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【黒髭海賊団】名も無き島の探索を

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【黒髭海賊団】名も無き島の探索を

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●第1章 無人島を探索しよう

 地図を元に、中継地に出来そうだという無人島へと向かった黒髭海賊団と、協力を申し出た学生たちは、件の島の近くへと、船を進めていた。
 船を進めるうちに、島影が見えてくる。
 見渡す限り、島の付近には他の船影は見えないため、そのまま近付いて行く。
「探索しつつ地図を作ってみるのはどうだろうか」
 その様子を窓越しに見ている泉 美緒(いずみ・みお)如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が、声を掛けた。
「地図、ですか?」
「何処にどういった生態系があって、水等の補給が出来て等々。この島を使用するにあたって情報を集めておけば、今後もしこの島に中継地だけじゃなくベースもつくるのであれば役立つはずだよ」
 軽く首を傾げた美緒に、正悟が説明を続ける。
「確かに、内海における島の場所は、ラズィーヤ様から頂いたこの地図に載っていますが、この島の地図そのものは頂いていませんから、詳細なことは分かりませんね」
 ラナ・リゼット(らな・りぜっと)が、納得したように頷く。
「そうですわね。探索してくださる方たちに、お願いしてみましょう」
 地図作成について、探索メンバーへとその旨を告げ、各々が集めてきた情報は、美緒と、彼女の中の“黒髭”の力も借りて、纏め上げると説明しておく。
 そうしている間にも島に、船は近付いていて、浜辺の沖まで接岸することが出来た。
「それでは、皆様、探索など、よろしくお願いしますわ」
 地図を作成するために、用紙や筆記具を皆へと渡した後、自分自身も探索の準備を整えて、美緒が皆へと声を掛ける。
「食材、大事! 見つけてきてみせるよ!」
 サバイバルナイフを船倉から借りたレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は、パートナーと共に、島へと下りていく。
「百歩譲って、島の探索に力を貸しましょう。ですが、海賊行為を行えば、私掠だろうと何だろうと捕縛します」
 兵士の本分という観点から海賊は討伐する対象だと認識しているエッツィオ・ドラクロア(えっつぃお・どらくろあ)はそう告げて、黒髭海賊団の観察も兼ねて、探索に同行することにした。
 続くように、他の皆も、島の探索へと出かけていった。



「お水をさがしてくるですよ〜」
 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、水源を探す。
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)と、そのパートナーたちも水源を探すため、島の中ほどに広がるジャングルまでは、共に進んでいった。

 浜辺を歩き、ジャングルの手前までやって来たヴァーナーは、カモの名を持つ、空飛ぶ箒エンテに跨り、ジャングルに生える木々の上を飛び始める。
 木々が切れているところに、湖や川があるのではないかと考えたのだ。
 辺りを見回しながら、飛んでいると、ジャングルの合間に、僅かに木々の生えていないところを見つけた。
 周囲の様子に気を配りながら、飛んでいくと、そこには小さな池がある。
 底から水が湧き出て、端の方から小川となって流れて出て行っているけれど、若干、濁っているように見える。
「飲み水やお料理には、使えそうにないですね〜」
 しょんぼりと肩を落とした後、ヴァーナーは軽く首を横に振って気を取り直すと、再び、空を駆け出した。



 一方、グラキエスは3人のパートナーたちと共に、ジャングルの中を歩いて、水源と、食糧になりそうなものを捜していた。
「このジャングルは結構いいものが見付かりそうだ」
 呟きながら、満足に食べることも難しかった放浪生活、必死に食糧を探し狩ったサバイバル生活のときのことをグラキエスは思い出す。
 それぞれの経験があったからこそ、食糧と水の確保の重要さは身に染みているのだ。
「ここを拠点とするならば、涼める設備も必要だな。暑さに弱いグラキエスも、快適に過ごせるだろう。うむ、それもいいな……」
 パートナーが快適に過ごすための設備をどうしたものかと考えながら、皆の後を付いていくベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)の思考は、完全に飛んでいた。
「エンド見て下さい」
 その傍らで、ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)がグラキエスへと声を掛ける。
「あの食虫植物、実がとても美味しいそうです。下の表出している根を踏むと葉が閉じて捕まるようですが……」
 少し高い位置に実っている物は美味しそうだが、採るために近付けば、表出ている根を踏んでしまいかねない。
「む? 美味そうな実が……葉が閉じた!」
「……あんな風に」
 注意を喚起しようとしていたロアの目の前で、ベルテハイトが飛ばしていた意識を戻し、先に見えた美味しそうな実へと手を伸ばすと、開いていた葉が途端に閉じて、捕まってしまう。
「駄目ですねえ、人の話は聞かないと。まあ一度齧られたら懲りるでしょう」
「ちょっ! こら……! 助けないか……!」
 呆れながら、ロアはベルテハイトから視線を外し、グラキエスへと向き直る。
「私たちは気を付けて取りましょうね」
「そうだな」
 グラキエスもやや呆れながら、頷いた。
「むっ、見ろグラキエス。あの大蛇、覚えているか?」
 根を踏まないよう気を付けながら実を採っていると、ゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)が声を上げる。
 彼の指差す先には、木に身を絡めた大蛇が居た。
「おお、蜘蛛までいるぞ」
 更に先には木々の間に巣を張っている大蜘蛛も居る。
 グラキエスと2人、放浪生活をしていた頃も大蛇や蜘蛛は貴重な食糧として、狩ったものだ。
「丁度いい、久々にあの美味を味わうとしよう」
 ゴルガイスはそう告げると、トゥーハンディッドソードを手に、大蛇を素早く仕留める。続けて、切っ先を蜘蛛の巣に向けて、その巣の主を串刺しにした。
 どちらも派手な色をしていて毒を持っているようだが、毒嚢を取り除いてしまえば問題はない。
「ちょっと腹も減ったし、喰ってくか」
 手早くゴルガイスがそれを取り除いている間に、グラキエスが枯れ枝を寄せ集めて熾した小さな焚き火で、大蛇と大蜘蛛を炙る。
「どうだ?」
「いや……私は遠慮しておく」
「美味しいんだがな?」
 勧めてみるもベルテハイトが首を横に振れば、彼は大蛇に齧り付いた。
「エンド、栄養はバランスが大切です。先ほどの果実も食べてくださいね」
 そう告げながら、ロアが果実を差し出した。
「ああ」
 受け取り、大蛇と交互に食べる姿を見遣りつつ、ゴルガイスは大蜘蛛を、ロアは果実を齧った。
「グラキエス……こんな下手物を食べていたのか。帰ったら私が贔屓にしている店に連れて行こう……」
 ベルテハイトはその様子を見ながら、呟くのであった。