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リアクション
第二章 砦を破壊せよ
扉を抜けた先には、今回の一連の事件を潜り抜けてきた者達にはすっかりおなじみとなった眼鏡男子の姿があった。
眼鏡をキラリと輝かせると、その人物は毎度お馴染みの登場シーンの演出を始める。
この陰鬱な気分になる骨の砦の中で此処だけが明るい雰囲気を放っているのは、ひとえに彼の持つキャラクター性だろう。
「フハハハ!シェヘラザードよ、この砦は突破させ……ぼぐあっ!」
高笑いをあげて現れたドクター・ハデス(どくたー・はです)の顔面に、シェヘラザードの投げた拳大の石が命中する。
体育会系なアーシアの身体で投げた石は豪速球となって、ハデスの眼鏡に甚大なダメージを与える。
「な、なにを……」
「口上述べるヒマなんかやらないわよ!」
アーシアの身体を得たシェヘラザードの動きと反応速度は、前回の比ではない。
速攻でハデスとの距離を詰めると、シェヘラザードは鳩尾に飛膝蹴りをきめて、そのまま回し蹴りを放つ。
体勢を崩したハデスを高速の肘打ちの連打で床に沈めると、キレのいいバックステップでレキ達の元へと戻っていく。
「よし、撃破! 皆、急ぐわよ!」
「ま、待て待て! ここは通さんと言っただろう!」
「却下よ!」
却下されたハデスは、それでも鼻血をぬぐいながらポーズを決める。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス! ククク、女王器・水晶骨格により生まれる大英雄。その力、我らオリュンポスの世界征服のために利用させてもらおう!」
「いくわよ、第二投!」
「ごぎっ! ク、ククク。というわけで、貴様らをこの『死せる竜の砦』から先に通すわけにはいかん! さあ、ゆくのだ、我が部下、改造人間サクヤよ!」
「ちょ、ちょっと、兄さん! 改造人間って呼ばないで下さいって、何度言えばわかるんですかっ!」
「中々にしつこいわね、第三投……」
「あ、そ、そっちもやめてください! それ以上の投石はちょっと!」
高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)の取り成しでこれ以上石が飛んでこないと悟ったハデスは、再びポーズを決めて高笑いをあげる。
「シェヘラザードよ、今日こそは、貴様に借りを返させてもらうとしよう! さあ、サクヤよ!いまこそ真の姿に変身するのだ!」
「って、兄さん! 人の携帯を勝手にいじらないでくださいっ!」
なんやかんやとやっているハデス達の前に現れたのは、何やら服屋にある試着室のようなもの。
「フハハハ!説明しよう!サクヤは、携帯電話に秘密の暗号コードを入力することによりバトルコスチュームが蒸着され、戦闘用の真の姿に変身するのだ!その変身に要する時間は、なんと、たったの30秒!」
「ええっ!? こ、ここで着替えるんですかっ!?」
更衣室の中にあるハデスお手製のコスチュームを見ながら驚く咲耶に、ハデスは満足気に頷く。
「え、ええー……」
言いながらも渋々と更衣室に入っていく咲耶を見届けると、ハデスはドヤ顔でポーズを決めなおす。
「待つがいい……30秒程な!」
ハデスがそう言ってシェヘラザードに視線を向けると、シェヘラザードは女性陣と何やら話をしている。
「じゃあ、シリウスと麗は右と左を極めるのよ。レキは下から蹴り上げて……で、あゆみが背後から、あたしが前から……いいわね、あと25秒以内よ」
そこから行われた光景を語るのは、少々残酷な表現を伴う。
ちょっと女の敵チックなハデスに行われた20秒弱の処刑タイム。
白鳥 麗(しらとり・れい)とシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)によって右腕と左腕を極められたハデスの股間をレキが蹴り抜き。
崩れ落ちようとするハデスに、あゆみとシェヘラザードのアックスボンバーが前後から襲い掛かる。
それは、まさしく正義の合体攻撃。
ヒーローものにはお約束の、愛と勇気で構成されたラストスキルである。
決して、ちょっぴり女の敵な相手に対する残酷処刑ではない。
そう、絶対に。
「さ、参上……って、あれれ!? に、にいさーん!?」
咲耶が、ちょっとほつれた魔法少女コスチュームに着替えて出てくる頃には、ボロボロになったハデスが女性陣に四方八方から踏まれている状態だったという。
その光景を見ていた恭也達男性陣は、後にこう語る。
容赦の無い合体攻撃で敗れゆく姿は間違いなく悪の組織の大幹部であった。
あったが……女性陣を敵に回してはいけないということを、悟った日でもあった……と。
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