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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

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 広間。

「……これが広間とか絶対に嘘だろ、おい」
 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は広間に掃除にやって来た。
「何をどうしたら屋敷の中が密林の秘境みたいになるんだよ。花粉も凄まじいし」
 雲海のゴーグルとポータラカマスクを装備した恭也は舞っている花粉に愚痴った。
「……栄養剤だけでここまで逞しく育っているとは嬉しいよ」
「これは剪定のしがいがありますね」
 植物を愛するエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)が現れた。
「……剪定、本当にするつもりか。あの辺り実が飛び回ってるぞ」
 恭也はエオリアの言葉に声を上げ、実が飛び回っている場所を指さした。
「可愛いじゃないか」
 エースは笑顔で飛び回る実を見ていた。
「エース、あれは処分した方がいいですよ。危険です」
 エオリアの意見は恭也と同じだった。
「君までそんな事を。あれは……」
 エースは悲しそうな顔をし、実を飛ばす花について話を続けようとするも
「とにかく余分な枝を切ってついでに余計な根っこも切っちゃいましょう。あの辺りの植物は任せて大丈夫ですか」
 エオリアの言葉にかき消され、腕を引っ張られながら剪定に向かった。
「あぁ、任せろ」
 二人を見送った後、恭也は実を飛ばす植物との戦闘に入った。

「戦闘開始だ!」
 恭也はリモコンを手にそのまま入り口付近からイコプラ:饕餮の操作を始めた。
「パンチだ饕餮! 実を叩き落とせ!!」
 リモコンでイコプラ:饕餮を操作していく。繰り出すパンチによって実はことごとく潰される。
「ゴー君は後ろの植物を抑えとけ! ガー君はそのまま実を防御!」
 剪定をしている二人に実が飛んでいかないように幹を自分の方に向ける。自分はガーゴイルで時々襲って来る実を防御する。
「饕餮、強烈なパンチをおみまいしてやれ!!」
 激しいパンチを何度も繰り出し、実を全て潰していく。それだけではなく幹にパンチをして実を落とさせる。本当なら幹をパンチでぶち抜いて戦闘を終わらせたいが、丈夫なため出来ない。
 しだいに飛んで来る実の数が少なくなり、最後の一撃が発射。
「とどめだ!!! よし相手は弾切れ、俺達の勝利だ!!」
 恭也はその最後の一弾一つを叩き潰し、勝利を得た。

 その時、
「我々は今、密林と化した広間に立っているであります! 溢れんばかりの生命力! 不屈の精神!」
 気合い十分の吹雪がコルセアを連れて入って来た。
「……別世界」
 コルセアは広間を見回しながらしっかりと記録。
「一体何なんだ?」
 恭也は思わず訊ねた。
「我々は葛城探検隊。この地を探検しているのであります!」
 吹雪は両手を腰に当てながら堂々と名乗った。
「……探検隊。とにかく、気を付けろよ」
 恭也はとりあえず危険な所での常套句を口にして行ってしまう二人を見送った。
「……様子を見に行くか」
 恭也は剪定している二人の様子を見に行った。

 恭也が戦闘をしている間、
「君は花が無くとも観葉植物として立派にやって行けるさ。ほら、すっごく美人さんにしてあげるからね」
「……」
 エースは花に話しかけながらエオリアは黙々と剪定をしていた。

 剪定を始めてしばらく
「エオリア、可哀想だから庭で挿し木にしてのびのびと」
 エースは大量に切った枝が可哀想になって思わず言葉を洩らした。
「無理です。世話をして貰えるか分かりませんし、庭の広さにも限界があります」
 エオリアが庭に移したがるエースを止めようとする。
 先ほどからずっとこのやり取りである。
「……おい、終わったか」
 そこに戦闘を終えた恭也が様子を見に現れた。
「そちらは終わったみたいですね」
 エオリアは振り向き、恭也に答えた。
「エース、ここは広間です。片付けをしに来たんですよ。片付けの極意はとにかく物を減らす事です。庭に移し替えるのは諦めて下さい」
 エオリアはそう言いながらも手を休めない。
「庭に移し替えるのは危険だろ。放置して密林にするぐらいだから庭に替えたら家に入れなくなるんじゃないか」
 恭也が一言。この部屋の様子を見れば、想像できる未来。
「……そうですよ。庭は諦めてこの部屋に飾る植物を二鉢決めましょう」
 エオリアは恭也の言葉に重ね、妥協案を出す。
「こんな可愛い子の中から二鉢決める事は出来ない。全員が特別なんだ」
 エースは悲しそうに訴える。
「……エース」
 エオリアは柔らかい口調で促す。
「決めるよ。それで他の子はうちに連れて帰るよ」
 胸を引き裂かれそうな思いに耐えながら決断した。
「……分かりました。そうしましょう」
 エオリアはため息をつきながら言った。挿し木を諦めたのだからそれでをよしとしなければ。
「よし、君達は俺の家に来るんだ。寂しくないぞ」
 エースは全ての植物を見て回り、悩み抜いて広間に残す子と連れて帰る子を決めた。
 それが終わってから二人は剪定を再開した。

「……俺はごみを外に持って行くぜ」
 自分の担当が終わった恭也は枝が詰まったごみ袋を運んで行く。大量の植物を剪定しているのに広間は荒れ果てずにごみは全部ごみ袋にまとめられていた。ほぼ『清掃』を持つエオリアのおかげだ。
「ありがとうございます」
 エオリアは礼を言った。
 剪定はすぐに終わり、広間は綺麗になった。エースが選んだ乾燥に強く日陰に強いタイプの植物が咲いていた。選び抜かれた二鉢。

「連絡終わりました」
 エオリアが代表して法正に掃除完了を連絡したたのだ。
「そうか。広間が綺麗になったのはともかく、そんなにお持ち帰りするのか?」
 恭也はエオリアの話を聞いた後、広間を見渡し、エースが連れて帰る恋人達にも目を向けた。広間に残す植物よりも明らかに多い数。
「問題無いよ」
 あっさりと即答するエース。
「……とりあえず、外に運びましょうか」
 エオリアは手近の鉢を手に取った。植物に関してエースに分別を持って貰うのは無理だと諦めている。
「俺も手伝おう」
 恭也も手伝う。
「助かるよ。優しく運んでくれよ。彼女達は繊細だからね」
 エースは手伝う恭也に礼を言いながらも植物についての注意は怠らない。
「……分かった」
 注意を聞き入れ、恭也は迅速かつ丁寧に鉢植えを外に運んだ。