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古代兵器の作り方

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古代兵器の作り方

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 7.――『壁と呼べるものはしかして熱く燃ゆる者』





     ◇

 後悔したことはありますか?

      いいえ、ありません。

 後悔させたことはありますか?

      いいえ、ありません。

 後悔しますか?

      えぇ、とても――。





     ◆

 北都とリオンは台車を見付け、その動きを完全に止めていた。理由は二つ。一つは、戻ってきた場所に予期していない登場人物がいる、と言うこと。二つ、それが招かれざる人物である、と言うこと。故に二人は動きを止めて、目の前で威風堂々座っている鍬次郎を見つめていた。
「そこを通してくれないかな。僕たち、あっちに行きたいんだけど……」
「無理だ、動けねぇなぁ」
「……………北都」
「困ったなぁ………」
 一向に動こうとしない鍬次郎を見ながら、リオンと北都は困惑の色を見せた。
「まぁそう急くなよ。どうだい、此処は一つよ、ゆっくり見物しようじゃねぇか」
「遠慮しておくよ。僕たち急いでるからね」
 鍬次郎は座ったまま、やれやれ、とばかりに顔だけ後ろに立っている二人へと向ける。
「奇遇だな、俺たちも急いでんだよ。早いこと標的を殺してぇのさ」
「……………標的――?」
「そう標的さ。何も俺たちだって好き好んでやってるわけじゃあねぇのよ。『びじねす』……ってーんだっけか。生活が掛かってるんだよ。わか――」
 彼の視界、下の方に何やら青く光るものが見え、彼は言葉を止めた。首には冷たい、金属の感触。
「僕はね、大切な物を守れなかった過去があるんだ」
 その声は努めて平坦に。
「後悔するのはもう嫌だよ」
 その声は努めて冷淡に。
「ほう、兄ちゃん。おめぇ、狙いに来たのか――? 俺を」
「どうだろうね、わからない」
 まるで鈴のような、しかし耳鳴りの様に気味の悪い音が、ひたすらに鍬次郎の首を回っている。青い青い、丸が音。
「大丈夫、僕は命の重みを知ってるよ。だから大丈夫、あなたたちみたいにそう易々と奪ったりはしないから」
「…………………………」
「北都君たちは早くウォウルさんたちのところへ」
「行かせねぇって言って――」
「動くと危ないかもね。まぁ、それ以上僕は何も言わないけどさ」
 殺意もなく、悪意もなく、淡々と呟く彼は、自分の横を過ぎ去る北都たちを見送ってから、動きを止めている鍬次郎へと目を配る。
「やるじゃねぇか、兄ちゃんよぉ……」
 そして思うのだ。
「(脅してはみたけど……………これからどうしようかねぇ……チャクラム取るタイミング、無いんじゃないかな)…………………………」



 北都たちが台車を持ってきた事で、一同の動きは変化を見せる。
「ウォウルさん! 早く台車に乗って!」
 走ってきた北都の声に、その場の一同が彼の方を向く。直ぐ様数人で彼を持ち上げる準備をしながら、ルカルカが叫んだ。
「通路がわかる人いるの!?」
「駄目です……みんなわからない! 移動したところで追いつかれてしまいますよ!」
 リオンが返事返す。
「そんなぁっ!? じゃ、じゃあどうするの!?」
 ミシェルは半ば泣きそうになりながら、誰にともなく答えを仰いだ。と
「みなさん、そちらに攻撃行きますよ!」
 ハツネと交戦していたルイが叫びながら、唯斗とルイ、佑一を置いてウォウル元へと走ってきたハツネを追いかけてやってきた。
「僕が止める、止めてみせる! こんな事、許しはしないからっ!」
 そのやり取りを聞いていた託は、瞬間的に鍬次郎の首からチャクラムを拾い上げると一目散にウォウルたちの元へと向かった。
「ルイさん、託さん、避けてください!」
「ウォウルさん、まだそのような事を言いますか!!」
「いいから避けなさい!」
 怒号が混じり、飛び交う中で、横になっていたウォウルが彼を庇うようにして前に躍り出た二人に手を伸ばす。両名の肩を掴んで思いきり引っ張り、代わりに自分がれ変わる形でもってハツネの前へと進んでいく。
「お嬢さん、ナイフ何て危ないもの振り回さない方が良いですよ」
 いきなりの行動に驚き、動きを止めたハツネの横から、真っ赤な頭が手を弾く。
「よし、ギリギリだったな。あまり無茶するなよ、今ので傷口広がったろ」
「仕方ないですよ。あのままではどちらかが傷ついてしまいますから……………ねぇ…………」
 無理が祟ったのか、ウォウルの体が膝からくずずれ落ち、地面にしりもちを付きそうなタイミングで、北都が彼の下に今持ってきた台車を滑り込ませる。
「ナイスキャッチだ、僕。もう、ウォウルさん、怪我人でしょ!? 自覚無さすぎだよ」
 やれやれ、とばかりに彼はそういってため息をついた。
「そんな――ハツネ、ハツネが負けたの……?」
「こんなことをやってても、いつか絶対後悔するだけだ。早いとこ足を洗うことをおすすめするよ」
 愕然とするハツネに対し、唯斗がそう言葉を投げ掛けた。
「おーい、みんな!!!!」
「大丈夫ですか!?」
「何か凄いことになってたけどね」
 海、柚、三月が、漸くそのタイミングで一同に近付いていく。
「おや、君は確かに………」
「良かった、何とか助かってたのか」
 海がウォウルを見て安堵している様子を、面白くなさそうに見詰める三人。
「こんだけ集まっちまったら、もう任務は無理だな。帰るぞ、お前ら」
「…………………………」
 鍬次郎は自ら暗殺対象に対し、殺害不可、と判断をつけ、注意が逸れている内に、と、その場を後にした。不貞腐れたハツネ連れて。