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取り憑かれしモノを救え―調査の章―

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●資料館3

「ふう、こんなものですか……」
 資料を纏めながら、エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)は一息つく。
 あれからずっと、情報を纏めていた。暗がりと、情報量の多さに目頭を押さえる。
「ええ、ここにある資料の情報を統合したら、こんなものでしょう」
 魯粛子敬(ろしゅく・しけい)も同意したように纏めた紙を指でとんとんと叩く。
 纏めた資料はこうだった。

 赫玉石は、結界の範囲内に存在する平野のミスリルが取れる遺跡内にある。
 赤き石には、ゴーレムの核として使うことのできる【Emeth】の文字が刻まれている。
 石自体に、ゴーレムを生成することができる術式をこめてあるため石自体をどうにかしないと、結界の要をつぶしきることはできないだろう。


 翠玉石は、湖底の底に安置してある。
 湖底の水自体を変質させ、巨大なスライムを作り出す。翠玉石自体に込められた術式に、スライムは物理攻撃を受けると分裂して増えるというものがある。
 物理攻撃は厳禁だが、魔法の通り具合は不明。


 蒼玉石は、魔獣と相打った者の墓に飾られている。
 魂を具現化する術を使い、ゴーストとして現れるようだが、資料を纏める限り戦闘能力についての記述は皆無。
 もしゴーストが生前の討伐者そのものの力を奮えるとしたら一番の脅威かもしれない。


「これだけ纏めるのに大分時間がかかりましたね」
「開発者の危機意識が高かったお陰でしょう。これだけの情報を散らして散らして記述する、このしつこさには頭が下がります」
 エッツェルと魯粛子敬は頷きあう。
「でも、後の問題はこの人払いの結界ですね……」
 別件で記されている行を叩く。
 簡素な術式ながら、自分の認識をよそに向け、そこにはあたかも何もなかったように見せる術式だ。
 近寄ろうにも、いつの間にか意識がすりかえられていたり、そもそも近寄りたいとは思わなかったり。
「術式の形態を見つけきれなかったのが悔やまれます……」
 あれだけ、資料を探っても、人払いの結界の術式については全く分からなかった。
 どういう術式を組んでいるのかすらも分からず、ここにある資料ではただ、玉石の周辺には人払いの結界を張ろうと、それだけだった。
「一応、これだけでも持っていきましょう。人が集まっていればいいのですが」
 エッツェルがそういうと、皆は資料館を後にするのだった。