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第二章:保管区画救助班

「綾乃、いくらなんでも突出して突っ込み過ぎだ。綾乃の命がなくなっちゃ元も子もないだろ?」
 パワードスーツで保管区画の瓦礫を取り除きながら、ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)は先程から炎の中へと突撃し、救助対象を助け出した後、それをおぶって安全な場所まで運び出すというプロセスをハイペースで繰り返す志方 綾乃(しかた・あやの)へと声をかけた。
「そうなったとしても、別にさして問題はありませんよ。一番危険な場所には、一番軽い命が行くべきです」
 事も無げにそう答えると、再び炎の中へと突撃していく綾乃の背中を見ながら、ルースはどこか寂しげに呟いた。
「まだ若い子だってのに……やりきれないもんだな」
 寂しげにそう呟くと、やりきれない思いをぶつけるかのように、ルースは持ち上げた瓦礫を路肩へと乱暴に放り投げた。
「『化学火災』となると、ただ水をかければいいというものでもない。消火そのものよりも救助を優先せよ」
 炎が燃え盛る現場の中でクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)は的確に指示を飛ばしていた。冷静に指示を出すその姿は、凛々しさすら感じさせる。
「保管区画では化学薬品に引火しての火災だという。ならば、ただ水をかけても場合によっては逆に火勢が強まりかねない。保管区画部分の『火を消す』にはある程度の準備――いうなれば化学消防車的なものが必要であり、時間がかかる」
 周囲の仲間たちへと簡潔明瞭に説明する彼女は、既に伝令を飛ばして後続に化学火災への対応装備の準備を指示している。
「直接的に見えている炎だけでなく、バックドラフトやフラッシュオーバーにも注意し、一見して安全そうな扉も軽はずみには開けないのを徹底するんだ」
 そう懸念する彼女は既に相棒のハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)の能力で『嫌な予感』や『危険であるという胸騒ぎ』がする場所を予め割り出していた。彼女の指揮に抜かりはない。
 クレアは指示を飛ばす一方で、綾乃が助け出してきた作業員の中で、意識がはっきりしている者には幾つか質問をし、保管してあった薬品等を確認している。
 更に、それによる様々な危険性に具体的に対処するべく、薬品の燃焼で有毒ガスや可燃性ガスが発生する可能性や、あるとしたらそのガスと空気の比重はどうか――上に溜まるか下に溜まるかといったことなどを長所である博識さや薬学の知識を活かして考察し、対策を練っているのだから驚かされる。
「災害と悪の退治はこの『にゃんこヒーロー』にお任せアレ!」
 前線で瓦礫を退けながら、黒乃 音子(くろの・ねこ)は景気良く叫んだ。
 後方での指揮がクレアなら、先陣の陣頭指揮は彼女だ。この工場が軍事的施設であることを念頭におき、ある程度の耐衝撃構造になっていることを見抜いた彼女は、現場に駆け付けるのに使った{ICN0003122#Su−37KV ターミネーター}でシャッターを破壊して突入の為の経路を作り出し、更には自分も陣頭指揮として先頭に立ち、災害現場へと突入していったのだ。
 普段はボーリングのピンのような機動兵器を乗りこなすニャンルーが消火器に跨いで『機動兵器(消火器)にゃんネル』として音子の周囲を飛び、今もその消火能力を遺憾なく発揮している。
「戦友たちが生存者を捜索している間、我々が火の手を食い止めるぞ!」
 音子に負けじと、ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)も愛用のパワードスーツ――ベルリヒンゲン意気も高らかに突入していく。彼は仲間であるアンゲロ・ザルーガ(あんげろ・ざるーが)天津 麻衣(あまつ・まい)を率い、パワードスーツ隊『ベルリヒンゲン』として果敢に消火活動と救助活動にあたっていた。
 彼等『ベルリヒンゲン』の目的は、火災の勢いを弱まらせて、戦友たちによる生存者の捜索・救出をサポートする事だ。生身の身体や消防服とは異なり、パワードスーツであれば、化学物質への引火が原因の高熱の炎や有毒ガスにもある程度耐えられると考えたケーニッヒは災害発生の一報を受けるや否や、即座に駆けつけたのだ。
 化学物質が由来の火災は、水では消火できないばかりか、時には水と化学物質とが反応することにより、却って火勢を強めてしまう可能性もあることを踏まえ、消火活動には必ず化学中和剤を使用してあたっていた。
 しかも、化学中和剤が不足した時に備え、可能な個所には砂をかけて代用するなど、その対策はまさに万全だ。
「火薬満載の区画だし、救助に掛けられる時間が多いとは思えないな。出来るだけ短時間で救助を終わらせよう」
 崩れてくる天井や倒れてくる柱を銃撃で遠慮なく破壊しながら、閃崎 静麻(せんざき・しずま)は呟いた。その左隣と右隣では、ともに彼の仲間であるレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)閃崎 魅音(せんざき・みおん)がともに冷気系の術で火勢を抑え込んでいた。
 そんな三人のすぐ近くで災害現場を見つめながら、神曲 プルガトーリオ(しんきょく・ぷるがとーりお)は恍惚の表情で呟いた。
「燃え盛る炎に崩れ落ちる建物。いいじゃないいいじゃない、素敵な光景よ」
 だが、そこまで呟くと彼女は冷静になって再び呟く。
「とまぁ、個人の欲求はこの辺りにして救助作業と行きましょうか」
 その言葉と共に彼女は炎の術を発動する。炎の術に適性がある一方、氷術とは相性の悪い彼女は、自分は消火には回れないと判断し、その分は得意とする炎の術によりしっかりと炎を制御して道を開ける事で力を示すのだ。
 彼女の術は本物のようで、彼女の意思に応じて、目の前の炎が一人でに動いたように道を開けていく。
「建物全ての炎を制御できなくても目の前の炎ぐらいわね」
 保管区画の面々が奮戦する中、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)の四名も駆けつける。
「誰しも『誰かの大切な人』なんだから一人の死亡者も出さずに全員救助が目標。なので他校生だけれど救助活動を手伝わせてもらうよ」
 紳士的な所作で挨拶をすると、早速エースは術式を展開してバリアを張っていく。
「リリアを連れてくることは反対だったのだがね……過酷な火災現場にレデイを連れてくるのは如何なものか。前に出て怪我をしない様にね」
 そう呟くメシエに、バリアを張りながらエースが応える。
「いろんな事経験するのは大事だろ? 人助けなんだし」
 当のリリアはエースの補佐をするべくバリアの術式を展開しつつ、消火剤を撒きながら、苦笑とともに言う。
「心配してくれるのは解るんだけれど。私だってそろそろ少しは役にたてるのよ?」
 それに対し、苦笑して一度頷くとメシエも氷の術式を展開し、消火活動に協力する。
「突入前にルカルカさん達からテロリストの最新リストを貰っておきました。放校者や結城来里人、アルベリッヒが居たらすぐ気付くようにしっかり顔と体格も覚えてきましたよ」
 メシエと同じく氷の術式を展開して消火活動に協力しながら、エオリアは消火や救助にあたっている面々に告げる。
「サラマンディア! 前進だ!」
 迫り来る炎への恐怖とと戦い、土御門 雲雀(つちみかど・ひばり)は災害へと果敢に立ち向かっていく。
「おー派手に燃えてらあなぁ! ま、熱いのは任しとけって」
 雲雀からの声に威勢良く答えるのは彼女の相棒――サラマンディア・ヴォルテール(さらまんでぃあ・う゛ぉるてーる)
「薬品等にも引火しているようですし急ぎませんと……! サポート頼んだ、サラマンディア!」
 打てば響くようにサラマンディアは自らの能力で炎を操作しにかかる。
「気分悪ぃ炎だが……道ができねえと始まらねえからな」
 化学薬品の炎の臭いに顔をしかめながら、サラマンディアは炎の術を用いて火事場の炎を通路の両脇に割いて道を作っていく。更には延焼しないように、同じく炎の術で火事場の炎を操作し、火元に壁を作ってみせる。
「自分も消火作業にかかるであります……きゃっ!」
 サラマンディアに続いて雲雀自身も氷の術を用いて消火活動にかかる。しかし、氷の術で炎を封じ込めようとした矢先、その炎が別の化学物質に引火したのか、盛大に爆発する。
 思わず驚きの声を上げて目を閉じ、咄嗟に両腕で顔を庇う雲雀。しかし、いつまで立っても炎は勿論、熱風や爆風は一向に訪れない。
 雲雀が恐る恐る目を開けると、彼女の前にはバリアを展開したエースが彼女の盾となるように立っていた。エースは自らの能力により、雲雀は勿論、盾として立ちはだかった自分自身すらも無傷で守り抜いていたのだ。
「もう大丈夫ですよ、お嬢さん」
 雲雀からの視線に気付いて振り返り、エースは彼女へと歩み寄ると、懐から出した薔薇を一輪渡し、優しげな声でささやく。雲雀はと言うと、反射的に受け取った薔薇を、ぽかんとした様子でしばらくの間、まじまじと見つめていたが、ややあって我に返ると、取りあえず薔薇を軍服の胸ポケットに差すと、姿勢を正して敬礼し、エースに感謝の意を表する。
「か、感謝するであります!」
 その様子を傍目に見ていたサラマンディアにメシエがふと声をかけた。
「うちの契約者がそちらの連れに粗相をしたようだ」
 するとサラマンディアは豪快に笑う。
「気にするな。助けてもらって感謝するぜ。なんなら、これが終わったら一杯奢らせてもらうが?」
 その返答にメシエもふっと笑みを浮かべると、更に声をかける。
「感謝する。ならば良い場所を紹介しよう」
 短い会話の中で二人は目配せすると、無言の連携で術を発動する。
 サラマンディアの炎の術が火事場の炎を操り、辺り一面に広がる炎を一カ所に纏め上げていく。そして、周囲の炎が全て集まった所へ狙いすましたようにメシエの氷の術が直撃し、二人の眼前に広がっていた火の海は瞬く間に消え去った。
 まさに見事な連携である。
 火の海が一時的に沈静化したチャンスを逃さず、二人の間を一陣の風のごとし人影が駆け抜けていく。まだ遠くの方は火の海が広がっているにも関わらず、その人影は速度を一向に落とすことなく、むしろ更に速度を上げて突貫していった。
「元気がいいのがいるみてぇだな。結構なこった!」
 駆け抜けて行った人影を見て、それを称賛するようにサラマンディアが笑うと、メシエも微笑みを浮かべる。
「ああ。そうだな」
 一方、駆け抜けて行った人影――紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は行く手を阻む障害物を破壊しながら、疾風の如く速度で駆け抜けた先にて一人で気絶しているのを発見した作業員を抱え上げ、来た道を先刻と同じく疾風の如く速度で駆け戻っていた。
「やはり唯斗様は最も危険な所に赴かれるのですね」
 落ち着き払った、しかしそれでいて、どこか物哀しげな色を帯びた声で問いかけるのは、唯斗が身体に纏う魔鎧――プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)だ。
「忍者は最も危険な所に行くものだ。取り残されている人がいないようにしないとな」
 プラチナムの問いかけにも、唯斗はただ淡々と答える。その声音に、やはりどこか物哀しげな声で吐息を漏らすプラチナム。しかし、彼女の憂いを払拭するかのように、唯斗は激しい気迫に満ちた声を張り上げた。
「助けを求める者がいるのなら、地獄の底だろうと手を伸ばす! そして救うぜ、全てを! 全員救出だ!」
 その声を聞き、心の中だけで微笑むと、プラチナムは心なしか嬉しそうな声で、やはり心の中だけに呟いた。
(唯斗様……)
 疾風の如く速度で駆け抜ける唯斗は、気絶した作業員を抱えて戻ってくる中で無限 大吾(むげん・だいご)、そして相棒のセイル・ウィルテンバーグ(せいる・うぃるてんばーぐ)とすれ違う。
「しかし凄い熱気だ……これは急がないと危険だ!」
 持ち味である耐久力に任せて突き進む大吾は同行するセイルに向けて言う。
「セイル、なんとしても、ここの人達を助け出すんだ!」
 それに対しセイルも頷きと声を返す。
「荒事専門の私たちが救助に行ってくれば、後は結和と三号が何とかしてくれますしね」
 セイルの言葉で気合いを入れ直し、大吾も言葉を返す。
「ああ! 結和さんに救助者を引き渡す為にも、俺たちが頑張らないとな!」
 そのまま突き進んだ二人は、やがて数ある倉庫の中の一つと思しき部屋で、化学薬品の煙に巻かれて倒れたのであろう作業員二人を発見した。
「セイル、いけるか?」
「こう見えて、力には自信がありますから。絶対に、助け出して見せますよ!」
 ほんの数秒で意志を確認し合うと、二人は各々一人ずつ背負って来た道を戻って行った。
 二人が戻ってくると、スリーマンセルを組んだパワードスーツの一団が薬品火災専用の消火剤を散布しながら、道を作るように進軍しているのが目に入る。
「トマス隊、前へ!」
 先頭に立って号令をかけるのはトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)。そして、彼に続くのがテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)の二人だ。
「救助の連中が通れる道、確保だ、行くぜ!」
 獣ゆえに本能的に炎は怖いが、パワードスーツ――フィアーカー・バルを着こんでいるという事実を自分に言い聞かせ、度胸でなんとか克服しながらテノリーオは周囲に散らばる瓦礫を力任せに片付けていく。
「恐くない筈ない。けど、誰かがやらなきゃね」
 こちらも自分に言い聞かせるように呟きながら、ミカエラも憶すことなく火災に立ち向かう。内部との無線通信連絡が困難であることを予想した彼女は難燃性の有線ケーブルを背負って引き、途中途中のポイントに小型の装置――携帯電話ならば基地局にあたる物を設置していくことで、後続の救助班や消火班の連絡の便を図りつつ前進していく。
「アウレウスはこのまま俺と来てくれ。キースはサポートを頼む」
「承知仕りましてございます! かなりの熱量と炎……。だが、主を守るための鎧として、必ずお守りする! 主をお助けするのはキースだけではないと証明してみせよう! 主よ、我が力存分にお使い下さい!」
 誇り高く宣言するような声で応えるアウレウス。その声は保管区画の通路に朗々と響き渡る。
 トマス隊がパワードスーツの装甲とパワーを活かして突き進む横で、グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)も仲間である魔鎧のアウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)を纏い、パワードスーツに決して劣らぬその装甲とパワーで突き進む。そして、その二人に同行するようにレリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)のコンビも続いた。
「ハイラルは治療技術を持っているんですから、ここで負傷者の手当てのため待機して下さい。負傷者を見つけたら搬送します」
「俺居残りかよ!まあアイツのいう事は一理あんだけどよ、絶対俺が前負傷したせいでトラウマ刺激されてんな……」
 レリウスからの指令にハイラルが小声でぼやくように呟いた。
「まあグラキエスが一緒なら無茶しねえと思うけど……ってしまったあああ! グラキエスも無茶な奴だった! ああもう大丈夫だろうな。犯人がまだ中にいる可能性だってあるし!」
 ぼやいたと思ったら、今度はグラキエスも無茶であることに気付いて声を上げるハイラル。そして、彼は今度は苦笑すると、グラキエスのもう一人の仲間であるロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)に水を向けた。
「ロア……お互い無茶なパートナー持つと苦労するよな……。とりあえず応急手当と搬送の準備整えとくわ。ロアはナビ頼むぜ」
 その声に対し、ロアはすかさず一度頷くと、すぐに口を開いて応える。
「私はここで内部の地図を見ながらナビをします。エンド、君は氷の力が強い分、火や熱に弱いんですから、無茶しないで下さい。アルゲンテウス、エンドを守って下さいね」
「無論だ!」
 ロアの言葉にアルゲンテウスが頼もしげに答えた時だった。すぐ横を進軍していたトマス隊のテノーリオがロアの姿を見咎める。
「おい! どうして鏖殺寺院の奴がここにいる!」
 テノーリオの疑念も尤もだ。なにせ、ロアが纏っているのは鏖殺寺院の制服なのだから。それに対し、すかさず反応したのはグラキエスだった。
「違うんだ! キースは自分の出自に関する記憶が無くて……だから、どうして鏖殺寺院の姿をしているのか、自分でもわからないんだ。だが、これだけは信じてくれ、キースは鏖殺寺院の連中のようなことをする奴じゃないし、今ここに来ているのだって善意からなんだ!」
 必死に早口でまくし立てるグラキエス。アルゲンテウスにレリウス、そしてハイラルも真摯な目でそれに追従する。
「左様。この者が鏖殺寺院のような輩と同類でないことは、我々が保障致そう」
「そうです。彼が鏖殺寺院の手先であることなど、断じてありません!」
「何度も一緒に戦ってる俺から言わせてもらえば、よ。こいつは信用できる。それは保障するぜ」
 しばらく無言の時間が続いた後、その沈黙を破ったのは横で見ていたトマスだった。
「今は一人でも多くの人の協力が欲しい! その人が本当に鏖殺寺院かどうかなんて今は後回しだ。今の俺たちの任務は人命救助なんだから!」
 その言葉を合図にトマス隊とグラキエスたちは一斉に頷き合う。こうして彼等の意志が一つになった瞬間、青年の声が保管区画の通路に轟いた。
「三尾が宿りて絶零が生ず!」
 その叫び声とともに壁の一部が切り飛ばされる。切り飛ばされた上に凍りついた壁の残骸を踏み越えながら姿を現したのは樹月 刀真(きづき・とうま)とそのパートナー漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)ベスティア・ヴィルトコーゲル(べすてぃあ・びるとこーげる)レオパルド・クマ(れおぱるど・くま)のコンビ。そして、幾人もの作業員たちだ。
「良かった。ひとまず合流できたみたいだ」
 そう言い終えて刀真は安堵の息を漏らすと、入れ替わりにベスティアが口を開く。
「教導団第2師団・装備開発実験隊所属、ベスティア・ヴィルトコーゲルであります!」
 名乗りの後にトマスたちへと敬礼すると、ベスティアは再び口を開いた。
「同隊を代表して新型爆弾開発施設の視察・見学コースに参加していてこの事件に巻き込まれました。その後、非戦闘員たちを救護しつつ状況把握に努めておりました所、我々と同様にここを訪問中に事件へと巻き込まれた樹月と漆髪と合流、両名が既に救護していた非戦闘員たちも加え、火炎への対策を講じつつ脱出経路を捜索し、火災により損耗した壁面を樹月の能力により破壊して進行。この場にて合流に成功致しました次第です」
 この工場に来る際、ベスティアはイコンである{ICN0004193#EZ−401F2 ファフニール}を持ってきていたのだが、工場内部に入るにあたって、当然だがそれを工場の外に置いてきていた。しかしながら、このような現場に際しても、イコンなしでここまで活動を成し遂げたことからも彼女が有する様々な技量の高さが伺える。
 淀みなく報告し終えると、再び刀真が口を開き、ベスティアの言葉を引き継いだ。
「彼女が指揮を執ってくれたおかげで誰一人欠けることなく合流できました。それと、作業区画にいる叶白竜とも生存確認を兼ねて連絡が取れました。なお、彼からの報告によれば今回の実行犯である人物に加え、要注意人物とされる人物の姿も確認されたそうです」 報告を終えると、やおら刀真はよろめいた。すかさずそれを彼のパートナーである月夜が支える。
「刀真!? 大丈夫っ!? もぅ、無茶し過ぎるんだからっ!」
 抱きしめるようにして支える刀真を見つめながら、思わず涙ぐむ月夜に、レオパルドが声をかけた。
「わしらが無事に合流できとんも、刀真殿が危険を顧みず、身命を賭して道を切り開いてくれたおかげじゃけん。感謝してもしきれんもんじゃのう」