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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 後編

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太古の昔に埋没した魔列車…エリザベート&静香 後編

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第13章 お掃除完了!そして修理へ・・・

「再び現場へやって参りました!お掃除はまだ続いているようです」
 まだまだ夜中だが時間なんて気にしていたらいいシーンを逃してしまうんですよ!と、刀真はナレーションを始めた。
「あれっ。2人だけで掃除しているんですか?」
「静香校長もいるけど、いろいろ忙しいみたいだから。ほとんどリオンと2人だけだよ」
 休みながら掃除を続けている北都がベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)の方を振り向く。
「バケツのお水片付けてきますね」
「重いから私が置きますよ」
 溢しそうに足元をふらつかせる彼女の手からリオンがバケツを取り、台車に乗せてやる。
「というか北都、一緒に行きませんか?」
「そうだね。女の子にあまり重いもの運ばせたくないし」
 台車にバケツを乗せ終わると、北都とリオンはヴァイシャリーの別邸へ運ぶ。
「椅子とか外さなきゃいけないから、使う部分だけ拭いてくれる?」
 キレイに掃除が終わったところか始めようと、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がドライバーで運転席の椅子を外す。
「はい、美羽さん!」
 ばさっと地面にシートを敷くと、2人で椅子を運ぶ。
「椅子のレバーを止めているネジは普通の鉄みたいね?」
「再利用できそうなのは箱に入れておきましょう」
「後は用意されたやつに合えば、それで止め直しするわ。あっ、ピッタリ合うのもあるみたい」
「コードはさすがに取替えね。出資者の3人が準備したヤツを使わせてもらうわ」
 朝野 未沙(あさの・みさ)は脚立に乗り、窓枠の傍にかけられているランプや、今にも千切れそうなコードを外す。
「未羅ちゃん、ペンチちょうだい」
「はい、お姉ちゃん」
 にゅっと手を出す彼女に朝野 未羅(あさの・みら)が手渡す。
「撮影させてもらってもいいですか?」
「いいわよ。未羅ちゃん、脚立支えてくれる?」
「分かった」
「この大きなのは燃料入れですぅ〜?」
 運転車両を見に来た朝野 未那(あさの・みな)は、シリンダー型の燃料入れの蓋を開けてみる。
「シリンダーを支えている大きな金具が壊れていますぅ〜!はわっ、こっちはコードが切れていますよぉ〜っ」
 破損箇所をメモして未羅の元へ走る。
「大変ですぅ姉さん。破損箇所がこんなにも!」
「5000年も前のものだし、それくらい想定内よ」
「さすが姉さんですぅ!」
「真夜中にこんばんはー♪」
 アダマンタイトと抽出したビリジアン・アルジーの溶液を入れた炉を抱えたルカルカが、窓が外れたところからにっこりと顔を覗かせた。
「出来た分だけ持ってきたわよ」
「破損した箇所はどこですか?」
「まずエンジンの方から修理するわ」
「運転車両ですね」
 玄秀が炉の横についた持ち手を回しながら、未沙の後についていく。
 取っ手を握る手から、彼の魔力が炉の内部へ伝わり、溶け出さないように防御幕を発生させる。
「シリンダーの横の金具に亀裂が入っているのよ」
「これは酷い破損ですね。ダリルさん、もう溶かせたと思うので、ちょうどいい温度に下げてください」
「魔法を与える属性を変えるんだったな」
 ダリルは炉の蓋をくるりと動かすと、ブリザードの冷気を込めて、取っ手をくるくると回して扱いやすい温度まで下げる。
「温度のメーターもついているようだが、今は1000度以上あるな」
「熱すぎじゃないの!?」
 そんなもので修理するの!?と未沙が冷や汗を浮かべる。
「私がファイアプロテクトをかけて守るから安心して」
「ティアンさんがそう言うなら・・・」
 耐熱性のコテに溶けたアダマンタイトを乗せてもらう。
「いったん、シリンダーも外したほうがいいだろ?」
 くっついたら拭き取れないだろうと、佐野 誠一(さの・せいいち)が外して退けてやる。
「ありがとう!―・・・怖いからちょっとずつやろうかしら」
 高熱によって青々とした輝きを放つ金属をゆっくりと塗っていく。
「もう片方は俺がやるからコテをこっちにくれ」
「はい。熱気に気をつけてね」
「あまり顔を近づけなきゃいいことだ」
 損傷箇所に塗るとシュゥー・・・と、青緑色の煙が発生する。
「あのアダマンタイトがエンジンが、修復に使われ始めました!それにしても不思議な色ですねー・・・」
「キレイな色ね、あまり余計な明りがないせいもあるかしら?」
 その光景を月夜がカメラに映す。
「この煙は害がないのか?」
「ビリジアン・アルジーの抽出の時には、そういった有害な気体は計測されなかったな。しかし、この熱気だ。吸うのはよくないな」
 ヴァイシャリーの別邸に用意された耐熱服を、一応着ているようだが顔は守られていないからな、とダリルが溶接面を渡す。
「ダリルったら、どこからそんなものを!?」
「部屋にあったから使っていいものだと思ってな。どこから取り出したと思ってるんだ?」
 目を真ん丸くした驚くルカルカにまたもや嘆息する。
「んー、頭・・・?」
 冗談交じりに言うと・・・。

 クスッ。

 と、どこからか笑いが漏れた。
 怒ったダリルはついに般若の表情へ変える。
「うにゃぁあ、か弱い乙女を叩かないでーっ」
「ただの冗談なんだから許してあげなよ、ダリルさん」
「―・・・くっ」
 ケンカはいけないわ!と未沙に言われてしまう。
 本当に叩くわけではないが、行き場の無くなった拳を下ろした。



 エンジン部分のみ、アダマンタイトでの修繕が終わり、誠一はコードのはんだ付けをする。
「まさか全部替えることになるなんてな」
「海に沈んでいたし、海水だもの。仕方ないわ。未羅ちゃん、白いコードを取って」
「これね?」
「えぇ、ありがとう。ここが終わったら計器の修繕ね。そうだ未那、そっち頼める?」
「分かりましたぁ〜。どなたかアダマンタイトを持って来てくださぁい〜」
「よし、全員で行くわよ!」
「どうしてそうなる?」
「だって、ルカたちしかいないもん。それに雷様パワーで溶かしても、吹雪は使えないのっ」
 別れられる人数じゃないもの、とルカルカがムッとした顔をする。
「わかったから怒るなって。だが、ギャグ禁止な」
「えぇ!?そんなっ、ルカ呼吸が苦しくなっちゃうわ」
 魔法を封じられたかのように、しゅーんとなってしまう。
「何だか急に静かになったわね」
 ルカルカたちが離れて未沙と未羅、誠一の3人だけの空間となった。
「この中、凄く広いねお姉ちゃん」
「声も響きやすくなったわ」

 ジジリリリ・・・ジュゥウ・・・。

 再び、はんだ付けの音しか聞こえなくなる。
「誰も喋らないの?」
「わざわざ騒がしくする必要もないような気が・・・」
 静かな方が集中しやすいんじゃ?と眉を潜めた。
「そりゃそうだけどね。あっ、未羅ちゃん。黄色のコードをちょうだい」
「黄色、黄色・・・あった!」
「未羅ちゃんがいると助かるわ」
「えへへ〜♪」
 少女が無邪気に微笑み、そこでまた会話が途切れてしまった。
「話題〜話題〜・・・むぅ」
 お姉ちゃんに楽しく作業してもらおうと、未羅は話題を探そうとしていると・・・。

 “コテを持ったまま、コテっと倒れたら危ないのよ!”

 と、どこかで聞いた元気な女の子の声音が聞こえたかと思うと。

 “どうしてそんなギャグばかりをっ!” 

 などと・・・、男の怒鳴り声が響いてきた。
 さらに、少女たちの声が彼の怒りを沈めさせようと、声をかけている。
 少年の声は・・・。
 我関せずと、2人の間に入らず黙ったままだ。
「向こうは賑やかだね」
「騒がしいの間違いだろ」
 炉を片手にカルキノスがノソッと車内に入ってきた。
「2人に巻き込まれている他のやつらが可哀想で、可哀想でホント可哀想な感じだ」
 彼の言葉に未那は本当にそう思ってるのかしら、と首を傾げる。
 両手で顔を覆い隠して肩を震わせているが、むしろ疑わしいくらいだ。
「ふぅ〜、エンジンの修理完了ね」
「この辺の配線も全部やらなきゃな」
「気が遠くなるわー・・・」



「ねぇ、椅子が破損してるからアマダンタイトで直したいんだけど・・・。って、人手たりないの?」
 運転車両に入ってきた美羽が手伝ってくれない?と声をかける。
「こっちは配線を先にやらなきゃいけないから、いいわよ」
「そんじゃ、そっちに行くか」
「この椅子よ、金属部分が割れているのよ」
 シートの上に置いてある椅子を美羽が指差す。
「溶接的にくっつけて、割れ目を塗っておけばいいか」
「同じような色だから目立たなくなるものね」
「おっと、冷却魔法はダリルなんだよな」
「眠ぃ・・・、破滅的に眠いです」
 シオンに叩き起こされて修理現場に行ってきなさいよ!と言われ、日が昇りきらないうちから早朝作業を始めたのだ。
「アイくん、大丈夫です?」
「・・・眠った、・・・平気」
「カルキノスくん、冷却は私がやりますね」
「中はめちゃくちゃ熱くなってると思うが、大丈夫か?」
「まさか、全力で魔力を注いでいませんよね?」
「そんなものは、キアイでなんとかなるものだ」
「なりませんよっ」
 さらっと言い放つカルキノスに、司が涙目になってしまう。
「フフウ・・・私のSPがすっからかんになりそうな予感しかしません」
 蓋をくるっと回して氷系術モードに切り替え、炉の横にくっついてる取っ手を握ったとたん・・・。
「うぐぐっ、なんか回しづらいんですけど!?」
「キアイだ、キアイッ」
「うわぁあん、そればっかりっ」
 グギギギ・・・・・・っと力いっぱい回す。
「ど、どうぞ。はぁー・・・はぁ、もうSPが・・・」
「―・・・ありがとう」
 いっきに顔色が悪くなり、足元をふらつかせる司を心配しながらも、椅子の修復を美羽は始める。
 アダマンタイトを乗せたコテで割れ目を丁寧に塗ってくっつけ、それが分からないようにキレイに塗り広げる。
「車内に戻して固定しなきゃ」
「運んでやろうか?」
 椅子の上に炉を乗せてのっしのっしと車内へ運ぶ。
 美羽が椅子をセットしている頃・・・。
「うぅ・・・」
 司は地面の上でへばっている。
「大丈夫ですか!?」
 どうしたらいいのやら、ベアトリーチェはおろおろとする。
「さっきから誰かの視線を感じるような・・・」
「―・・・はっ、・・・シオンくん!?」
 小さな声音で言うベアトリーチェの言葉が気になり草むらの方を見ると、特製スパイカメラセットを持って走り去っていく彼女の後ろ姿を司が目撃する。
「まさか、へなへなと倒れたところもっ」
「・・・おとうさん・・・・・・」
「フィリップくん、いつの間に!」
「―・・・ぁん?シオンのイタズラで恥ずかしい?ハッ今更だろ?いい加減慣れろ」
 アイリスの声に振り返ると、師匠が呆れたように嘆息している。
 神出鬼没な2人に今日も司は悩まされるのであった・・・。