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動物になって仁義なき勝負?

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動物になって仁義なき勝負?
動物になって仁義なき勝負? 動物になって仁義なき勝負?

リアクション

 森、入り口。

「すぐに救出と行きたいところだが、人型のまま森に入ると土に飲み込まれるんだったな。変身薬を使うか」
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)はじっと森を見ながら怯え泣いているだろう園児達の安否を心配する。
 とりあえず、侵入の準備を整える事にした。

「オイラは獣化出来るから薬は遠慮するぜ」
 獣人のオリバー・ホフマン(おりばー・ほふまん)は動物変身薬を断った。
 結局、薬を使ったのは三人。

「うお!! カエルかよ」
 甚五郎は赤目の黒蛙に変身した。

「……ワタシもカエルですね」
 茶目の黄色蛙のホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)は、手を伸ばしたり跳んだりしてみる。
「ふーむ、カエルかぁ。もっとアクティブなものになりたかったのぅ」
 少し残念そうな金目の銀色蛙の草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)
「甚五郎、閃きました!!」
 蛙状態を確認し終えたホリイが大きな声を上げ、ぴょんと一回ジャンプした。
「どうした?」
 甚五郎は、アクティブな動きをするホリイに訊ねた。
「今、鎧化したらワタシはどうなるんでしょうか? 纏う者のいない鎧があるだけなのでしょうか? それとも……フルアーマーカエルなのでしょうか!? やってみます」
 好奇心いっぱいにホリイはすぐさま鎧化した。

 そして、
「すごいです。フルアーマーカエルですよ!」
 フルアーマー状態となったホリイ。もしかしたら動物変身薬の混ぜ合わせによる影響かもしれない。
「……面白すごい薬じゃのう」
 ホリイの様子を見ていた羽純が感想を洩らした。

「三人ともカエルとはな。なったものは仕方が無いが、森の中には獣もいると聞く。オリバー、乗せてくれ。園児を乗せるかごも頼む」
 甚五郎は、この中で唯一頼れるオリバーに声をかけた。
「おう、食われたくなかったらさっさと乗れよ」
 すっかりライオンに獣化したオリバーは言われた通りかごを背負い、準備を整えた。

「行くぞ」
「うむ」
「……お願いします」
 甚五郎達は次々にオリバーの頭の上に乗車し、トーテムポールのように蛙三段となる。
 一番下は甚五郎で頂上にはフルアーマーのホリイとなっている。

「オイラから離れるんじゃあないぞ」
 乗った三人に言ってからオリバーは森へと走り出した。

 アスレチック広場。

 ロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)の魔法訓練に丁度良い森を発見して連れて来たのだが、思わぬ騒ぎに巻き込まれていた。

「……大丈夫か?」
 ロアはベンチに座って休んでるグラキエスに訊ねた。
「……あぁ」
 グラキエスは心配させないように気遣った返事をする。
 しかし、言葉とは裏腹に顔色は悪く不安そうである。体は衰弱状態で決して良くはない。
「……やっぱり、森に行くのはやめるか」
 ロアは隣に座りながら言った。大事なのは使い方を忘れた魔法を上手く使えるようになる事ではなく、グラキエスが倒れたり吐血などせず元気で自分の側にいてくれる事だ。
「いいや、行く。記憶は失ったけど魔法はまだ間に合う」
 グラキエスは頭を振ってロアの気遣いを退けた。グラキエスにもグラキエスなりの考えがある。自分を気遣って訓練に付き合おうとしてくれるているロアを失望させたくないのだ。記憶を失って悲しませてしまっているのだからと強く思っていた。
「……グラキエス」
 ロアは一歩も譲る様子の無い事を確認するなり立ち上がって口元に笑みを浮かべ、ぐしゃぐしゃとグラキエスの頭を撫でた。
「よし、森に行って訓練をしてついでに戻り薬も取り戻してみるか」
 グラキエスが決めたのなら自分のやるべき事は一つ。全力で守る事。
「お前はここで待ってろ」
 ロアはふとグラキエスを楽しませる名案を思いついた。
「……ロア」
 グラキエスは、もの凄く不安そうな顔をする。何か勘に障る事でもしてしまったのではと。
「そんな顔をするな。すぐに戻って来る」
 もう一度、頭を撫でてからロアはどこかに行ってしまった。
「……分かった」
 こくりとうなずき、ロアを信じて大人しく待つ事にした。

「……ロアは俺が前と全く違うと分かったら皆のように悲しむだろうな……俺をどう思っているだろう」
 ロアを待つのはそれほど長くは無いのにグラキエスにとってはとてつもなく長く感じてしまう。もしかしたらこのまま置いてかれてしいまうのではないかとか。記憶を喪失してからロアとのまともな接触はこれが初であるため余計にそう思ってしまうのだろう。
 記憶を失う前は、兄弟のような友人同士だった二人。

「……猫か」
 ロアは動物変身薬を使って濃い赤毛に緑の目をした猫になっていた。
「グラキエスの奴、動物好きだから少しは元気が出るだろ」
 ロアは満足そうに自分の姿を確認してからグラキエスの元に急いだ。

「戻ったぞ……って、何だその不安そうな顔は。すぐに戻ると言っただろう」
 そう言うなり、ロアはグラキエスの膝の上に乗って腕を伝って肩に移動する。
「元気の無い奴は猫な俺が全力で癒し倒してやる!」
 ロアはグラキエスの頬を舐めまくる。
「……ロア」
 こそばゆくてたまらないグラキエス。
「やめてほしけりゃ、俺を撫でろ。そして笑え!」
 ロアは精一杯、グラキエスを元気付ける。その心遣いはしっかりとグラキエスに届いていた。
「……ありがとう」
 グラキエスはロアの頭を撫で、わずかに笑う。
「まだ元気が足りないが、許してやろう。さ、行くぞ」
 ロアはグラキエスの笑顔を確認するなり、ひょいと飛び降りて地面に着地して森に向かって歩き始めた。
「……分かった」
 グラキエスはゆっくりと立ち上がり、ロアに続いた。
 二人は森に入った。

「森が云々と弥狐が言っていたけど。危険な森なら変身しなくても弥狐がいれば大丈夫な気が」
 奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)は動物変身薬を眺めながら考えていた。雲入 弥狐(くもいり・みこ)は、森の前で待っているからと言って今は森の入り口にいる。
「動物の姿だったら襲われないのよね」
 意を決した沙夢は動物変身薬で熊に変身し、急いで森へ向かった。