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優しい誘拐犯達と寂しい女の子

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第三章 もう一人の誘拐犯?


「さて、捜索はこれからだぜ。ん?」
 湯浅 忍(ゆあさ・しのぶ)はパートナーのロビーナ・ディーレイ(ろびーな・でぃーれい)と共に聞き込んで写真の持ち主の情報と目撃情報手に入れた。後はその情報を元に宿泊施設を捜し回るだけだ。

 突然、捜索の足が止まった。

「……あれは、絵音ちゃんだよな。誘拐されたんじゃないのか」
 大きなショッピングセンターからツインテールの美女と手を繋いだ絵音が現れたのだ。
 どう見ても絵音の表情は楽しそうで誘拐されているという感じではない。
「何かあるな」
 忍はちびっこになってこっそり尾行することにした。

「……ここか。ずいぶんな宿だな」
 忍が辿り着いたのは、裏通りの安宿だった。少し足を止めるもすぐに宿に入って行った。

 中に入り、不審な顔をする宿の主人をお姉ちゃんとはぐれた子供のふりをしてやり過ごし、ついでに部屋の場所情報も手に入れる。

「やっぱり、ちびっこになって正解だったな」
 ここまで順調に来たことを感謝しながら目的の部屋のドアの前に立ち、ノックをする。
 しばらくして、ドアがゆっくりと開いた。

「……ど、どなたですか」
 イリアルが少し怯えた様子で現れた。

「あ、忍ちゃん」
「湯浅さん」

 忍と同じように絵音を捜していた陽一とノーンが廊下の忍を見かけ声をかけた。

「どうして二人がここに? ていうか誘拐じゃないのか? ツインテールの美女と外を歩いているのを見たぞ」
 予想外の展開に驚きを見せずには入られない。とりあえず中に入ることにした。

「セレン、目撃情報が出てきたみたいだけど」

「ほら、ぼーっとしてないで袋から出してよ。それぐらいは手伝いなさい。……協力してくれるよね。ちなみにあたしは犯人じゃないからね」

 セレンフィリティはコンビニや様々な店で得た大量の買い物袋を三人組に渡して買い出しした物をテーブルに出すように指示をしながら聞いた忍の言葉に急いで否定した。一緒に手伝っていたセレアナの言葉にも負けずに。

「あぁ、とりあえず事情を聞かせてくれ」
 協力の有無は事情を聞いてからだ。

 そして、三人組の悲しい話を聞いた後、

「そりゃ、協力しない訳にはいかないぜ」
 力強く協力を申し出た。

 それから、しばらくして忘れ物を発見したウォーレンが戻って来た。
「やっと、見つかったぜ」
 イリアは買って来てくれた材料を念入りに確認していた。
 みとは帰って来た絵音に洋が電話で伝えた内容を教えた。
「……洋様が今日一日だけ時間を貰えるよう頼んで先生から許可が出ましたから、たくさん遊んでから帰りましょう」
 と絵音を少しだけ安心させた。相変わらず状況は変わってはいないが。
 安宿はとても賑やかだが、外もまた賑やかだった。