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動物になって仁義なき勝負?

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動物になって仁義なき勝負?
動物になって仁義なき勝負? 動物になって仁義なき勝負?

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 早速、ダンは園児達の相手をする事に。
「面白い話して」
 守護天使の少年が思い出したように話をせがむ。
 その言葉で動物と遊んでいた他の園児達が興味を抱き始めた。

「面白い話?」
「なになに」

「そうだな。今日は動物が絡んでいる事だからいろんな動物が出て来る話でもしようか」
 熟考の末、『神話』の知識から子供達にも理解しやすく訳した旧約聖書のノアの方舟を話そうと決めた。

「へぇ、じゃぁ、犬も出て来るの?」
 犬になった少女が訊ねた。
「あぁ。いろんな動物が出て来る」
 ダンはうなずいた。

「シュウヤ、こっちに来いよ! 面白い話してくれるって」
 ヴァルカがルファンとお喋りをしているシュウヤを呼びつけた。
 しばらくして、本を脇に挟んだシュウヤがやって来た。

「面白い話って?」
 読書家のシュウヤは興味深そうに訊ねつつ、呼びつけたヴァルカの隣に座った。
「動物が出て来る話だって」
 ヴァルカは適当に答え、ダンの方を見た。
「……話を始めようか」
 ダンは集まった子供達の顔を見回してからゆっくりと話を始めた。ノアの作った方舟、方舟に入る多種多様の動物達、全てを滅び尽くす大洪水、大洪水が引いても下がらない水かさ、方舟が乗り上げた山、鳩が知らせる無事。
 子供達は、熱心に話を聞いていた。

「ここだよ、お兄ちゃん。トモやん、連れて来たよ」
 ウォーレンが連れて来られた先はとても茂った大木の前。
「おーい、大丈夫か」
 ウォーレンは呼びかけて子供の居場所を確認してみる。
「だいじょーぶ」
 茂っている木の枝の奥から返事が返って来た。
 茂った枝を少し脇に避け、『ホークアイ』で少年の様子を確認。
「……かなり、奥だな」
 鳥になった少年トモノの体が奥の方で枝に引っかかり、動きが取れない状態となっていた。トモノの場所に辿り着くまでに多くの枝と格闘する必要があるのは一目瞭然。
「すぐに助けるからな」
 ウォーレンは、少年達に不安を抱かせないために明るく言いつつ作業を始める。
 助けるのにどうしても邪魔になる枝は『雷術』や獣槍レヴァ・クロディルで排除していく。
「もう少しの辛抱だ」
 時々声をかけて励ましながら、作業を続ける。

 そして、とうとう
「一度、下に降りるぞ」
 無事に救出を終え。ウォーレンはトモノを抱き抱えて地上に降りた。
「トモやん!」
 救出される間、空でずっと見守っていたレッキもほっとし、地上に降りた。

「……怪我はねぇか?」
 地上に降り、抱き抱えているトモノを下ろし、無事を確認する。見た目にはこれと言った怪我は見当たらないが、念のために確認を取る。
「うん、無い」
 ぶるりと頭を振って答えた。
「よし、よく泣かずに辛抱したな」
 ウォーレンは、救出されるまで泣かずに頑張ったトモノの頭を撫でた。
「うん」
 嬉しそうにこくりとうなずいた。
「おまえも友達を助けるためによく頑張った」
 トモノの友達のレッキも褒め、頭を撫でた。
 頑張った二人をしっかりと褒めた後、表情は真面目なものに変わり、
「……で、何があったんだ?」
 事情を問い始めた。レッキが来た時、救出が先だと判断し、事情を後回しにしていたのだ。二度と危険な事をさせないためにも事情は知っておく必要がある。
「……あそこからここまでどっちが早くゴール出来るか競争してたんだ」
 トモノが罰が悪そうにスタートとゴールを指さしながら説明した。自分でも危険な事をしたと分かっているようだ。それはレッキも同じでしゅんとなっていた。
「それで止まれなくなって突っ込んだんだな」
 ウォーレンはトモノが最後まで話す事なく、全容を知った。飛べるようになって浮かれて失敗をしたという事だ。
 じっと二人の表情を見て反省を確認。
「……もう二度としねぇな?」
 ゆっくりと二人に訊ねる。表情を見ると厳しいお説教が必要無い事は分かる。身に染みて危険を知ったのだから。
「しない」
 二人は同時にこくりとうなずいた。
「よし、思いっきり遊んで来い!」
 ウォーレンは反省した二人にニカッと笑いかけた。
「うん! ありがとう」
 二人はまた空に飛んで行った。
「俺も戻らねぇと」
 ウォーレンは、急いでダンと園児達の元に急いだ。

「そういえば、知ってるか? ノアの方舟が起きるまで空にかかる虹というものは存在しなかったんだ」
 ダンはそう話をくくった。

「みんな助かったんだね」
「何か、虹が見たくなっちゃった」
 ダンの話を聞き終えた子供達は口々に感想を言葉にしていた。
「面白かったよ」
 読書家のシュウヤも満足していた。本と違って人の口から語られるものは臨場感が違うから。

「……戻ったぞ」
 やんちゃな少年達を助け終えたウォーレンが戻って来た。
 子供達が一斉にウォーレンの方を向く。

「子供達の方は大丈夫だったか?」
 ダンは首尾を訊ねた。
「あぁ。少し元気過ぎてただけだ」
 ウォーレンはダンに答えた。
「そうか」
 ダンも無事と聞いて安心した。

「次はお兄ちゃんの番だよ。面白い話!」
 ウォーレンとダンの話が終わったのを見計らって園児達はウォーレンに面白い話をせがんだ。
「面白い話、か。兄ちゃんの旅の話でも……」
 ウォーレンは一度、集まった子供達の顔を見回しながら何を話すのか考えた末、旅の話をし始めた。
「そんな事があったの?」
 読書家のシュウヤは今まで読んだ物語よりずっと面白いウォーレンの話にすっかり夢中になっていた。

「じゃ、次!」
 ウォーレンの話が終わるとダンの方に視線を向ける園児達。
「……そうだな」
 ダンは聖書から園児達が楽しめる話を選び、理解し易いように話した。
 これ以降、ダンとウォーレンのお話会となっていた。
 園児達の興味は尽きないらしく話が一つ終わると次の話をおねだりと何度もそれを繰り返していた。

 森に行った友達が戻って来るまで、園児達はやんちゃをしながらも大人しく待っていた。