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リアクション
第一章 死せる竜の砦
「丁度いい、聞きたい事があったんだ」
シェヘラザードの部族の、長の家。
そこで、柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)はネバーランド機関長……オルヒト・ノーマンへと声をかける。
あちこちで仲間達がバタバタと準備を始めている最中ではあったが、どうしてもオルヒトに確認しておきたいことがあったのだ。
「何かな。私としては、男には微塵も興味はないのだが」
「そう言わず、質問に答えてくれないか」
そう言うと、恭也はこう口にする。
「理想追求機関ネバーランド、全ての「理想」を賛美し支援する秘密組織。そこに善悪の区別は無く、ただ対象者の理想を叶える為にサポートする……そこはあってるな?」
「そうだね」
「俺が聞きたいのはその「叶え続けた理想の果て」だ」
その言葉に、オルヒトは少しだけ興味をもったように眉をあげる。
「一つの理想を叶えたなら新たな理想を。これは理解出来るんだが、その先に何を求めてるのかが分からねぇ。それともあれか? 数多の理想を競い合わせ、最後まで残った理想を目的にしてるとかそんな感じなのか?」
「難しく考えすぎだな」
恭也の疑問に、オルヒトはそう答える。
「ネバーランドには、統一された理想は無い。理想の苦しみを知るが故に、他人の理想に手を貸さずにはいられない者の集まり。それがネバーランドの根本だよ」
その言葉を、恭也は反芻する。
それでは、組織とはとても呼べない。
呼べないが……こうして、1つの形にまとまっている。
それは、このオルヒトという男のカリスマか何かによるものなのだろうか?
しかし、オルヒト一人がどうにかなればネバーランドがどうにかなるようには恭也には思えなかった。
そう、始まりはオルヒトの言うとおりのものだったのだろう。
だが、今は違う。
オルヒトを象徴とし成長した組織は、すでにオルヒト自身にすら把握できない規模へと成長した。
いわば、理想を叶えるという現象と化した組織。
それがネバーランドという組織の正体なのではないか。
だとするならば、ネバーランドに最終到達点といったものはない。
そう気付いた恭也は溜息をつき、別の質問を投げかける。
「ついでにもう一つ、あんたの理想の女性像を教えてくれ。少しばかり語り合う必要がある」
「……永遠に幼さを残した純粋なる美。それが私が求め続ける理想だよ」
「そこのバカ二人。いい加減行くわよ」
想像通りの答えを返してきたな、という顔をする恭也の肩を、いつのまにかやってきていたアーシア・レイフェル(あーしあ・れいふぇる)の身体を借りているシェヘラザード・ラクシーがどつく。
一緒にされたくはなかったが……反論しても無駄な事は分かりきっていた。
聞くんじゃなかった。
そんな事を考えながら、恭也は溜息をつくのだった。
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