーかい? にーちゃん、ねーちゃん。そうだ、ラナロックのねーちゃんよ、酒はあんのかい?」 「お酒はないですわ。残念ながら」 「文化祭には相応しくないものだ、アキュートよ」 「あぁそうかい、わかったよ。んじゃ茶でも奢るぜ? せめてもの詫びの証だよ」 「どうする? 聖」 「面白そうだし、行ってみようかね(奢りだしねぇ……)」