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その6:ゆりきす 


 
 突然、どこからともなくやって来た狂暴かつ獰猛な一団が空京の町へ襲撃を仕掛けてきていた。
『黒狼騎士団』と禍々しい旗をはためかせ武装した美女達。その数は八人。目は欲望に爛々と輝き、邪悪な笑みを浮かべている。
「ふははははは! 略奪だ! ありったけのものをすべて持っていけ!」
 どういうわけか、セフィー・グローリィアが、仲間を引き連れてこの街へやってきたかと思うと、辺り構わず強奪を始めたのだ。
 町に人通りはなく、よく見るといつもどおりの街並みも違和感を抱かざるを得ない光景だ。だが、衝動にのみ取り付かれたセフィーにとって些細な事でしかなかった。彼女は、引き連れていた他のコピーたちと共に、町を縦横無尽に駆け回り、目に付くものは全て奪いつくす。
 誰も止めるものはいない。この町は天国のようだった。
「ほう……」
 セフィーは目を細める。好みの美女を見つけたのだ。あの女は確か……。
「どこに行っていたんだ、エリザベータ。探したぞ」
 セフィーエリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)を見つけて近づいていった。隙を突いて襲い掛かろうとする。
「……やっぱりニセモノでしたのね!」
 エリザベータは隙を見せずに反撃に転じる。
 この町にやってくるなり、マスターたちとはぐれてしまい、散々ニセモノを見てきたのだ。もはや騙される彼女ではない。
「くっ……」
 戦いなれたエリザベータの攻撃に、生まれたてのドッペルゲンガーが太刀打ちできるわけがない。窮地に立たされたセフィーのドッペルゲンガーは逃げ出そうとする。
「そうはいきません! 覚悟なさい!」
 が……、敵を追い詰めようとしたエリザベータは、不意に全身から力が抜けていくのがわかった。
「え?」
「……くくく」
 ニセモノの一人が、隙をついて媚薬を撒き散らし、エリザベータの動きを封じるのに成功したのだ。
「あ……」
 甘い声を上げて、その場にがくりとひざまずいてしまうエリザベータ。媚薬は強力らしくすぐさま効果を発揮していた。全身が火照り疼いてくる。
「くくく……、たっぷり可愛がってやるとしよう」
 セフィーは嫣然と微笑むと、身体の自由が利かなくなったエリザベータの鎧と衣装をゆっくり脱がしていく。その衣擦れの感触さえ快感に変わりエリザベータは湧き上がる欲情に打ち震えた。
「や、やめて……」
「おやおや、予想外に反応が良いじゃないか」
 セフィーはエリザベータの全身を弄繰り回し始めた。
「ああああ〜〜っっ」
 エリザベータは身悶える。
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 と……。
「そこまでだ」
 そんなセフィーの前に立ちはだかったのは、コピーを探して町にやってきていたセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)だった。
セフィーは泉 美緒に頼まれ、パートナーのラナ・リゼットを探している最中に事件に巻き込まれてしまったのだ。
「セフィー、ここは……」
 美緒が怯えたようにセフィーの背後に隠れる。
この町はどこかおかしい。いつもと同じ通り、いつもと同じ建造物、だが、何かが違う……。しかし、それを考えている暇はなかった。
「死ね」
 セフィーとともにエリザベータを嬲っていた他の七人のニセモノたちが一斉に襲い掛かってくる。
「ふんっ、どいつもこいつも似たような格好をしているが、本物にかなうと思っているのか……!」
 セフィーは、ドッペルゲンガーたちの攻撃を見切っていた。ニセモノの考えていること、行動パターンくらいお見通しだ。一人ずつ潰していくとしよう……。
「くっくっく……、状況すら見極めずに突っ込んでくるとはバカな女だね」
 セフィーは、ぐったりと力を失ったエリザベータを抱えて武器を突きつける。
「言わなくてもわかるだろう。武器を捨てて大人しくしないと、この女の首が飛ぶことになる」
「……ふん、そんな脅迫に乗るアタシだとでも思って」
 ザクリ!
 セフィーの言葉の途中で、セフィーは本当にエリザベータの白い肌に剣を突き刺していた。致命傷ではないが、痛撃を与えるには十分だった。
「お前、まさか俺達のことコピーだからってなめてないか? なんなら、その後ろにいる女も一緒に切り刻んでやっても一向に構わないのだが?」
 残忍さが強調されているセフィーは相手を傷つけることなどなんとも思っていないようだった。
「……美緒、あんたは逃げなさい」
 セフィーは、背後で震えている美緒に小声で言う。相手の狂暴さを目の当たりにした以上、彼女だけはなんとしても逃して上げたかった。
「で、ですけど……」
「いいから、早く行きなさい!」
 セフィーは急かすように美緒を突き放す。
「……必ず助けを呼んできますから」
 美緒はセフィーを抱きしめると、彼女の唇に自分の唇を重ね合わせてくる。甘い吐息がセフィーに流れ込んできた。
「また無事で会いましょうね」
 顔を離したセフィーは微笑む。
 そして、セフィーは目くらましにとスキルを放った。【弾幕援護】、【破壊工作】、【情報霍乱】……。
 ニセモノたちが怯んだ瞬間を狙って、美緒はその場から逃げ出す。
 それを見届けてから、セフィーはセフィーに向き直った。
「……わかったよ、好きにしな」
 武器を捨てると、ニセモノたちがセフィーに飛び掛り引きずり倒し押さえつけた。
「ふふ……、あの女は後で捕まえればいい。お前は今からご奉仕だぜ」
 セフィーの凶暴な笑みに、ニセモノたちはあっという間にセフィーの身ぐるみを剥ぎ取り、全身を弄び始める。
 さしものセフィーも悲鳴を上げた。
「ダメよ、8人同時なんて無理よ、身体が持たない!」
「もう一人忘れてるだろ」
 セフィーは、くくくと笑う。
 すっかり快楽に目覚めてしまったエリザベータが、セフィーに抱きついてきた。
「ん……?」
 口移しで媚薬をセフィーの身体の奥へと流し込む。全く同じもの。効果は抜群だ。
「あうっ……」
 セフィーは全身をビクリと震わせると、その場に崩れ落ちた。火照って敏感になってしまった素肌にニセモノがすき放題触り始める。
「ああああ〜〜っっ」
 セフィーはエリザベータと共に快楽の渦へと叩き込まれ悶えるしかなかった。そして
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「……ん?」
 町を歩いていたアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は、美緒が駆けていくのを見つけて目を丸くした。彼女は、全身ボロボロで襲われて逃げてきたようにしか見えない。だが、それ以前に……。
 おかしい。この町は無人のはずなのに……。
「あれ? どうしてこの街にワタシたち以外の人がいるの……? だってここは……」
 パートナーのアリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)が首を傾げる。
「……どういうわけか、何人かのニセモノが間違えて紛れ込んできてしまったみだいだな。あまり荒らしてもらっては困るんだが」
 アキラは自分達だけの箱庭に闖入者がやってきたのを快く思っていないようだった。
「少し様子を見てくるか……」
 アキラは引き締まった表情になった。自分のあずかり知らぬところで、全然別の事件が起こっているらしい。無関係を装えないほどには、彼はこの街では神だったのだ。
 さて……。