百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

リアクション公開中!

【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ
【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ 【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

リアクション

 
 
    ★    ★    ★
 
「確か、空京に来ていると聞いてきたんだが……」
 周囲をキョロキョロ見回して人を捜しながら、イレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)が困ったようにつぶやいた。
「すみません。ちょっとお訊ねしてもよろしいでしょうか。このへんで、雪だるま王国騎士団長のクロセルさんを見ませんでしたでしょうか?」
「……、はっ、な、何?」
 突然イレブン・オーヴィルに声をかけられて、うつらうつらと半分寝ていたリカイン・フェルマータが、はっと我に返った。いきなり頭を上げたので、首の筋が痛い。そのすぐ傍では、またたび明日風が、まるでお経のようにえんえんと今までの旅路の話を語っていた。すでに自分の世界にどっぷりと入り込んでいるので、リカイン・フェルマータが眠りかけていたことにもまったく気づかずに話し続けている。
「ええ、クロセルさんを見なかったかと……」
「見てませんわ」
「そうですか。お邪魔しました。ゆっくり居眠りこいてください」
 でも、ここは道端だと心の中で言い添えてから、イレブン・オーヴィルは再び街路を進んで行った。
「はあ、俺のアイデンティティって、いったい何なんでしょうねえ……」
 なんだかどこかで見たことのあるような青年が、イレブン・オーヴィルとすれ違っていく。
「いったい、クロセルさんはどこにいるのだろう……」
 せっかく、冬季オリンピックに雪だるまたちの参加依頼をしようと、雪だるま王国の重鎮であるクロセル・ラインツァートに根回しをしてもらおうと思っていたのだが、会えないのではどうにもならない。
「仕方ない、このまま雪だるま王国へむかいますか……。それにしても、クロセルさんはどうしたんでしょうか。何か事故にでも遭っていなければいいんですが……」
 さすがに、ちょっと心配になる。
 さらに、しばらく歩いて行くと、なんと、捜していたクロセル・ラインツァートが街路樹にもたれかかっている。
「クロセルさん、やっと見つけました。クロセルさん……!? クロセルさん!!」
 声をかけたが返事がない。さらに近づこうとしたイレブン・オーヴィルが、やっとクロセル・ラインツァートの異変に気づいた。なんと、その仮面の中央に、深々とナイフが刺さっているではないか。
「クロセルさん、大丈夫ですか。クロセルさん!!」
 イレブン・オーヴィルが、仮面がナイフで縫い止められた街路樹をゆさゆさとゆすった。
「返事がない……、すでに屍に……。ああ、なんということだ。生ける伝説クロセル……。おしい人を亡くしてしまった」
 思わず天を仰ぐと。イレブン・オーヴィルが、クロセルの仮面にむかって鎮魂の祈りを捧げ始めた。
「あん、てめえ、何やってんだ?」
 そこへやってきた南鮪が、不思議そうにイレブン・オーヴィルに訊ねた。
「祈りを捧げているのですよ。今はなき偉大な人に……」
「はあん、それだったらちゃんと生まれ変われるように捧げ物をしなくちゃな。これをやるぜ」
 そう言うと、南鮪が、イレブン・オーヴィルに光る種籾を渡した。
「これは……。ああ、いい供え物です」
 種籾を受け取ると、イレブン・オーヴィルがそれを街路樹の根元にまいた。
「りっぱな種籾戦士として復活してください、クロセルさん。では、私は雪だるま王国へむかいます。そこで幸せになりましょう」
 そう言い残すと、イレブン・オーヴィルは去って行った。
「しまった、奴から何ももらわなかったぜ」
 ちょっと厳かだった雰囲気に戸惑って、肝心なことを忘れてしまっていた南鮪であった。
「雪だるま王国かあ。何か、いいもんでもあるのか? 幸せになれるのか……」
 そうつぶやいたとき、街路樹に突き刺さっているナイフと仮面に気づいた。
「おっ、こりゃいいや。種籾の代わりにこいつをもらっておこう」
 そう言うと、南鮪はクロセル・ラインツァートの本体……もとい、仮面を外してポケットにしまい込んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「はあ……。俺っていったい……。俺っていったい……」
 カフェテラスでおしるこドリンクをズルズルとすすりながら、素顔のクロセル・ラインツァートが落ち込んでいた。
「試すんじゃなかった。最悪の一日です」
「最高の一日だったよね」
 落ち込むクロセル・ラインツァートとは対照的に、同じカフェテラスの別の席にいた水神樹はまあまあ御機嫌だった。
「あの、かっぱらいさえいなければ……」
 返す返すも、せっかく買ったショールを南鮪にかっぱらわれたのが唯一の汚点だ。
「まあ、仕方ないよ。交通事故みたいなもんだよ」
 ポケットに手を突っ込んだまま水神誠が言った。その様子を、水神樹がジーッと睨みつける。
「なんだか、騒がしいなあ」
 いきなり水神樹に首を絞められている水神誠の方をチラリと見て、健闘勇刃がつぶやいた。これじゃ、なんだか落ち着けない。もっとも、落ち着けない理由は他にもあるのだが……。
「どうかしたの、健闘くん?」
 ちょっと不思議そうに天鐘咲夜が聞き返した。今日の彼女の服装はは、おへそがむきだしになるほどのピンクのクロップトTシャツに、若草色のミニスカート、ストッキング丈のルーズフィットブーツ、頭には桜の髪飾りというおしゃれな格好だ。
 普通にワイン色のチェック柄のシャツに、ズボン姿の健闘勇刃としては、もうちょっとおしゃれしてくればよかったなと思ってしまう。それでも、天鐘咲夜は格好いいとは言ってくれたのだが。
 今日こそは天鐘咲夜ときっちりとしたデートを、そして……。
 そう意気込んできたはずなのだが、どうやら、意気込みは天鐘咲夜の方が数段上だったようである。
「いや、なんだか騒がしいなと。もっと落ち着ける景色のいいとこでも行くか」
「うん」
 満面の笑みを浮かべて答えると、天鐘咲夜は立ちあがって健闘勇刃の腕をとった。
「うむ、ブームはヘソ出しと……」
『なんだか、わざと間違えてないか……』
 メモをとる椎名真(椎葉諒)に、椎名真が突っ込んだ。
「お待たせしましたぁ」
 そこへ、注文したプリンが運ばれてくる。たっゆんをプルンとふるわせた、大谷文美嬢だ。またバイトをしていたらしい。
「待ってたぜ!」
 思わず椎名真(椎葉諒)が歓声をあげた。
「待ってたぜ!」
 まったく同じ台詞を吐いて、南鮪が飛んできた。一瞬の早業で、おちょぼ口でプリンをチュルンと吸い込んでしまう。
「きゃあ」
 突然のことに驚いて、大谷文美がぺったんと尻餅をついてひっくりかえった。
「うめえ〜」
「きききき、貴様ぁ!」
 ぺろりと口の端のカラメルを嘗め取る南鮪に、椎名真(椎葉諒)が、全身をわなわなとふるわせて叫んだ。
「おっと、ただとは言わねえ。受け取っといてくんな。今の流行もんだそうだ」
 そう言うと、南鮪がテーブルの上に第二世代種籾を放り投げた。そのまま、水神誠をシメている水神樹に気づかれないうちに、全速力で逃げ去る。
「これも、流行り物なのか……」
 メモらねばと、椎名真(椎葉諒)が第二世代種籾の入った袋を取りあげる。
『プリンはいいのか?』
 椎名真が突っ込んだ。
「そうだった。お姉さん、お代わり!」
 椎名真(椎葉諒)は、やっと起きあがったウェイトレスの大谷文美に、きっぱりと言った。