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【ダークサイズ】捨て台詞選手権

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【ダークサイズ】捨て台詞選手権

リアクション

5.大総統の館 3階ガーディアン

「はーい、お集まりのSDペンギンのみんなー。新人研修はーじめーるよー」

 館の3階では、桐生 円(きりゅう・まどか)は教員の指し棒を持ち、パイプ椅子に座った新人のペンギン部隊戦闘員を前にしている。
 彼女はプロジェクターで映した戦闘員の心得を指し、

「りぴーとあふたーみー。一つ、ヒーローと戦う時は、取り囲んでピンチを演出してあげる」
「くわー」
「二つ。二人同時戦闘はマナー違反。一人ずつ順番に攻めること」
「くわー」
「三つ。人がしゃべってる時は戦っちゃダメ」
「くわー」
「四つ。攻撃が外れても、当たったふりをしてあげる」
「くわー」
「五つ。ガチで来たら動物愛護団体にすぐ電話」
「くわー」
「六つ……」
「あの、円ちゃんさ……場所空けてくんない?」

 そこに超人ハッチャンが円を注意しに来る。
 巨体の彼の姿に慣れない新人ペンギンは、いっせいにクワクワと騒ぎ始めている。
 円は指し棒で超人ハッチャンをぺしぺし叩く。

「ちょっと見ないでよ! 研修内容は企業秘密、いや、結社秘密なんだぞー!」
「いやだから、今日は捨て台詞選手権だから……」
「何それ、そんなの聞いてないよ」
「これこれこういう企画でね。じきみんな上がってくるからさ」
「ふーん。でもどうせ、ハッチャンには応募ゼロで3階はスルーでしょ?」
「ひどいな! 今回はちゃんと来たよ!」
「ふーっふっふ! そのとぉーりっ」

 円が声のする方を振り返ると、師王 アスカ(しおう・あすか)が腰に手を当てて立っている。

「待ってたよぉ、この時を! ようやく3階ガーディアンの座が私のものになる日が来たようねっ」

 3階ガーディアンの称号を手にするために、数々の挑戦を繰り広げてきたアスカ。
 今回はその直接アピールのチャンスとあって、気合いも充分である。

「あー、その3階ガーディアンなんだが……俺も立候補していいかなぁ」

 アスカと超人ハッチャンのもとへ、山田 太郎(やまだ・たろう)がぼさぼさ髪を掻きながらのそりと寄ってくる。

「なあ総帥さんよ……ちなみに3階ガーディアンの給料はいくらだ? ガーディアン手当てくらいはあるだろう?」

 太郎は脱力した渋さでボソボソとしゃべる。
 まぶたも無駄な力は入っておらず、トロンとした感じだが、それがまた瞳の奥の必死さを際立たせ、何か逼迫した事情があるように思われる。
 超人ハッチャンは初めての問い合わせ内容に、

「いやー、そういうの特にはないなぁ……給料とか、どうなってるんだっけ……」

 ダークサイズナンバー2も弱った顔をする。
 今度はカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が太郎に教えてあげる。

「あのね。ダークサイズはそういう雇用システムじゃないんだよ。出入りは自由だし何やってもいいけど、自分の食いぶちは自分で稼ぐ! ダークサイズの名前は存分に利用しまくっていいけど、アイデアは自分で持ち込むのが原則だねー。あとネタをいじくられても文句は言わないこと」

 超人ハッチャンの隣では、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が、

「ダークサイズとはそういうシステムだったのか? ハッチャン」
「いや、僕も知らなかった」
「ということは、カレンのやつめ……一人で勝手な解釈をしとるのう……」

 と、やれやれといった顔をする。

「ふ〜ん。じゃあ、おいちゃんには何ができるっていうのかしらぁ〜」

 アスカがどことなく意地の悪そうな言い方で、太郎のにじり寄る。
 後ろから蒼灯 鴉(そうひ・からす)が引き留めに入る。

「お、おいアスカ……いきなりライバル心むき出しでどうする……」
「だ、だってぇ〜。ずーっと私アピールしてきたのに、こんなタイミングで3階ガーディアンの倍率上がるなんて思ってなかったんだもん〜」

 振り返ったアスカは、悔しさからかすでに目がうるんでいる。

(か、かわえええ〜!)

 と、早速止めに入ったのを忘れ去り、アスカの上目遣いに夢中になる鴉。
 それを尻目に、ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)が超人ハッチャンに、

「やあハッチャン。久しぶりだね」
「やー、ルーツ!」
「あの薬、効果はどうだった?」

 現在怪人となっている超人ハッチャンを人間の姿に戻してあげようと、薬の研究をしてくれているルーツ。
 超人ハッチャンは嬉しそうに、

「そうそう! あれすごかったよ。本当に肌の色だけだけど、元に戻った」
「そうか。まあ薬も切らしてしまっただろうから、また緑色になってしまったようだね」
「うん、肌の色が定着する前に薬が切れちゃったから。あとルーツ……」
「なんだ?」
「戻るのが肌の色だけだとさ……ガチムチのゆがみねぇ兄貴にしか見えないんだよね……」
「ああ、そうか……体格も同時に変化させないと、ということか」
「健康状態はどうだい?」
「うん、むしろ人間の時より漲ってるね……」
「なるほど。今の方が調子がいいのは、いいのやら悪いのやら……」

 と、ルーツはメモをとりながらまた新薬に向けて考えを練る。
 一方、

「で、アイさん、どうしてボクまでこんな恰好をしてるんですかぁ……」

 メイド服を着せられているイブ・アムネシア(いぶ・あむねしあ)が、同じくメイド服を着こなすアイリス・ラピス・フィロシアン(あいりす・らぴすふぃろしあん)に、遠慮がちに文句を言っている。

「……大丈夫……似合ってるから……」

 アイリスはわずかに笑顔を作りながら、イブのメイド服姿を満足げに眺める。

「そういう問題ではなくぅ、いや、それも問題なんですが〜、ダークサイズさんが悪いことしないように見張りに来たんじゃないんですかぁ?」

 そんなイブに、やはりメイド服のシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)がスカートをひらひらさせながら言う。

「その通りよイブ♪ これは目立たないようにするための、潜入用せ・い・ふ・く♪」
「あの〜、今ボクたちが一番悪目立ちしてる気がしますがぁ」

 シオンは人差し指を口に当て、

「あら、ダメよイブ♪ そんなこと口にしたら、ワタシたちがスパイだってばれちゃうわ♪」
「スパイってこんな服着ないですよぉ」
「……大丈夫……これなら逆に疑われない……」

 アイリスはあえてスパイらしくない服装なのだと言わんばかりだが、

「だったらもっとマシな衣裳がある気がぁ〜……」

 と、イブは釈然としない。

「というわけでツカサ♪ 心の準備はいいわね?」

 シオンは、『タルタル特製・気付け薬』で、すでに強引にメイド服少女と化した月詠 司(つくよみ・つかさ)の方を向く。
 司も、

「心の準備も何も……シオンちゃんの中ではコレありきなんやろ……?」

 と、早くも諦めと受け入れのスイッチが入っている模様。
 そして、2階でクマチャンをボコボコにし終わった面々が、3階フロアへ上がってくる。

「ちぇ。じゃあ研修は上の階でやるよー」

 円は新人ペンギン達を連れて、最上階目指して階段へ向かった。


☆★☆★☆


『さて、続いて3階ガーディアンこと、ダークサイズ総帥こと、超人ハッチャンの捨て台詞ですね。今回はちゃんと応募は……』

 と、若干不安そうなリアトリスの言葉に、

「ふふふふ……ぅはははは! よーく来たな! 3階の応募者はこんなにたくさんいるのだ!! どうだ、うらやましいか!」

 超人ハッチャンはさも嬉しそうな顔で応える。
 ダイソウもそれに頷き、

「うむ。総帥よ、よかったな。こんなに同情票が集まって」
「同情票なんかじゃないっすよ、閣下! 決して憐れみ……じゃ、ない、よ、ね……?」

 と、徐々に不安になって、応募者たちを振り返る。

「え? まっさかー! ボクは決して、構ってくれる人がいないと可哀そうだから、保険になってあげようなんてこれっぽっちも」
「ひどいよカレン!」
「まーまー、こんなに集まったんだからよかったじゃん」
「いまいちフォローになってない!」
『さ、それでは最初の捨て台詞は……』

 進行に慣れてきたリアトリスは、さっさと進める。
 そして手を上げるのはアスカ。

「はいっ! はーいはいはいはい! 絶対私〜!」
「まあアスカ、落ち着きなさい。年頃の乙女がはしたないわ。それに出番は逃げたりしないから」

 トップバッターで先行逃げ切りを図るアスカを、『アスカの姉』を自称するオルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)がたしなめる。
 アスカたちが初戦に立つことになり、アスカと超人ハッチャンと鴉が前に出る。
 鴉は捨て台詞などと言う恥ずかしい行為にどうしても乗り気になれず、

「はぁ……やるのか……いくらアスカのためとはいえ……ていうかルーツにベル。おまえたちは何故後ろで待機してる?」

 と、ルーツとオルベールをとがめるが、

「今回は負けなければならないのだろう。我は回復要員としてケガをするわけにはいかないからな」
「ベルは他に大事な台詞を受け持ってるからダメ♪ それにアスカが3人で言わないと意味がないって言うんだもの」

 と、二人とも自分の役割を主張。
 鴉は悔しそうに、

「くそー……こんなとこクマ野郎に見られたら何てからかわれるか……あれ? クマ野郎はどうした?」

 と、仲がいいんだか悪いんだか、いつも鴉をいじりに来るクマチャンの姿を探す。
 審査員席を見ると、ダイソウ達が座るテーブルの一番隅に、クマチャンの写真と脇に花が添えられている。

「な、なにいいい! ま、まさかクマ野郎」
「あ、治療中なだけです」

 おふざけが過ぎて大けがをしてしまったクマチャンのことを、リアトリスが補足説明。

「まぎらわしいぜ!」

 と、鴉は言いつつも、ちょっとつまらなそうにつぶやく。

「ちっ……せっかくアスカの恋人になったことを自慢して、ぐうの音も出ないようにしてやろうと思ったのに……」
「な、なんだってえ〜っ……」

 鴉が振り返ると、包帯ぐるぐる巻きのクマチャンが。

「びっくったー!」
「か、鴉……君までリアルが充実した人間に仲間入りか……」
「おまえ、無理していじりに来るなよ」
「で? どこまでいったの? 当然キスは済ませたでしょ? いや、鴉のことだから、どーせ手を繋ぐかどうかでてんやわんやに違いない」
「う、うるせえ!」
「ところで鴉、俺達の包帯ぐるぐる巻きの感じ、ペアルックみたいだね」
「俺のはケガじゃねえっ!」
「今俺が迫ったら、アスカ間違えて俺にチューするかな?」
「間違えねーよ!」
『では開始です』

 と、流れを無視してリアトリスが戦闘開始の合図。
 そして、女子がいるのを見て、まずはやはりゲブーが飛び出す。
 今度は先ほどの反省を生かしたのかどうか、バーバーモヒカンと同時攻撃。

「俺様がおっぱい揉んで喜ばせしてやるぜーっ!」
「やかましいーっ!!」

 ゲブーは自分の欲望を言っただけだが、それが鴉の神経を逆なでしてしまい、

ばぎいっ!

「何でまた俺様ばっかりーっ!」
「ぴ、ピンクモヒカン兄貴ー! このやろー、モヒカンにしてやるっ!」

 と、飛びかかるバーバーモヒカンだが、

「うっ!?」

 バーバーモヒカンの身体が、空中でピタリと止まる。
 見るとアスカの『サイコキネシス』がバーバーモヒカンを捕えている。

「モヒカン坊や、ごめんねぇ。これもガーディアンになるためなの〜……どっせい!!」
「ふぎゃー!」

 と、『鬼神力』で強化した掌底で、バーバーモヒカンを吹き飛ばす。
結果的に対ダークサイズを追い込んだアスカ。
超人ハッチャンとここで台詞。

『ふふふ……正義の心なぞ、このダークサイズの前では虫に等しいんだ……この……オガサワラチ、えっと、なんだっけ』
「ああんっ、もうハッチャン〜!『ふふふ……正義の心なぞ、このダークサイズの前では虫に等しいんだ……この……オガサワラチビヒョウタンヒゲナガゾウムシ共がぁ〜〜っ!!』だよぉ〜」
「いや長いよ!」
「あらハッチャン、困るわ。このあとベルの『説明しよう! オガサワラチビヒョウタンヒゲナガゾウムシとはヒゲナガゾウムシ科の甲虫類のグループの一つであり体長は1.7ミリから1.8ミリという小ささ! 特にオガサワラチビヒョウタンヒゲナガゾウムシは他の追随を許さない程の長い和名を持つと言われる非常に長い名前の昆虫の一つなのである!』って台詞が入るんだから」
「長いって! その虫なに!?」
「ググレカス♪」
「ええ〜……」
「あと鴉! 台詞言わなかったでしょぉ」
「ぎくっ」

 そんなぐだぐだしたやりとりを見ながら、無理して鴉をいじりに来てまた倒れたクマチャンを、ルーツが『ヒール』ついでに隅に運ぶ。
 その隙を突いた永谷と美羽と涼介もといブリッツフォーゲルが、

『とりゃあーっ!』

 と攻撃。
 アスカと超人ハッチャンと鴉は予定調和に吹っ飛ばされ、敗北後の捨て台詞。

『は、早く人間になりたぁ〜い……』

 と、超人ハッチャンの心情を表現した台詞を残し、ぱたりと倒れる。
 そこに、

キュンッ! チュドーン!!

『ぎゃー! なんでー!?』

 どこからかレールガンの光線が飛んで来て、三人は爆発に巻き込まれる。

「カレンよ、おぬしの言っていた定番とはこういうことだな? 怪人がやられた後の爆死という謎の演出は?」

 何故かアスカ達にレールガンを撃ちこんだのはジュレール。
 彼女はカレンに、ヒーローものにありがちな演出内容の確認をする。

「いや、戦闘中の視覚効果としての爆炎のつもりだったんだけど……ま、これもありかな」
「うむ。リハーサルとしてはちょうどよかったのう」
『私ら(俺ら)で練習すなっ!!』

 アスカ達は真っ黒になって、カレンとジュレールにつっこむ。

「次はワタシたちの番ね♪」

 と、シオンが超人ハッチャンを引っ張り出す。
 さすが超人ハッチャン。レールガンを食らってもまだ無傷である。
 司は、超人ハッチャンに説明する。

「私たちのテーマは『王道』やで。ダークサイズナンバー2として、そして館の中間地点3階ガーディアンとして、中ボス負け方はカッコよく、やね」
「なるほど! それいいね!」

 カッコいいならそれに越したことはない。
 超人ハッチャンも一瞬喜ぶが、4人そろってメイド服という謎の出で立ちを見て、

「えっと……王道、なんだよね……?」

と疑問符が付く。
 そんな超人ハッチャンにお構いなく、シオンを筆頭に超人ハッチャンを囲んでポーズを決め、

「我ら、『ハッチャン直属メイド隊(仮)』!」

 と、名乗ってみたりする。

「まずは登場時の名乗りからよ♪ さあツカサ」

 彼らには登場からやられるまでの流れがあるらしく、司は超人ハッチャンにメモを渡す。

「ハッチャンにはもう少し総帥としての深みが欲しいねぇ。凄味を利かせながら、これいくで、ハッチャン」
『ふっふっふ……よく此処まで辿り着いたと褒めてやろう……だがしかし、それも此処までだっ! お前達は此処から先へは決して進むことは出来ない……何故なら、此処で我らに倒されるからだっ!!』

 と、王道の台詞をカッコよく言うものの、

「長い!」

 超人ハッチャンはまたしても台詞の長さに辟易する。
 しかし、向日葵は、

「なるほど……確かにいい台詞だけど、ハッチャンに言われると何だかムカつく!」

 と、超人ハッチャンにいらつく。
 そこにさらにゲブーが立ち上がり、

「おのれぇーっ。このままおっぱい揉めずに帰ってたまるかよおーっ!」

 と、おあずけの連続に闘志が燃え上がる。
 ちょうど相手はメイド服を纏った4人組の女子(とゲブーは思いこんでいる)。
 ゲブーは、とりあえず一番色っぽいシオンに突進。
 ゲブーの手がシオンの胸に届かんとしたその時、彼女は素早く司を盾にする。

「ああっ、ちょ、ああっ!」
「狙いは違ったがまぁいい。俺様はおっぱいのサイズで差別なんかしねえっ!」

 と、少女化しているので一応ふくらみのある司の胸を、ゲブーが揉みしだく。
 そして計ったようにシオンが、おもちゃ袋からムチを取り出す。

「あーら♪ こんなところにこんな物が♪」
「シオン……自腹……?」

 と、アイリスが鞭を持つシオンをじっと見て言う。
 シオンは楽しそうに笑い、

「もちろん(ツカサの財布から無断で買った)に決まってるじゃない♪」

 と言って、もう一つムチを取り出して超人ハッチャンに渡す。
 それを早速しならせて、ゲブーに一発。

ぴしいっ

「あだっ! てめえ、卑怯なっ」
「おーほほほ♪ さあハッチャンもやるのよ♪」

 と、超人ハッチャンと二人して、ゲブーをしばき続ける。

ぴしっ、びしっ!

「あうっ! ひぃっ! こ、この程度で、俺様がおっぱいを手放すとでも……ひあっ!」
「ふふふふ……離すなよ〜?」

 ムチを受けながら司を揉み続けるゲブーに、調子に乗ってくるシオンと超人ハッチャン。
 ゲブーは意地でも司の胸を離さないどころか、どうも口元が緩んできているように見える。
 バーバーモヒカンがそれを見て、

「た、大変だ! このままじゃ、ピンクモヒカン兄貴が何かに目覚めちまうよぉ! だ、誰か助けてくれよぉ!」

 と、慌てて向日葵たちにすがる。
 シオンと超人ハッチャンは、ムチを振りながら向日葵たちをあおる。

『どうした、お前達の翳す正義とやらはその程度か?……そうか、では、今楽にしてやろう!』

 とどめとばかりにシオンと超人ハッチャンが振り上げた腕を、

がしっ!

 と止めたのは、美羽と咲耶。

「かわいいのは正義だけど!」
「えっちなのはいけないと思います!」

どかっ!

「なんで俺様までー!」

 と、シオンと超人ハッチャンはおろか、行為の内容的にゲブーも吹き飛ばす。
 差し入れついでに3階に遊びに来たソーマも、なぜかニコニコしながら吹っ飛ぶ。
 2人で4人を飛ばしたとあって、ダメージは大したことないのだが、シオンは満足したようで、

「じゃ、イブ、締めの台詞ね♪」
「ええ〜、は、恥ずかしいんですけどぉ〜……」
「だめよ。ちゃんと流れに乗らないと、スパイだってばれちゃうわよ♪」
「うぅ〜……」
『くっ、やるではないか……良いだろう、先に進むといい……だが、お前達はそこで思い知るだろう。真の恐怖というモノをっ!……ジーク・ダークサイズッッ!!』

 と、がんばって台詞を決めたところで、

キュンッ! チュドーン!

「いやー、台詞的に爆発した方が決まるかと思うての」
『人の台詞の時にやるなっ!!』

 イブたちに責められて、ジュレールはぽりぽりと頭をかく。
 ついで、真っ黒になってメイド服もやぶけたシオンとイブに、アイリスが静かに腹を立てる。

「破ったね……許さない……」
「あら♪ これは不可抗力だわ♪」
「そうですよぉ、ボクたち何も悪くない……」
「許さない……」

 と、アイリスの矛先は、理不尽にもシオンとイブに向かう。
 ふと見ると、フロアの中央では、服が着崩れ色っぽく座りこんだ司が、静かに息を荒げていた。
 頑丈な緑の怪人・超人ハッチャンは、ダメージはないのだがなぜか満足げにあおむけに倒れたまま。
 その傍にカレンが立ち、天を仰ぎ見る。

「どう、ハッチャン? 仲間って素敵だね」
「うん……今回はこんなに応募してくれて、本当にうれしいよ……ああ、どうしたんだろう。みんなの、笑顔が見える……」

 超人ハッチャンの脳裏には、ダークサイズの仲間たちの笑顔が走馬灯のように駆け巡る。
 実際はジュレールが、今回もひと儲けしようとDVD用に撮影した映像を、天井に映しているだけなのだが。
 その雰囲気を察して、また終夏がバイオリンを奏で始め、戦闘員が讃美歌のようなハーモニーを口ずさむ。

るーるるるるー……

 ジュレールがピンスポットを当て、羽毛を天井から降らせる。

「ふふ、天からのお迎えが来たようだ……さようならみんな。さようなら、ダークサイズ……」

 と、なぜかジュレールの演出にすっかりハマりこむ超人ハッチャン。
 ジュレールが超人ハッチャンの身体に紐をつけ、天井の滑車からゆっくり吊りあげ、彼の肉体は天井へと浮いていく。
 そしてフロアのちょうど真ん中くらいまで身体が浮遊したところで、超人ハッチャンが感動的な捨て台詞。

『ボクは……ボクは独りじゃないんだ……』

キュン! チュドーン!

「ぎゃー!」

 爆発する超人ハッチャンを見ながら、カレンは無意識のうちに敬礼しているのであった……

「だから何で締めが爆発なの!?」

 落っこちてきた超人ハッチャンがジュレールに文句を言う。

「雰囲気が出るであろう」
「一応ナンバー2なんだから、小物の怪人みたいにしないでよ! あとケガしたらどうすんのとか考えてよ!」
「超人なのだから死にはせんだろうと思うてな」
「あーもう! 実際平気だったけど! 何か、あーもう!」
「ハッチャン、なかなかよかったでしょ、ボクの台詞」
「つーかカレン、コレ捨て台詞じゃなくて死に際の台詞じゃん!」
「あるぇー」

 カレンとジュレールへのクレームに忙しい超人ハッチャンの肩を、今度は太郎がとんとんと叩く。

「なあ、ハッチャン……」
「え? ああ、あと君の台詞があったんだっけ」
「3階ガーディアンに立候補しておいて何なんだが……俺の台詞、麗しのネネ宛てなのを思い出してな」
「じゃあ5階に行ってくれーっ!!」

 と、締めくくりの忙しい超人ハッチャンであった。