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リアクション
そんな魔王たちとは露知らず、勇者たちはガチです。
「ようやくたどり着きましたね。長かったです」
合流した勇者たちは強化されたモンスターたちと戦いLVを上げながら魔王の城へと到着し、今その重い門扉を開けたところでした。
ツタがびっしりと表面を覆い、花が咲き乱れる魔王城は不気味です。
ギイイイイッッ! という音とともに、生暖かい風と獣たちのうなり声、そして身を刺すような瘴気があふれかえっています。
ごくり、と誰かがのどを鳴らしました。それくらいの緊張感。
「……」
十分に用心しながら城へと足を踏み入れます。
その途端。
向こうの角から待ち構えていたようにモンスターが襲い掛かってきます。
何しろ魔王の城に住むモンスター、これまでとはケタ違いの強敵のはず。慎重に戦ってみましょう。
モンスターが現れた!
ショボーンゼリー 1匹
キラキラマッシ〜ン 1匹
「……」
ちょっと沈黙する勇者たちに、ショボーンゼリーの白木 恭也(しらき・きょうや)が必死な思いで攻撃してきます。
外見はしょぼ〜んな感じのスライムっぽい敵ですが、何しろ魔王の城にすむザコ。油断はできません。
「勇者たちを倒さないと、僕は魔王の城に居場所すらなくなるんだ!」
「……」
勇者たちはあっさりと攻撃をかわしてしまいました。
「しょぼ〜ん」
「大丈夫だよ。魔王城を追い出されたら野宿すればいいじゃない」
光り輝くメタルボディを誇るキラキラマッシ〜ンなのは、シャルロット・ルレーブ(しゃるろっと・るれーぶ)です。特に深い考えはなく、派手に勇者たちと戦闘できればいいようです。
彼女は必殺剣を駆使して勇者たちに挑みます。
「えいや〜っっ、死んじゃえー!」
ズガガガガッッ!
勇者たちにダメージを与えます。
「いい感じ、次いくよ」
「そうは行きません。攻撃!」
「きゃあああっっ。あいたたたっっ!」
「しょぼ〜ん!」
ショボーンゼリーはしょぼ〜んと炎を吐きます。弱そうですが集団攻撃できます。
「回復」
「ああ……」
恭也は涙目になります。なんたってこんな境遇に生まれてしまったのか。給料も少なく報われない。できることといったら勇者の経験値になるだけです。
「勇者も魔王様も横暴ですー! 俺の生活ー!」
「その通り! 勇者死ねー!」
シャルロットも合わせて気合を入れてきます。
「……」
勇者たちもかつてないほど戦いにくそうです。
それでも、余裕で勝てるんですけどね。
モンスターを倒した! 経験値1500ポイント獲得、7VGを手に入れた。
「お金少なっ! 魔王の城のモンスターなのにどれだけ貧乏なんでしょう」
さらに。
ショボーンゼリーは起き上がり仲間になりたそうにしている。仲間にしますか。
はい
→いいえ
「え、どうして? かわいそうじゃない」
「だって、見るからにしょぼーんな感じで、負け組みオーラが漂ってるし……」
透乃が遠慮なく言います。
「さ、行きましょ」
……ショボーンゼリーは勝手についてきました。
……キラキラマッシ〜ンも勝手についてきました。
「僕はもう行くところがないんだ」
「ついでに連れてって」
「給料はちょっぴりでいいよ。ご飯さえ食べさせてくれれば」
「物騒な武器がほしいよ。よく斬れるやつ」
恭也とシャルロットは好き放題言っています。
「……」
しばらく無視していた勇者たちでしたが、やがて根負けしたように立ち止まります。
「……もういいわ。よろしくね」
恭也は願いかなって歓喜で飛び上がります。ピョンピョン弾んでいます。彼にとってはいい思い出になるでしょう。
こうして、今更ながら新しい仲間も加わりました。これでもう怖いものなしです。ずいずいと先に進みます。