リアクション
■工場奪還、そして
工場は無事奪還され、占拠事件の犯人であるモータルはルカルカたちやベアトリーチェによって、しかるべき所へ護送される運びとなった。
モータルが護送される直前、吹雪は未組立状態のイコプラをモータルへ手渡していく。
「初心に一度帰ってみるといいでありますよ……そこから開く扉もあるかも」
“初心に帰れ”。その言葉に、モータルは己の愚かさを悟ったのか……頭をうな垂れさせてしまった。
「おまえはイコプラの腕自体はいいんだ。罪を償ったら、ルールのもとで競おうぞ」
「きっとそれをイコプラたちも望んでるわ」
(……この様子だったら、きちんと改心して立ち直ってくれそう)
ルカルカと夏侯淵、そしてベアトリーチェはそれぞれの想いを抱きながら、モータルを護送するためにその場を後にしていく。モータルには取り調べなど色々とあるだろうが、きっと初心に戻って一からやり直すことだろう……。
「いやー、今ちょうど菜織さんのほうから連絡があって、工場も損傷軽微だったらしく、担当の人による調査が終わり次第すぐにイコプラの流通は再開されるだろう、ってことらしい。本当に助かったよ……ありがとう」
『シズモ』では店長が工場奪還を手伝ってくれた契約者たちへ感謝の言葉を述べていた。しかし、一方で店長には不安の種が残っているようでもあった。
「……とはいっても、今回の事件がきっかけで“イコプラは危ない物”って認識をされちゃうんじゃないかって不安はあるんだよな。しばらくは信用回復に努めなきゃならないんだろうけど……その間にイコプラが廃れていくかもしれない、と考えちゃうと……ね」
そう言いながら、ひとつ溜息をつく店長。と、そこへ政敏とバフォメットの二人が店長へある提案をしてきた。
「店長。実は工場奪還してた時のみんなの活躍を、守衛室から監視カメラとか使って撮影していたんだ。これを映像加工してプロモにすれば、イコプラは危ない兵器じゃないってことを証明できると思う」
「私のほうも工場内で回収いたしましたイコプラを、ケヴィン様に修繕してもらうようお願いしてまいりました。修繕が終わりましたら彼らをこの戦いの英雄として展示してもらいたいのですが。おそらく、政敏様のプロモーションビデオと合わせて展示すれば、イコプラへの間違った認識を和らげる効果はあると思われます」
二人からの提案に、驚きの表情を浮かべる店長。すぐに、その提案は受け入れられていく。
「なるほど……確かにそれならイコプラへの認識を高めてもらえそうだし、悪くないな! ついでに、その展示に合わせてイコプラバトル大会も開くとしよう!」
突然の大会開催の知らせに、イコプラプレイヤーたちは歓喜に沸き出す。……と、店長がある一角で正座させられている契約者たちの姿を発見した。
「……あれは? 確か……昌毅くんとテルミくん、それに練ちゃんみたいだけど」
「実は……あの工場の機密技術やレアイコプラなどを盗もうとしていたところをアルマ殿に見つかってしまったらしく、あのように正座で説教を受けているところなのです」
説教を受けているという三人の状況を、秘色が説明している。相当長い間説教を受けているようで、遠くからでもそのしょんぼり具合が見て取れる。
――結局、説教はまだしばらく続いたのだとか。
そしてもう一人……目標を達成した契約者がいた。今の今まで、イコプラ改造に精を出していたアキラである。
「できた……できたっ!! ついに俺だけのイコプラができたぞぉーーーー!! よぉし、さっそく工場奪還しにいこう! 俺がさくっと解決してやるぜ!」
気合を入れ、改造イコプラを手に工場へ向かおうとするアキラ。しかし、それを店長が止める。
「――あー、気合入ってるところ悪いけど……もう、解決しちゃったよ」
「……え、マジか?」
「マジ」
「――ええええええええええええええっ!?」
その日、アキラの驚愕声が『シズモ』周辺に響き渡ったという……。
初めまして、もしくはこんにちは。柑橘類系マスター・秋みかんです。
シナリオにご参加いただき、本当にありがとうございます。今回は偏りが少しあったかなー、という感じですが無事にまとめられてよかったな、と思っております。
今回も何かしらの称号が付与されているかもしれません。お楽しみに。
それでは、次の作品でもお会いできることを楽しみにしつつ――。