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動物になって仁義なき勝負?

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動物になって仁義なき勝負?
動物になって仁義なき勝負? 動物になって仁義なき勝負?

リアクション

「大丈夫かのぅ」
 ルファンはシュウヤと話した後、不安になっているだろうナコに会った。
「……私は大丈夫です。でも、森にいる子供達は泣いているかもしれません。もし大怪我でもしていたら。あぁ、私が目を離さなければこんな事にならなかったはず」
 残った園児の様子を青い顔で眺めているナコ。森に入ってしまった園児達が心配でならない。泣いていた園児の相手をしなければならなかったとは言え、監督不行届だった。
 お守りの留め具が壊れた花のブローチを握り締める手は汗ばんでいた。
「……絶対に子供達は無事じゃ」
 ルファンは励ましの言葉を口にするが、ナコの表情からは心配の色が消えない。
 そんなナコを見て一人の園児が不安そうな顔をしてやって来た。
「先生、大丈夫?」
 近くにいた獣人の少女が心配そうに声をかけて来たが、じっと答えられず、園児の顔を見ているナコ。
「先生がそんな顔をしていたら子供達が心配するじゃろう」
 ルファンは何か答えるようにと促した。
「……はい。ありがとう、ロロミちゃん。先生は大丈夫よ」
 ナコはこくりとルファンにうなずき、お守りをそっと片付けてから笑顔でロロミに答えた。
「じゃ、先生、ロロ達と遊ぼう!」
 ロロミはナコの手を引っ張ってボール遊びをしている友達の所に連れて行った。

 ナコを無事見送ったルファンの耳に
「……うわぁぁあぁん」
 壮大な園児の泣き声が入って来た。
「誰か怪我でもしたのかのぅ」
 ルファンは急いで駆けつけた。

「……うわぁぁあぁん」
 アスレチックで遊ぼうと走っていたら転んで左膝をすりむいてしまったのだ。怪我自体はちょろりと血が出ている程度の軽いもの。ナコが少し前に相手をしていた大泣き園児である。

「……どうしたんじゃ」
 駆けつけるなり訊ねるが、泣いてばかりで答えない。
「ふむ。走って転んだのかのぅ……これでもう大丈夫じゃ」
 状況から怪我をした経緯を確認してから手当をした。『応急手当』を持つルファンはスムーズに作業を終わらせた。
 それでも泣き声は止まらない。
「……うむ」
 ルファンは泣き終わるのを待つ事にするもなかなか止まらない。
 そんな泣き声を止めたのは闘魂溢れる音楽だった。
「……ひっく。この歌……」
 少年はまだ涙を浮かべながらきょろりとスカイレンジャーの歌を弾いているアメリ達の方を見た。
「スカイレンジャーが好きなのかのぅ」
 ルファンは視線の先を辿り、泣き虫しおの涙を止めたものを知った。
「うん。スカイレッドが好き」
 しおはこくりとうなずいた。
「スカイレンジャーの熱血リーダーじゃな」
 ルファンはそのまましおの相手を続けた。
「知ってるの!?」
 しおはルファンが知っているとは思わなかったのでとても驚いた。
「知っておるよ」
 ルファンはうなずいた。ヒーローショーの手伝いをした事があるのでよく知っている。
「スカイレッドみたいになりたいけど。泣き虫だから……」
 いつも友達に泣き虫だと言われているのでよく分かっている。泣くのを我慢しようとするもいざ転んだり怪我をするとそんな誓いなど吹っ飛んでしまうのだ。
「誰でも痛ければ泣くものじゃ」
 ルファンはしおの両膝の絆創膏を見ながら言った。
「……ねぇ、どうしたら泣くの我慢出来る? いつも泣かないって決めてるけど。でも……」
 しおは必死な顔でルファンに訊ねた。
「……スカイレンジャーのように強くなるための修行と思うのはどうじゃ?」
 ルファンはそう提案した。大泣きの最中、ルファンの声は届かなかったのにスカイレンジャーの歌は届いたから。
「……修行」
 しおはルファンの言葉にうつむいた。泣き虫な自分には無理だと。
「そうじゃ。しかし、修行の第一歩は達成しておるよ」
「……?」
 しおはルファンの言葉に顔を上げた。
「泣かないと決心をしておる事じゃ。何をするにも強い意志がないと始まらないからのぅ」
「本当?」
 予想外の褒め言葉にしおは驚いた。いつもなら泣くなと言われるばかりだから。

「本当じゃ。最初から何でも出来る人はおらぬ。決心さえ強ければ誰よりも強いスカイレッドになれるからのぅ」
「うん」
 ルファンの言葉にこくりと力強くうなずいた。

「ほら、立てるかのぅ」
 ルファンは立ち上がるのを助けようと手を差し出すが、
「大丈夫。ねぇ、一緒に歌、聞きに行こう」
 ほんの少し頑張ろうと思ったしおは手を握らず一人で立ち上がった。
 そして、ルファンと共にアメリの演奏会に行った。

「みんな、歌上手ね」
 アメリは、演奏と共に歌い終わった子供達を褒めた。

「うん。お姉ちゃんもすごいな」
「何でも弾けるんだもん」
「一緒に歌ってくれるし。お姉ちゃん、弾くの好きなんだね」
 子供達はそれぞれアメリの演奏を喜んだり褒めたりした。

「……弾くのが好き」
 アメリはシャンバラ人の少女が言った言葉に止まってしまった。
 じっと鍵盤に置いた両手を見る。ふと様々な事を思い出してしまう。ピアニストだった時や難病に罹った時や投げやりで無感動の日々を送っていた時。

「……お姉ちゃん?」
 酷い事を言ってしまったのか心配になった少女がアメリの様子を窺う。
「そうね」
 アメリは少女に心配無いと笑いかけた。
 こうして弾いているという事は少女の言うように好きだからだろうと。

「……次は何にする?」
 アメリは気を取り直して園児達に訊ねた。ここまで園児のリクエスト全てを完璧に弾きこなしている。

「次は……」
 園児達は何を演奏して貰おうかと迷い始める。
 その間、アメリは少しだけ休憩。

「……ふぅ」
 息を吐きながら賑やかな園児達を眺めている。
「……お疲れじゃな」
 ルファンがアメリに声をかけてきた。
「……あっ、その子は?」
 声をかけられたアメリは振り向き、ルファンの隣にいるしおに気付いた。
「一緒にそなたの演奏を聴きに来たんじゃ」
「……そう」
 ルファンの言葉にアメリはうなずいた。
「……みんな、新しく来たしお君の好きな曲、弾いてもいいかな?」
 アメリはまだ迷い中の子供達に声をかけてみた。

「いいよ」
「しょーがないなー」
「しーちゃんの好きなのでいいよ」
 みんな口々に言いつつもしおにリクエスト権を譲った。

「……ありがとう。しお君、何か弾いて欲しい曲はある?」
 アメリは友達に譲った優しい子供達に礼を言ってからしおに訊ねた。

「スカイレンジャーの歌」
 しおは泣いている時に聴いた歌をリクエストした。

 当然聴き終わっている他の子供達は、
「えーーー、それさっき聴いた」
「別のにしようよ」
 クレームを口にし始める。

「……だって」
 しおは困ったように顔をうつむかせ、泣きそうな顔になる。

 そんな中、
「……」
 じっとしおを見ていたアルリッヒが急に立ち上がった。
 何をするかと思えば、急にスカイレンジャーの歌を歌い始めたのだ。

「あっ」
 しおは驚き顔を上げてアルリッヒと目を合わせ、思いやりを知り一緒に歌い始めた。
 面白そうと思った他の園児達も次々に歌い出す。
 しばらく、アメリは園児達の様子を眺めていたが、すぐに仕事を始めた。
「……」
 休ませていた指を動かし、音を生み始める。
 ルファンはその様子を少しの間、見守っていたが心配無いと分かるなり離れた。