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動物になって仁義なき勝負?

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動物になって仁義なき勝負?
動物になって仁義なき勝負? 動物になって仁義なき勝負?

リアクション

「……ったく、どこにあるんだ」
 先頭を行くシンは、戻り薬の匂いを辿りながら進んでも進んでも見つからない事に苛立っていた。
「襲われないのはいいけど……へっくしゅん」
 ローズは猫になってからくしゃみばかりで会話が途切れ途切れ。
「……」
 学人は『ディテクトエビル』で周囲を警戒しつつ探索している。
「……あれは猫」
 カンナが目をこすりながら前方で狼に襲われている子猫を発見。
 離れていては園児が変身したのかは判別出来ないが、助けるのに園児か動物かなどは関係無い。
「助けないと! へっくしゅん」
 ローズは子猫の元へと急ぐ。
「おい、待てよ。ロゼ!」
 くしゃみをしまくるロゼでは戦えないだろうとシンも急ぎ、子猫の前に立ち塞がる。

 そして、
「痛い目見たくなかったらさっさと消えるんだな、オラオラ!」
 『お引き取りくださいませ』による体術で戦うが、どう見ても愛らしい猫パンチにしか見えない。
 
「……加勢した方がいいかも」
 カンナが『恐れの歌』で短い前足で必死に戦うシンの加勢をした。

「大丈夫だよ……くっしゅん」
 ローズは二人が相手をしている間にうずくまっている子猫の様子を確認。怪我をしている事が判明し、手早く『ヒール』で怪我を癒した。その様子は毛繕いにしか見えない。
「治療が終わったのなら安全な場所に移動するよ」
 やって来た学人が子猫の首根っこをくわえて急いで移動する。

「シン、カンナ!」
 ローズが戦っている二人に合図を送った。

「こんなに小せぇとダメだな」
「……行く」
 シンとカンナも続いて逃げる。

 ローズ達は学人の『ディテクトエビル』を使いながら安全な場所に辿り着いた。

「ふぅ、助かったね……へっくしょん」
 ローズは無事に脱出出来た事に安心していた。
「ロゼ、猫」
 カンナが突然現れた猫の群れの方に顔を向けた。
「もしかしてこの子の親達かな……会話出来るかな……へっくしゅん」
 ローズは現れた多くの猫達の中に子猫と似たような親猫がいる事を発見し、子猫を連れて会話が出来るか試してみる事に。
「……この子、大丈夫だよ」
 手振り身振りを使いながら話すローズ。隣にいる子猫もにゃーとローズ達が助けてくれた事を話す。どうやら子猫は遊び回っている時に狼に遭遇し、怪我を負わされ動けなくなってそれを親猫達が探し回っていたようだ。
「……通じたか?」
 話が一区切りついたの見計らってシンが訊ねた。ローズが話していたのは猫語ではなく、明らかに人語だったが。
「なぜか、問題無いみた……へっくしゅん」
 ローズは言い終わらないうちにくしゃみをした。
「……問題無いなら情報を得る事が出来るね」
 学人は猫達を見ながら言った。これだけ多くいれば一匹ぐらい戻り薬の行方を知る猫がいるかもしれない。
「そうだ。早く戻り薬の事聞いてくれ」
 早く戻りたくてたまらないシンはローズを急かした。
「私達、戻り薬を探していて、もしかしたら土の中かもしれないけど、知っているかな?」
 ローズが猫達に訊ねると、ニャーニャーと話し合いを始め出した。

「……もしかしたら知らないかもしれないな」
 話し合いが長い猫達を見守りつつ顔を掻きまくるカンナが言った。
 しばらくして、話し合いは終わり結論をローズに伝えた。
「見かけた猫もいるけど、行き先までは分からないみたい。でも、子猫を助けてくれたお礼に手伝ってくれるみたいだよ」
 ローズは鼻をむずむずさせながらも何とか話し切った。
「本当か!? さっそく、始めて貰おうぜ」
 シンの声の調子が上がった。
「……それは助かる」
 カンナは協力の礼にと『激励』で猫達を労い、奮い立たせた。
「僕達も探索に戻ろうか」
 学人の言葉で四人も探索に戻る事になった。
 ローズ達は、猫達の協力を得ながら戻り薬まで何とか辿り着く事が出来た。

 和輝達は、白鳩の群れが探し出した目的地に来たが、どこにも園児の姿がない。
「……いないな。移動したのかもしれない」
 和輝は考えられる事を口にした。森を出ようと歩き回っているのではないかと。
「じゃ、アニスが空に行って見てみるね」
 アニスはそう言って上空に飛んで周囲を確認する。

 そして、森の隙間から幹の側にいる鳥を発見。
「……いた。あれ、エリエだ」
 アニスは、他の人から伝えられた情報で誰なのか分かった。
 すぐに『精神感応』で和輝に知らせた。

「……いたみたいだ。それもエリエだ」
 和輝は受け取った情報を久秀にも教えた。
「アニスが園児達に救出を頼まれていた子ね」
 久秀はアニスに頼みに来ていた園児達を思い出した。

 すぐにアニスが空から戻って来た。
「和輝、和輝、早く行こう!」
 戻るなりアニスは和輝を急かす。早く友達のために助けてあげたいと。
「分かった」
 和輝はうなずいた。三人は現場に急行した。

「……ひっく……どうしよう……みんないないよう」
 飛び疲れて木の側で泣いているエリエ。

 そこに
「エリエ、見つけたよ!」
 白鳩のアニスが元気に登場。
「えっ」
 エリエは驚き、やって来たアニス達三人を見た。

「アニス、エリエを捜しに来たんだよ」
「怪我はしていないか?」
 アニスはやって来た理由を言い、和輝は怪我の確認をした。
「うん」
 エリエはこくりとうなずいた。
「絵音とスノハも待ってるから帰ろう」
 アニスは、エリエの友達に頼まれた事を伝えた。
「うん。帰って遊ぶ」
 まだ少し涙目のままこくりとうなずいた。
「よーし、エリエ、アニスと一緒に飛ぼう」
「うん」
 アニスはエリエを誘い、一緒に飛ぶ。
「さぁ、森を出るわよ」
 救出が上手く行ったところで久秀が言葉を挟み、森の出口へと急いだ。

 この後も順調に救出活動は続けられた。和輝の飛装兵を飛ばして空から周囲の偵察を行って貰ったり、夜月達とまた合流して情報のやり取りをしたりしてスムーズに救出活動は進んで行った。

「確か、この辺りだよな」
 夜月は、植物から得た情報を元に到着した周囲を見回した。
 子供の姿形が無い。あるのは、流れる川だけ。
「……川か」
 渚がふと川に気付き、覗き見てみるが子供の姿は無い。
「早く見つけた方がいいですね。川で溺れていたりというのも考えられます」
 真面目な光秀は、川から考えられる最悪な事態を想定し始める。
「いや、この川、それほど深くはねぇから」
 夜月は、そう言って光秀の思案を止めた。その通りで深さは足首の少し上くらいなのだ。
「……向こうから音がするのだが」
 ふと渚がかすかに聞こえる水がはねる音に気付いた。
「……多分、俺達が捜しているガキだろ」
 そう言い、夜月は足を進めた。
 夜月の予想通り、蛙になった少年が川で泳いでいた。

「うわぁ、すげーー」
 楽しそうに泳ぐ少年。夜月達が来ても気付かない。

 その様子に
「……泳いでるな」
「溺れていなくて良かったです」
 夜月は少し呆れ、光秀は安心していた。

「ん?」
 ようやく気付いた少年は止まって夜月達の方に顔を向けた。
「怪我はねぇみたいだな。ほら、帰るぞ」
 夜月は少年に帰るように面倒臭そうに言う。
 しかし、遊び盛りが素直に言う事を聞くはずはなく、
「えー、もう少しだけ。だって、元に戻ったら泳げないもん」
 わがままを言い始めた。

「続きは後だ。みんな心配してるぞ」
「そうです。先生もお友達も」
 夜月と光秀は少年が心動くだろう言葉をかけ、言う事を聞かせようとする。

「んー、分かった」
 友達や先生の事を思い出した少年は仕方無くうなずき、川から出た。

 その瞬間、
「さっさと、森の外に連れて行ってアニスと合流するぞ」
 渚は蛙になった子供を抱え、森の出口へと走り出した。
 早く子供を出口に連れて行き、アニスと合流して愛でるために。
「おー、早いな」
 夜月は、渚を見送ってすぐに歩き始めた。襲われても渚がいれば子供は心配無い上に『精神感応』で情報のやり取りが出来るので問題は無い。
「私は会いたくないですけど」
 光秀はそうつぶやいた。アニスと合流するという事は久秀に会う事だからだ。

 結局、また和輝達と合流して情報のやり取りなどをした。
 渚は至福の時を堪能し、光秀は屈辱の時を味わった。