First Previous |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
Next Last
リアクション
「それでは結果発表!」
ミスコンの投票方法は、自分がいいと思った参加者の名前が書いてある大きな板にあらかじめ配られたシールをぺたりと貼り付けるという単純なものだった。
その板がステージに並べられ、大きな布に覆われていた。
「ふふふ、雪女郎の悔しがる顔が見れるわ!」
「そうねエリス! 私のファンもたくさん来てくれていたし、これならきっと勝てるわ!」
ドキドキしながらも発表の瞬間を待つ。
「今年の渚のミス・コンテスト。栄えある優勝者は――」
ドラムロールが響き渡り、板を覆っていた布が一気に取り払われる。
「雪女郎ちゃん! おめでとう!」
開いた口がふさがらない。
エリスとアスカは呆然としながらステージの板を見つめていた。
板に無造作に張られたシールたち。だがしかし雪女郎の板だけは違っていた。
近くで見たら何だか分からないだろうが、ステージから離れた客席からならはっきりと分かる。
「俺さ、雪女郎ちゃんの目のとこにシールはらせてもらえたんだぜ!」
「いーなー、俺は髪の毛だったよ」
わいわいとビーチバレーに移動する人波に混じってエリスたちもとぼとぼと歩き出していた。
「あんなの……ずるいわよ……」
ちらりと振り返れば、ステージ上に残された板の上で雪女郎が微笑んでいた。
そう。シールを使って雪女郎の似顔絵を完成させたのだ。
ファンだから出来る技。ファンだからこそ成しえた技。
「あたしたちは……あんなちみっこい世間知らずの子に負けたっていうの……」
「嬢ちゃんら、その悔しさぜひわが妬み隊で力に換えてみぃひんか?」
瀬山はすすすとビラを取り出して傷心の二人を慰めながら上手く勧誘できないかと黒い笑いを零していた。
「逃げずに来たか。その勇気だけは認めてやろう」
「誰が逃げるかよ。このゲームが終わったら俺たちゃここの英雄だ」
隊長を睨み返すエヴァルトと無限。
そして今浜辺の命運をかけた試合のホイッスルが鳴り響いた。
最初のサービスは無限が叩く。
ラリー・ポイントシステムのこのゲームでは耐久・持久力がものをいう。
ボールがアウトになるか相手がミスをするまで続けるラリー。
サーブを受ける側がボールを落とせば、サーブした側にポイントが入る。逆にサーブした側がミスをすれば、サーブを受けた側にポイントが入るのだ。そしてサーブを受けた側にポイントが入った場合、サーブを行える権利がチェンジする。ミスさえしなければ何度でもサーブ権を持っている側からボールを打つことが出来るのだ。
相手がボールを落とさなければいつまでたってもポイントは稼げない。
つまり相手が強ければ強いほどラリーは続き体力は消耗していくということだ。
機晶姫であるロートラウトはともかく千結が狙われたらまずい。
無限とロートラウトが前衛につき、エヴァルトと千結で後方を固める作戦だ。
「ゲーム。無限・エヴァルト」
わぁっと歓声が起こり、無限たちのチームが第一ゲームを先取した。
だが手堅くラリーをやって相手のミスを誘っただけで、特に強く打ち込まれたわけでも打ち込んだわけでもない。
ゲームは全部で三セット。先に二セットを取ったほうが勝ちとなる。
「よし、これならストレート勝ちもいけるかもな!」
にひひと笑うエヴァルトに無限は本当にそう簡単にいくものだろうかと考える。
嵐の前の静けさとでもいうのだろうか。
あれだけの余裕をかましておいて何も仕掛けてこなかった第一セットが何か怪しい。
警戒しておいたほうがいいと助言はしたのだが、これほどまでに意味もなかったと思い知ることはない。
「ゲーム、雪女郎」
これほどまでに何も出来ないなんてあっただろうか。
いくらボールを返してもすぐに凄まじいスピードでコートに叩き込まれる。
「第一試合、俺たちに勝たせたのはわざとだな」
「俺たちをなめきってやがる……畜生!」
スパイクを受けた腕が赤く腫れジンジンと痛み出していた。
「大丈夫ですか?」
ミュリエルが心配そうに覗き込むが、心配ないの一点張り。
そうだ、こんなところで負けるわけにはいかない。無事に勝って、浜辺を取り戻さなければならないんだ。
その使命がコートに立つ四人を動かしていた。
「畜生、腕あがんねー」
悔しそうに腕をぶんぶんと振り回すエヴァルトに千結は何か引っかかりを感じていた。
ボールを受けたときに感じる重み。腕に色濃く残る赤い痕。そしてジンジンとしみる痛み。
これはもしかして。
「ねぇ皆ちょっと聞いて欲しいの」
First Previous |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
Next Last