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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は隣にいる鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)のおちょこに純米大吟醸を注ぐ。
 それを受けると、今度は真一郎がルカルカにお酌をする。
 2人は温泉から上がると、部屋の電気を消し、縁側で酒を酌み交わしていた。
「ルカルカその浴衣良いですね」
「えへへ、ありがとう」
 ルカルカが着ているのは、旅館の浴衣ではなく、自前の浴衣。
 紺の地に赤いトンボの柄。
 真一郎はルカルカが手作りしてきたフグのみりん干しに手を伸ばす。
「このお酒とよく合いますね」
「良かった〜♪ じゃあ、ルカも1つ……うん、美味しい」
 2人は顔を見合わせ、ちょっとほほ笑んだ。
 ほろ酔いになってきたところでルカルカは真一郎を膝枕。
「こんな時間がずっと続くと良いですよね……」
「うん。あ、でも時々はびっくりするような事件が起こって欲しいかも」
「はは、ルカルカらしいです」
 庭に目を向けると、山茶花が月明かりの下でひっそりと咲いている。
 水琴窟の音とコオロギの声が重なり、ハーモニーを奏でる。
「ルカの生まれたところはね、日本の北国なんだ。しかもすっごい山の中」
「へぇ……」
「この時期になると家の西側の土壁が夕日と赤トンボで満たされるんだよ」
「綺麗なんでしょうね」
「うん、そりゃあもう。小さいころはトンボ取って遊んだなぁ……。それから、すごく背の高いススキが生い茂る小道。自分の背よりも高くて……一緒に歩いてるお父さんの背中だけを見て歩いたっけ……」
「素敵な場所ですね……。俺も行ってみたいです」
「うん、楽しみにしてるね」
 ルカルカは嬉しそうに笑うと真一郎の頭をやさしくなでた。
「もう、けっこう冷えてきたね」
「そうですね」
 真一郎が膝枕をやめ、普通に座る。
 ルカルカが障子を閉めようと立ち上がると、急に後ろから手を引かれ、バランスを崩してしまう。
「きゃっ」
 気が付くと、ルカルカはお布団に押し倒されていた。
 いつの間にか真一郎の体からオオカミの耳としっぽが生えている。
 真一郎はルカルカの右耳を甘噛み。
「や……だめ……」
 ルカルカはそれだけで赤面してしまった。
 真一郎はルカルカの唇を奪う。
「ん……ふぁ……」
 熱いキスを何度もかわす2人。
「ルカルカ……愛しています」
 真一郎は真っ赤になりながら、そう囁いた。
「うん……ルカも……真一郎さん……大好き」
 部屋の中では2人が甘い吐息が響いたのだった。


 翌朝。
 真一郎よりも先に目が覚めたルカルカは昨夜の事を思い出し、またも赤面してしまっている。
(あれ? でも……真一郎さん……水面に映った月なんて見てなかったよね? ……もしかして超感覚!?)
 横で寝息を立てている真一郎の顔を見ると、愛おしさが溢れてきた。
 ルカルカは自分の右耳に髪の毛を掛けながら真一郎の頬にキスを1つ落とした。
「真一郎さん……愛してる」