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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

リアクション

「確かに危険な物ではないようだけど。忙しい時によくやるよ」
 北都達とキスミの会話を聞いた涼介は呆れていた。真面目にやればいいものをふざけて騒ぎを起こすのだから迷惑この上無い。

「それじゃ、早速お願いするよ。ところで幻覚は花畑や海が見えるだけなのかな? 人によっては別のの何かが見えたりするとか」
 北都は依頼と共に少し疑問になかった事を口にした。北都が一つだけ思っていても口にしなかったのはぼんやりしている間に悪戯や財布を盗む事が出来るというものだった。口にすると悪さをしかねないから。

 途端、
「おっ、それいいな。人によって別の物が見えるように作り替えてみるか」
 急にテンションを上げ、頭の中が悪さでいっぱになるキスミ。
「おいおい、さぼるつもりか」
 白銀がツッコミを入れる。
「……さぼるのなら次はたんこぶですまぬぞ」
 静かにイグナがキスミに脅しをかける。
「……はい」
 逆らえない様子にこくりと静かに二種類のクッキーとシンとの勝負料理の調理に戻った。北都達はまだ調理スペースにいた。

「……さて用事が終わったところで僕は飲み物でも用意しようかな」
 北都は出掛けたグィネヴィアのためにノンアルコールのジャスミン&ライチのお酒の準備を始め、白銀は料理人の様子を見て回った。

 その後、白銀はローザマリアの所へ。
「美味しそうだな」
 アップルパイやミートパイを眺め回す白銀。
「一つ、食べてみる? これでも味には自信あるつもりだから」
 ローザマリアは、ミートパイを一つ差し出した。
「それじゃ」
 白銀はお言葉に甘えて一つ頂く事にした。
「なかなかだな」
「でしょう。戻って来たらグィネヴィアにも食べて貰おうと思って」
 ローザマリアは白銀の感想に満足そうだった。
 白銀はぐるりと調理スペースを見て回った後、近くのテーブルで食べたり飲んだりして時間を過ごした。

「……薬を作っているのか」
 ルカルカが食べ尽くした分の料理を高速で生産終えたダリルが薬製作をしているローズに気付いた。
「えぇ、実体化の薬をね。せっかく、いるのに参加出来ないのは寂しいと思って」
 幽体離脱クッキーを食べて霊体化しているローズは作業を止めてダリルに答えた。
「でも進み具合は悪いかな。やっぱり時間と材料が足りないから」
 ローズは薬の進行具合を話した。今のように自ら幽体離脱クッキーを食して分析したりキスミから成分を聞いたり試行錯誤はしているのだが、時間と材料が足りないため思うようにはいかない。その二つがあれば『薬学』を持つローズにはお手の物なのだが。
「そうか。悪いんだが、霊体が完全に姿を消した時に姿を強制的に見えるようにする薬は作れないか。効果は一時的でも構わない」
 ダリルは音量を下げ、ローズに頼み事をした。今ルカルカの執事役をしていて薬作製は無理なので。
 ローズはすぐに理由を察した。
「……もしかして対キスミの」
 ローズもまた何度も双子の悪戯に巻き込まれているので。
「あぁ、必ず霊体になって悪さをするはずだ。間違いなく完全に姿を消してな」
 迷いのないダリルの答え。面白い物があるのに使わないはずは無いので。
「その可能性はあるね。作るのはすぐだよ。クッキーの分析はしてあるから」
 ローズはあっさりと引き受けた。どんなに目を光らせてもほんの隙を突いて悪戯をするのがあのロズフェル兄弟なのだ。未然に防ぐのが一番なのは確かなのだが、用心に越した事は無い。
「キスミに気付かれないように頼む。気付かれたら対抗策を思いつくはずだからな」
 ダリルはちらりとキスミに聞かれていない事を確認してから小さく言った。悪戯に関しての行動力は抜群なのでこちらが先攻を取らなければ面倒な事になる。
「分かった。姿が見えれば何とか出来るからね」
 ローズも小さくうなずき、対双子の薬製作を引き受けた。
 この後、ダリルはルカルカの元へ戻り、ローズは実体化の薬を諦め、対霊体双子の薬に切り替えた。なるべく早く作り上げる必要があるためだ。
「……対象はクッキーを使用した人だけで効果は完全に姿を消した時に見えるようにする事、効果時間は一時的でも大丈夫かな。形状は……」
 ローズはゆっくり作るべき薬の形をまとめていく。
「キスミに使う前にばれて廃棄されないように液体にしてドレッシングを入れる容器にでも入れたら分からないよね」
 『薬学』を持つローズは静かに対双子の薬を作り始めた。薬を使わずに済むのが一番良いのだが、何度も巻き込まれている者の勘としては必要になるという思いの方が強い。
 幽体離脱クッキーを分析している上に効果は一時的という短時間のため薬の完成はすぐだった。

「ふぅ、何とか完成」
 対双子薬を完成させたローズは一息入れた。
「ロゼ、終わったみたいだな」
「対双子薬はバッチリだよ。それで、リクエストいいかな」
 ローズは声をかけて来たシンに料理のリクエストをしようとする。
「んー、構わねぇけど」
「それじゃ、肉じゃがをお願い」
 シンにローズは家庭料理をリクエスト。
「ふーん、肉じゃがね。せっかくの親睦会なのに庶民くせぇなぁ。まぁ、材料余ったら作ってやるよ」
 そう言いつつもこの後、シンは丹精込めて最高の肉じゃがを作り上げた。何せ幼少の頃世話になった人間が家庭料理が得意だったため、一番上手く作れるのだ。
「ありがとう」
 口は悪くても必ず作ってくれると知っているのでローズは嬉しそうに礼を言った。
 そうやって一息入れている時、ヴァーナーがやって来た。

「ねぇ、おばあちゃんとおじいちゃんもボク達と同じように食べたり飲んだりできないですか?」
 ヴァーナーはウルバス夫妻にも食べたり飲んだり出来ないだろうかと相談にやって来た。
「私もそんな薬を作りたかったんだけど。時間と材料が足りなくて」
 ローズが作業の手を止めて答えた。
「残念です〜」
 ヴァーナーはしゅんとしていた。
「ごめんね」
 ローズは屈んでヴァーナーに謝った。
「大丈夫ですよ。楽しくお喋りするのも親睦会です〜♪」
 ヴァーナーは明るい表情に戻った。何も飲食する事だけが親睦会ではない。同じ時間を共にする事だって親睦会だ。
「そうだね」
 ローズはうなずき、ハナエ達を見た。
「それは何ですか〜?」
 ヴァーナーが次に興味を持ったのは、テーブルの上にある完成した対双子の薬。
「これは双子のための薬でね。クッキーを使った人にしか効果がないの。完全に姿を消した時に見えるようにする物。見えたら何とか出来るでしょ」
 ローズは小さな声で薬の説明。
「そうですね〜」
 キスミにばれたらいけないと分かっているのでヴァーナーもつられて小さな声でうなずいた。
「使ってみる?」
「はいです!」
 ローズの言葉にヴァーナーはこくりとうなずき、完全に姿を見えなくした。
「それ」
 ローズは対双子薬をふりかけた。効果は自分の体で確認済みなので危ない事は起きない。

 途端、
「あれ? 完全に姿を消したはずなのに見えるです〜」
 青白く透き通った姿のヴァーナーが出現したが、すぐに効果は切れ、姿が見えなくなった。
「効果は一時的な物だからすぐに切れるけど」
「でもすごいです〜♪」
 ヴァーナーは見えるように元の青白い姿に戻った。
「これは内緒にしててね」
 ローズは口元に人差し指を立てながら言った。
「はい、内緒です! それじゃ、ボク戻るです」
 ヴァーナーも口元に人差し指を立ててうなずいてからハナエ達の元に戻って行った。