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リアクション
第5章 幽霊in気になるあの子
「君とデートできて、おれは嬉しいぜ?」
「本当ぉ? この子のためじゃないの?」
「それはそれ。お兄さんは、女性には優しいの。名前、教えてくれない?」
「ふふ。……覚えてなーい」
シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)は、金元 ななな(かねもと・ななな)とデートしていた。
性格には、なななに取りついた幽霊と。
なななに声をかけたシャウラは、すぐに彼女の様子がおかしいと気づいた。
恋がしたいという幽霊に、一も二もなく協力することになった。
つまり、デートのお時間だ。
「冷たいモノ、買ってきましたよ」
ユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)が差し出したのは、ディンス・マーケットの店で買ってきたアイス。
スプーンを取ろうとするなななの手を、シャウラは軽く制して自分がスプーンを持つ。
「はい、あーん」
「え……ちょ、ちょっと」
赤面するななな。
(あぁ、やっぱりなななは可愛いなぁ……って、違う違う。今はこの子とのデートなんだ)
「ほら、早く食べないと溶けちまうぜ?」
「あ、あーん」
ぱくり。
「はい、これ、プレゼント」
「え、わ、……ありがとう」
雑貨屋ウェザーの出店で買ったペンダント。
押しつけがましくなく、さりげない動作でなななに付けるシャウラ。
「今日の想い出だ。またいつか俺がナラカに行ったら、会ってくれるかな?」
「……あなたが来てくれるなら、ナラカも悪くないわね」
ななな……に取りついた幽霊は、シャウラに顔を近づける。
(うぉ!)
ちゅ。
頬に触れる温かい感触。
そして、淡い光。
彼女は、成仏したのだ。
「ん……あれれ、ゼーさん?」
「ななな!」
首を傾げている少女を、シャウラは思わず抱き締める。
「えええ!?」
「やった、なななが戻った!」
「ほ、ほわわわ」
そのままくるくると回る。
「シャウラ、落ち着きなさい」
「はっ! す、すまないななな。つい嬉しくって……」
「んん? うーん、大丈夫」
ユーシスにたしなめられ、慌ててなななを下すシャウラ。
まだ状況を理解していない様子で、ゆっくり頭を振るななな。
「お詫び……ってわけでもないけど、何かプレゼントさせてくれないかな」
再び雑貨屋の商品を指差すシャウラ。
「ん? これは?」
なななは自分の首にかけられた見覚えのないペンダントを指差す。
「あ……」
シャウラは、なななのペンダントをそっと外す。
「これは、違うんだ。ごめんな」
※※※
エアカーが走っていた。
運転席には、想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)。
助手席には雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)……に、取りついた幽霊。
「どこに……向かっているの?」
「内緒」
大きな瞳には、もう僅かに涙が溜まりかけている。
その涙が早く乾くよう祈りながら、夢悠は笑顔を向ける。
「ちょっと、ちゃんと説明しなさいよ!」
「でも、ちょっとロマンチックかもですわ」
「早く幽霊さんの願いが叶うといいですね」
後部座席に、いささか窮屈な様子で座っているのは白波 理沙(しらなみ・りさ)、チェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)、早乙女 姫乃(さおとめ・ひめの)の三人。
姫乃はいつもの巫女姿ではなく、浴衣を着ている。
白い地に風鈴の模様が可愛らしい。
しかし、姫乃はほんの少し浮かない顔をしていた。
「すみません……私、巫女なのに幽霊さんのお役に立てなくて……」
「いえ、そんな……こうして協力していただけるだけで、嬉しいわ」
「仕方ありませんわ。専門が違うんですから」
助手席の雅羅が首を振り、隣のチェルシーも微笑んでみせる。
チェルシー自身、姫乃の力に期待していた所はあったが、それは見せないでおく。
雅羅はチェルシーが用意した浴衣を着ていた。
雅羅の体系的に若干着付けが難しかった部分もあったが、チェルシーはタオルを駆使してなんとか着付けることができた。
赤地に青い朝顔の咲く大胆な柄が、美しい。
「だいたい、綺麗なモノが見たいのにどうしてドライブなの?」
理沙の質問に、夢悠は笑顔で答える。
「星空ドライブ、綺麗だろ?」
「ん、まあ……ね」
見上げれば満天の星空。
「それに、言ってたよね。綺麗なモノといえば、海と花火だって」
「え、それじゃあ」
エアカーは、海に向かっていた。
既に昼間の暑さは消え去った海岸に、人気はなかった。
5人は黙って車を降り、砂浜を歩く。
波の音だけが、聞こえる。
「素敵ね……」
雅羅に取りついた幽霊が、小さく呟いた。
(ま、雅羅の方が素敵だよ……なんて今は言ったら駄目だよね)
そんな雅羅を見て、夢悠は顔を赤らめる。
「それじゃあ、始めましょうか」
理沙は花火セットを取り出した。
一発目は、怖がりの幽霊の子を配慮して、優しい光のもの。
乗ってきたらたくさんの火花が散るもの。
途中、打上げ花火も交えつつ大物を。
そしてシメはやっぱり、線香花火!
光が、雅羅たちを照らす。
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