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空が見たい!

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空が見たい!

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「そっちは見つかりました?」
「まだ見当たりません」

 テーブルにどさりと資料を置いて、ニケとリースは資料探しを続けていた。
 エースが部屋に戻る前に書庫によって、無理せず休んでくれといっていたが、とても戦いに参加できるとは思えないリースにはこういった形でしかみんなをサポートできないとどこかで思っていた。
 だからこそ、皆が休んでいる間に少しでも情報を集められたらと資料探しを続けていたのだ。
 同じ考えのニケやティーたちとしばらく作業していたのだが、疲れたのだろう、ティーとイコナが本棚に寄りかかって眠っていた。
 二人が風邪を引かないようにと持ってきたブランケットをかけてあげ、リースはニケとともに再び作業を再開したのだった。


 ――ドオオオオォォォンンン、と重量のある大きなものが落ちる音と、地響き。そして低い唸り声でナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)は目を覚ました。
 急いで部屋を出れば、マーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)セリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)が待っていた。

「ナディム遅い! 緊張感なさすぎ! もうみんな広場に集まってるよ!」

 ぷりぷりと怒るマーガレットの隣で、セリーナがマーガレットが用意したのだろう椅子に座って待っていた。
 半人半魚のセリーナは下半身が魚のそれになっているため、本来ならば車椅子がないと移動できない。しかし地下に落ちた際に車椅子が壊れてしまったのだった。
 車椅子を直すには部品が足りなかったために、セリーナが移動する際はナディムが抱えて運んでいた。

「姫さん、まさか……」
「私も……行くよ!」

 強化光翼を使って自ら移動してでも行くと言い張るセリーナに、マーガレットは言っても聞かないのよと肩をすくませる。
 疲労が激しい強化光翼を使ってまでも他人のために頑張ろうとする彼女を見て、ナディムは「姫さんっ!」っとがしりと勢いよくセリーナの腕を掴んだ。

 「俺がぜっっっっったいに姫さんや皆を外に連れて行くからなッ!」

 盛り上がる二人を見て、変なスイッチ入っちゃったよとマーガレットは呆れながら歩き出した。


「それじゃあ、行こうか」

 エースとメシエを先頭にドラゴン討伐チームが村を出発しようとしていた。
 そんな彼らを見ながらいつもの場所で優雅にお茶を飲んでいるエルサーラ。
 普段の変わらないその様子は、ドラゴンに襲われそうな村にいるとはとても思えない落ち着きっぷりだ。

「エルサーラさん、いつも通りですね……」
「ま、今さら焦ったところでどうしようもないからな」
「でも……なんだか彼女を見てたら、ドラゴンなんか関係なしにみんないつも通り帰ってくるような、そんな気がします」

 討伐チームを見送りに来た御宮と海月。
 ずっと不安そうにしていた海月だったが、普段の態度を崩さないエルサーラを見て少し落ち着いたようだった。
 ついでに頭をなでてやれば、私たちも頑張って村を守りましょうねとやる気に満ちた返事が返ってきて御宮も笑顔で返事を返した。


「エル、余裕たっぷりって感じだね」

 お茶のおかわりを頼まれてお茶をカップに注ぎながらペシェが答える。

「違うわよペシェ。焦ったってどうしようもないこういうときこそ落ち着かなければいけないと思わない?」

 お茶の香りを堪能してからカップにそっと口を付ける。
 一口、二口。ゆっくりと味わって喉を潤し、ほぅっと温まった吐息をはいてエルサーラは続ける。

「それにドラゴン退治なんて、持ってこいのイベントじゃない。エースたちならやれると思うから、私はここで見守るだけよ」

 誰にでも言うわけじゃないわと付け足してカップをカチャリと戻した。

「私たちは私たちなりにこの村を守りましょペシェ」