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学生たちの休日10

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    ★    ★    ★
 
「さて、今年の汚れは今年の内に。というわけで、カレン、大掃除を手伝ってくれないか」
 相田 なぶら(あいだ・なぶら)カレン・ヴォルテール(かれん・ゔぉるてーる)を呼び止めて頼みました。
「いきなり、なんだ?」
 唐突なお願いに、ちょっとカレン・ヴォルテールが戸惑います。まあ、大晦日ですから、大掃除は変ではないわけですが、だからといって、ちょっと瀬戸際すぎるのではないのでしょうか。
「頼むよ。我が家で、まともに掃除ができそうなのは、お前しかいないんだ」
「その中に、お前は入っているのか?」
 聞き返されて、相田なぶらはスルーしました。
「うるさい奴らが出払っている今こそ、最大にして最後のチャンスなんだよ。変な邪魔が入らないんだぜ。頼む、頼むからあー!」
 いや、こんなに頼んでるすきに、自分でどんどんと掃除すればいいようなものなのですが……。
「ったく、しょうがねえ。このままほっといてもいいんだが……」
 そう言って、カレン・ヴォルテールはぐるりと室内を見回しました。
 はっきり言ってきたないです。一歩間違えればゴミためです。
「まったく。こんな部屋のまま年越しなんて、気分わりいからな。今回だけは手伝ってやろう」
「ほ、本当か! ありがとう、ありがとう、恩に着る!」
 カレン・ヴォルテールの両手をとって、相田なぶらが喜びました。いきなり手を繋がれて、カレン・ヴォルテールがちょっと顔を赤らめます。
さあ、さっさと始めるぞ
 相田なぶらの手を振り払うと、さっそくカレン・ヴォルテールが大掃除を始めました。
「まったく。普段からちゃんとこまめに掃除をしてれば、こんな切羽詰まって大あわてすることもないってえのに……」
 言いつつも、テキパキテキパキと部屋を片づけています。さすがは、相田なぶらがすべてをなげうってもお手伝いを求めたかいがあります。
 一応、頼んだ手前、相田なぶらも珍しくせっせと働いていきました。ただし、こちらはやりつけていないことをしているので、どったんばったんと、よけいな音と共に埃を舞いあげています。
「なんやうるさい思ったら、なぶら、いったい何をやってるん?」
 ドタバタと部屋を片づける音に気づいて、ブリジット・クレイン(ぶりじっと・くれいん)がやってきました。
「げっ、ブリジット……いたんだ」
 せっかく厄介者がいなくて作業がはかどると思っていたのに、これは計算外です。
「なんや、その言いぐさは。まあ、ちょうどええ。ちょっと手伝ってくれへんか。組み立てやっとるんやけど、力仕事が多くてな。こーゆーことは、おのこに頼まんとなあ」
「いや、俺は今大掃除してるから。どちらかというと、ブリジットにこっちを手伝ってほしい……」
「何言っとるんや。手伝うのはおのこと決まっとるちゅうの。ささ、早くこっちこいやて」
「しょうがないなあ。そっち手伝ったら、こっちも手伝ってくれよ」
「ああ、考えとくさかい。はよはよ」
 そう言うと、ブリジット・クレインが相田なぶらを自分の作業場へと引っぱっていきました。
「これを支えてほしいんや」
「これだな」
 言われるままに、相田なぶらが奇妙な部品の端っこを持って支えます。
「そうそう。さすが、なぶらはんや。役にたつで」
 そう言うと、ブリジット・クレインは変な部品を電動ドライバーで次々にネジづけしていきました。
「げ、部品がたらへん。なぶら、そこの機械で、これと同じもんちょっと削りだしてや。プログラムはセットしてあるさかい、ボタン押すだけや」
「これか?」
 相田なぶらが、指示された機械の前に立ってボタンを押しました。何やら機械が動きだして部品のパーツが吐き出されてきます。
「これどうするんだ? 組み合わせるのかあ?」
「ああ、そうや。頼んだで」
 ブリジット・クレインに言われて、パズルのような部品を相田なぶらが組み合わせようと悪戦苦闘します。
 そこへ、カレン・ヴォルテールがやってきました。いつの間にか姿を消してしまった相田なぶらを捜しに来たのです。ちょっと、いや、かなり怒ってます。
てめえら、人に掃除押しつけといて、何遊んでやがる。掃除どころか、これはなんだ、これは!」
 機械の削りカスやネジが散乱した部屋を見て、カレン・ヴォルテールが激怒しました。これでは、汚しているだけではありませんか。
「いや、これは……」
「早く掃除に戻れよ」
「ちょっと待ちなはれ、今なぶらを持ってかれると作業が止まるさかい、残しとってや」
「掃除が先でしょ」
「作業が終われば、そりゃ次は掃除やな」
 カレン・ヴォルテールとブリジット・クレインのかみ合わない言い合いに、相田なぶらはおろおろするばかりです。
「ダメだ、こいつら。こいつらのペースに合わせてたら、掃除なんて年が明けても終わりゃしねえ。まったく、結局俺一人で全部やるのかよ。くそう、後で覚えてろよ……」
 使い物にならない二人を諦めると、カレン・ヴォルテールはなんとか年内に大掃除を終わらせるために戻っていきました。