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第4章 メドゥーサの石化

「ここだ、ここからとてつもない魔力を感じる」
 魔力を感じるという、禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)に連れられた先は、本棚すらなく物静かな場所だった。
 だが、そこには石像がいくつか並んでいた。
 石像は明らかについ先ほどまで図書館で見かけた者達ばかりだった。ユーリや石化の書の姿もそこにあった。
「なんだよこれ……」
 思わず、佐野 和輝(さの・かずき)は目を疑っていた。
 ゆっくりと石像を見渡す中で一つだけ生身の女性の姿があった。
「司書長か?」
「まちなさい、その人は取り憑かれているのです」
 突然、聖母のような落ち着いた声が飛んできた。
 思わず和輝は近づく足を止め、振り向いた。
 ヒルデガルト・フォンビンゲン(ひるでがるど・ふぉんびんげん)月美 あゆみ(つきみ・あゆみ)がそこに立っていた。
「きゃーはっはっは! そんな奴に見抜かれるなんて私も焼きがまわったかしら」
 突然、司書長は奇怪な声をあげた。
 その声はすでに人間の者とは違う。動物の鳴き声のように甲高い声だった。
「司書長を返しなさい! 銀がパトロールのレンズマンよ!」
 あゆみはエンブレムとレンズを見せながら言った。
 それを見たメドゥーサは突然、髪の毛をあゆみの元へとうねうねと伸ばした。
「あゆみさん、左へ!」
 ヒルデガルドの言われたとおりにあゆみは左へステップする。そこに髪の毛はなぜかこれなかった。
「にゃは、アニス分かった!」
「何が?」
 アニス・パラス(あにす・ぱらす)がひらめいたように、ジャンプする。
 和輝はメドゥーサの目を見ないようにしながら、アニスを見た。
「メドゥーサの髪の毛は半径5メートルまでしか届かないよ!」
 実際、メドゥーサは髪の毛を伸ばしては来なかった。
「メドゥーサって、鏡で自分の姿を見て自分が席かしたって話なんだっけ?
「鏡ですか……」
 あゆみも手を叩きながら言った。
 ヒルデガルドはそれを聞くと、目をつむり幻視に集中していた。
「何をこおーそこそとしているのかしらあ?」
「来るよ、和樹」
 アニスが間一髪で和輝に警告する。
 その足音などから、メドゥーサは体を左右にゆっくりと動かしながら近づいているのが和輝には分かった。
「……」
 和輝は、目を閉じたまま自分がどう動くべきなのか考えた。
 そして、メドゥーサの背後と思われる方向へと、遠回りに走った!
「あら、やられに来てくれるのかしら?」
 メドゥーサは笑いながら髪を、走る和輝の元へとのばし始めた。
 だが、その髪はファイアストームにより、途中で燃えてしまう。
 それを放ったのは、ダンタリオンの書だった。
「こざかしいまねを……」
 メドゥーサは、ダンタリオンの書へ向き。石化させようとする。
「あぶないっ! きゅーべーばりあ〜!」
「訳がわから――」
 きゅうべんのぬいぐるみをアニスは、ダンタリオンの書とメドゥーサの間に投げることで、きゅうべいのぬいぐるみが代わりに石化して地面に落ちた。
「ふむ、礼を言うぞアニス」
「あゆみさん、鏡となりそうな古代食器がここから四〇度の方向にある引き出しの中にあります!」
 ダンタリオンの書が礼を言っていると、ヒルデガルドが突然声を上げた。
「わかった!」
 あゆみはすぐ右手に見えた引き出しへと駈けだした。
「させないわよ――っ!?」
「にゃはっ。敵さんこちら〜」
 メドゥーサは慌てて髪の毛を伸ばすも、その髪の毛はアニスの歴戦の魔術によって遮られる。
 その間に何とか歩みは、綺麗に反射する皿を見つけ出した。
「へびさん! かくごーっ!」
 あゆみの声に思わず、メドゥーサはそちらを向いてしまった。
「ぐうううううっ!? おのれえええええ……」
 メドゥーサの足下が白く石化していく。だが、体までは至っていなかった。
「覚悟!」
「グッアアアアアアアアア!」
 メドゥーサの足下、頭を同時に銃弾が打ち抜いた。
 司書長の体が元通りになっていく。
 打ち抜いたのはメドゥーサの背後に回り、曙光銃エルドリッジを二丁構えていた和輝だった。
「ユルサナイユルサナイユルサナイ」
「早く司書長を、たたき起こせ」
 地下のどこからか、メドゥーサの声が響き渡った。
 和輝は慌てて、あゆみ達に言い放った。

「はっ! 私は何を」
「そんなことは良いから、早く魔導書を元通り封印して〜!」
 呆けている司書長をあゆみは腕を上下に振りながら急かした。

 その後、無事に魔導書は封印され、再び厳重に保管されることとなった。
 図書館で暴れていた本の登場キャラクター達も、魔導書の魔力が無くなることで自然と消えていった。
 ただし、図書館への壮大な傷跡を残したまま。
 破損、消失した本、そして壊れた図書館はすべて、司書長が修復することとなった。
 こうして、オピス図書館での図書館大戦は無事に幕を閉じた。

担当マスターより

▼担当マスター

朱坂理樹

▼マスターコメント

 初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。朱坂理樹です。
 
 今回のシナリオで、アクションを全体的に拝見させていただきますと、アキレウスと闘われるアクションが多く
 逆にメドゥーサと闘ってくれる人が少ないのかなあ、と内心ひやひやしながら判定させていただきました。
 皆様のアクションがどれもしっかりしたもの、ユニークなものまであり判定する中、とても楽しませていただきました。
 以上の事もあり無事に魔導書は無事に封印され、図書館は元通りになりました。
 
 この度は、当シナリオへのご参加ありがとうございました!