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古代兵器の作り方

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古代兵器の作り方

リアクション

     ◆

「くぅ………やるじゃあねぇか。あの女ぁ!!」
 エヴァルトの体を乗っとり、ラナロックと対峙しているエスは、精一杯顔をしかめながらそう呟いた。物陰に身を寄せているのは、彼が劣勢に立たされているから、である。
「あぁっっぁぁっァアアァアアアアアっっっっっはぁああっ!!! 何だカ面白ェエ奴等ガ多いナあぁバラッバラにシテヤりテェエよッ!!!! おらぁああぁアアアアアア隠れンボは飽きタんだよおぉぉおおぉっぉ」
 銃声と叫び声が誰にでもなく向けられている。
「あいつぁ底無しかよ…………ッハ! 益々殺してやりてぇなぁ」
 そう言うと、再び彼はラナロックの前に現れ、真空波を彼女に向けて放った。それがラナロックの体に直撃し、彼女は後ろにあった段ボールの山に衝突する。
「今のはやったろ! ザマァねぇぜ!」
 ゆっくりとラナロックの方へと歩いていき、段ボールの山に手を入れて手探りでラナロックらしきものを探したエスが、何かを見付けたのか思いきりそれを引き出す。
「よぉ女ぁ! どうだ、死が見える感想は」
「う、うぅ…………」
 気を失っていたラナロックが彼の声で目を覚ます。が――その雰囲気にエスは首を傾げた。
「………アラァ、コレハドウいウじょうきょうナノカシラぁぁ? オにいサンハドナタ?」
 声色が変異し、話口調が変異している彼女。
「誰だぁ? テメェ………何であの下品な笑い方をしねぇ………」
「ソンナこと、シタノぉ? わたしガ?」
「……………」
 彼女の首を握り締めて持ち上げているエスの頬に、ラナロックの手が艶かしく当てられる。
「マァ、こまカイことナンテいイジャナイ。ソレヨリオにいサン、ずいぶんトたくマシイノネェ、わたし、ソウイウひとッテだいすキダワァ………ウッフフ」
「気色悪ぃ奴だ――っ!?」
 そこで、エスは言いかけた言葉を呑み掴んでいたラナロックを思いきり壁に叩きつける。
「…………いたァイ、ツレナイノネェ、オにいサン。いイジャナイ、わたしトいっしょニたのシイこと、シマショウヨぉ…………」
 言いながら、ラナロックは壊れた人形の様に立ち上がった。身体中からは、血にも似た真っ赤な液体に彩られている。
「勝手に果てろよ、俺ぁそんなものに興味なんざねぇんだ」
「ワカッタァ、あなた、てレやサンナノネェぇ? かわいイワァ…………クスクス。デモだいじょうぶ、わたしガやさシクおしエテアゲルワァ、しノかいらくニおぼレマショウヨっ」
 にっこりと笑った彼女は、ゆっくりゆっくりエスとの距離を縮めていく。
「はっ!? 俺は強ぇ奴と死合いてぇんだよっ! お前みたいな奴ぁ呼んでねぇぞ」
 再び真空波を撃ち込むエス。が、どういう原理か、ラナロックはそれを打ち消しながら進んでくる。一歩、また一歩と距離を縮めてる彼女。何度も真空波を撃ち込んではみても、しかし彼の攻撃は無力化されてく。
「出鱈目ってんだよ…………クソっ!」
「ウッフフ、ソンナニあせラナクテモいイジャナイノ。セッカチサンナンダカラぁ」
 エスの前までやって来たラナロックが手を伸ばし、エスに掴みかかった時である。
「あぁ………ホント、やれやれだよなぁ………なんでこんなことやってんだろ。一文の得にだってならないのになぁ………」
 大振りの刀、野分の柄を彼女の手に当て、つっかえ棒の要領でラナロックを止めた瀬道 聖(せどう・ひじり)は、至極面倒臭そうに呟きながら現れた。
エスとラナロックの間に割って入っている彼が為に、ラナロックの進行はそこで停止した。
「ちょ、ちょっと聖ぃ! 私はどうすれば良いのよぉ……」
 おそらくは彼の後に着いてきたのだろう。幾嶋 璃央(いくしま・りお)は半分泣きながら、三人からやや離れた場所でオロオロとしている。
「大丈夫かい? 怪我してるんなら、後ろにいる彼女に手当てしてもらうと良いよ」
「えっ!? 私、そう言う役回り………!? ま、まぁ………武器握ってってよりは、いっか………な」
「んだよ、邪魔立てすんのかぁ!? お前」
「邪魔立て? まさか――助太刀って言ってほしいもんだねぇ」
「アラァ、アラアラァ! いイおとこがふえタワァ! さいこうネぇ!! オねえサンうでガなッチャウワヨっ! デモ、ふたりいちどハたいへんナジャナイぃ?…………けいけんナイカラためシテモミタイワネェ………だめダワァ!!!!!!! かんガエタダケデぞっくぞくシチャウぅっ! キャハっ」
 突然顔を赤らめ小刻みに震えだしたラナロックは、今までの緩慢な動きのままに更に二人を押し上げる。
「おらぁ! 助けんだろ、俺を! もっと気張れやぁ………………!」
「勝手なこと………………言わないで貰いたいねぇ…………………!!!!」
 左手を差し出し、それを聖に止められていたラナロックがは、今度は右の手を彼等に向ける。それをエスが拳で押さえ込むが、二人をじりじりと押され、後ろへと下がってしまっている。
「が、頑張れ二人ともっ!!」
「お姉さん…………どくといいよ……………」
 固唾を飲んで見守っていた璃央の背後から声が聞こえ、思わず彼女は「はい!」と返事しながら、振り向くことなく横へとずれた。
「何度も言うけどお兄ちゃん…………絶対に殺しちゃ、ダメだからね………………」
「分かってる」
 道をあけた璃央の横を駆け抜ける爽麻と鏨が、既に臨戦態勢のまま三人へと駆け寄ると、鏨は手にする純を抜刀することなく振り抜いた。鞘のまま――。
「たいへんダワァ、ここマデもてルノッテひさシブリィッッッ!!!」
 二人を押し込んでいた彼女は、そこで後ろに大きく飛び退いた。今までの緩慢な動きは何処へやら、俊敏に回避行動を取り、先程まで握っていた銃声を手にする。
「どうぐヲつかッタことなイノヨォ!!! じまんジャナイケド」
「あ、あのお姉さん………なんの話してるんですか…………」
「ちょっとネジが外れてるみたいなんだよねぇ…………あんな事言ったり、こんな騒動起こすような人じゃないと、俺は記憶してたんだけどなぁ………」
 漸く力比べが終わったから、爽麻の言葉に返事を返しつつ、聖は被っていた帽子を直す。
「砕牙………お願い……」
 聖の言葉を聞いていたのかいないのか、爽麻が呟くと、和服姿だった彼女の装いが変異する。セーラー服にニーソ姿になった彼女は、自分が意図していなかった格好に赤面した。
「ちょ、ちょっとっ…………!?……何これ…」
「………………」
 誰からの返事も帰ってこない中、鏨が改めて構えを取る。
「来る…………っ!」
「おんなノこカァ………ソッチハマダダケド…いイモノカシラネ?」
 ラナロックは手にする銃を爽麻に向け、引き金を引きながら走り始めた。
「…………何で私?」
 その場にいては跳弾で誰かが怪我をすると踏んだ爽麻は、彼等の中から飛び出ると、回避行動を取りながら手にするワイヤークローをラナロックへと向けてた。
「ヘェ! あなた、ソッチノしゅみ?」
「そっちってどっち…………!」
 射出されたワイヤークローはラナロックの体をかすめ、天井へと向かって飛んでいく。
「ざんねんネェ!」
「そうでもない………よ」
 それは外れた訳でなく、天井に張り巡らされている鉄骨をしっかりと掴んでいる。彼女は慣性の法則を利用し、地面から足を浮かせた。ワイヤークローの掴んだ位置を機転とし、爽麻は地上から僅か数センチの高さを維持したままに移動する。
「速い! ただそれだと――予測される!」
 鏨に危惧は、しかして爽麻にしてみれば想定内だったらしい。縦断ごとに壁を蹴り、微妙にコースを変えながら素早く移動する。
「皆、今のうちにその人を捕まえて――」
「ソレハいやヨ、わたし、マダたのシンデイナイモノ」
 片手で高速度の空中戦を展開する爽麻に弾丸を放ち、もう片方の手に握られていた銃で足元やら壁やらを出鱈目に撃ち始めた。周囲に埃がたち、彼女の姿はそこで消える。見えなくなる。
「小賢しい真似を――」
 鏨が煙のように立ち込める煙を純でかき切ると、その太刀筋だけ埃が消える。が、既にそこに彼女の姿はない。一同が構えを取って辺り警戒していると、銃声が再開された。