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リアクション
★ ★ ★
「ああ、いいお風呂だったよね。今度は、むこうのお風呂に行ってみよー」
パフューム・ディオニウスが、二人の姉の手を引っぱって遊歩道を進んでいきました。
少し離れて、タオルで前を隠した泉奈緒が、お尻を観葉植物の方にむけて隠すようにしながら横歩きでそろそろと進んでいきます。
「もう、出ましょうよお」
「えー、まだまだ珍しいお風呂がたくさんあるんですよ。今度はあっちに行きましょう」
ラナ・リゼットが、泉奈緒の手を引きます。
「むむ、まずい……」
泉奈緒の姿を見て、胸にブラジャーの束を巻いた医心方房内がちょっと顔を引きつらせました。ここでブラジャーを盗んだことがばれたら、取り返されてしまいます。
「助けてなのじゃー、救世主様ー」
医心方房内が叫ぶと、全裸の救世主と信者がささっと医心方房内の前に立ってその姿を隠します。
「きゃー!!」
いきなり現れた全裸の男に、泉奈緒が半泣きになってラナ・リゼットの手を引いて走りだしました。
「いや、あれくらい、どうってことな……」
あまり動じていないラナ・リゼットを引きずるようにして、プリけつを晒したまま泉奈緒が逃げていきました。勢いで胸に押しつけて下に垂らしたタオルが風に翻っていますが、全然気づいていません。
「今、房内の声が聞こえたような……」
騒ぎを耳にして、たまさか近くにいたアレックス・マッケンジー(あれっくす・まっけんじー)がやってきました。
大風呂近くの遊歩道で、ばったりと医心方房内たちに出会います。
「た、太郎さん、そ、その姿は……」
再び下半身マッパの医心方房内の姿を隠すように前に出る全裸の救世主木村太郎と信者末光透の姿を見て、アレックス・マッケンジーがあわてて逃げだしました。
「こ、心の準備が……」
救世主木村太郎にほのかな恋心をいだいているアレックス・マッケンジーにとっては、これはいきなりすぎます。過程とか、段階とか、段取りとか、なんにもありません。いきなりマッパです。こちらはいちおう水着を着てはいますが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのです。
「アレックスか? 何を急いで……。よし、追いかけるのじゃあ! そーれそれそれ!!」
あまり深く考えずに、医心方房内がアレックス・マッケンジーを追いかけていきました。
「やめろー、来るなー!」
全速力で脇目も振らず走ったアレックス・マッケンジーがつまずきました。その先は大風呂です。ばっしゃんと大風呂の中に突っ込んでしまい、アレックス・マッケンジーがぷっかあっとお湯に浮かびあがりました。
「いったい、何をして……、おおっ、貴仁? 他にも、いったい、ここで何があったのじゃ?」
のぼせてしまい、ぷっかりと大風呂に浮かんでいる鬼龍貴仁、国頭武尊、ブルタ・バルチャ、フィリップ・ベレッタを見て医心方房内が唖然としてつぶやきました。
★ ★ ★
「また、一泳ぎよー」
スイカをたらふく食べ終わったリン・ダージが、大浴槽へと飛び込みます。
「元気よねえ」
Pモヒカン族退治でちょっと疲れた小鳥遊美羽が、ゆっくりと大風呂の端っこの方に入って一息つきました。ちょうど、流れるお風呂が戻ってくる所です。
見ると、何かが流れてきます。ざんすかです。よく見ると、頭にパンツを被ったままお湯に顔を浸けています。
「いつものことかあ。いやいやいや、助けないと。コハクー」
ほっとくわけにもいかないと、小鳥遊美羽がコハク・ソーロッドを呼びました。
「今行く」
ちょっと貧血気味でふらふらしながら、コハク・ソーロッドがザブザブとお湯をかき分けてざんすかの方へと進んでいきました。あれは、溺れているのではなく、寝ているだけだと以前ざんすかは言っていましたが、本当なのでしょうか?
「あれ、なんか引っ掛かった?」
泳いでいたリン・ダージが、立ち止まりました。ロングバスタオルに何か引っ掛かったようです。外そうと引っぱると、逆にタオルを持ってかれてしまいました。流れてきた国頭武尊のどこかが引っ掛かったようです。
「ああっ、拾って、拾ってー」
ロングバスタオルを引っ掛けて流れていく国頭武尊たちを追いかけて、リン・ダージが叫びました。
「どうした……はうあっ」
振り返ったコハク・ソーロッドが、リン・ダージのぺったんこをもろに見てひっくり返ります。そこへ、のぼせて流されてきた国頭武尊と鬼龍貴仁がもろにぶつかりました。その後からも、フィリップ・ベレッタとアレックス・マッケンジーがぶつかってきて、最後にブルタ・バルチャが止めとばかりにぶつかってきました。そのまま、一同は団子になると、リン・ダージのタオルと共に流れる風呂の方へと流されていってしまいました。
★ ★ ★
「おっ、ここはちょっと珍しそうだな」
緑がかった風呂を見つけて、緋桜ケイがその中に入っていきました。
大風呂はバタバタしているので、やっと一人でのんびりとできるというものです。
香りのいいお風呂は、どうやら何かの入浴剤が入っているようでした。
「そういえば、ここには世界樹の樹液がまざっているお風呂があるって話だったなあ、これがそうか?」
ちょっとお湯を両手ですくってみて、緋桜ケイがつぶやきました。
お湯は、爽やかな香り、そう、新緑の森に近い香りがします。
それにしても、世界樹の樹液入りのお風呂だとしたら、なんと贅沢なお風呂なのでしょう。そんな物は、なかなか手に入らないはずです。とはいえ、ここは世界樹の中なのですから、この大浴場にとってはありふれた物なのかもしれませんが。
ちょっと、貴重なのか、そうでないのかよく分かりませんが、これもイルミンスール魔法学校の生徒の特権というところでしょうか。
「こうして、のんびりとお風呂に入れるということが、今年最初の贅沢かもしれないなあ」
いい香りにつつまれながら、緋桜ケイはのんびりと言いました。
★ ★ ★
「まったく、ここなら、胡散臭い奴らも来ないでしょう」
一人サウナに入って、アルビダ・シルフィングがやっと一息つきました。
Pモヒカン族たちを相手にして、ちょっと嫌な汗をかいたので、サウナですべて洗い流そうというわけでした。
「うん、いい調子だね」
焼け石に水をかけると、じゅっという音と共に水蒸気がサウナに充満しました。アルビダ・シルフィングの全身にも、玉のように汗が噴き出します。手で軽くこすってみると、ぬるりとした感触があって汗が拭い取れます。アルビダ・シルフィングは、軽くブラを浮かせると、手を使って中にたまった汗を拭い落としました。ちょっと危ない仕種ですが、誰もいないから平気でしょう。
ところが、そのときサウナの扉が開いてたくさんの男たちが入ってきました。
「まったく、せっかくのパンツーハットが、戦いでびしょびしょだぜ。ちょっと乾かさないとな。おっと先客か?」
濡れてくたっとなったモヒカンとパンツーハットのためにちょっと元気のないPモヒカン族たちが、アルビダ・シルフィングに気づいて声をかけてきました。
あわてて、アルビダ・シルフィングが身構えます。
「姉さんもどうだい、ここならパンツーハットもびんびんにツン立つぜ」
当然ですが、パンツを被っていないアルビダ・シルフィングにPモヒカン族たちがパンツーハットを勧めます。
「誰がそんな物被るか!」
こいつらは、どこにでも現れるのかと、アルビダ・シルフィングが渋い顔をしました。素早くPモヒカン族たちの間をすり抜けると、サウナを飛び出して扉を閉めます。そばにおいてあった鉢植えの木をへし折ると、それをつっかえ棒にして、サウナのドアを開けなくしてしまいました。
「ちょ、開けろ、開けてくれー」
「そこで干からびてしまえ!」
扉をどんどん叩くPモヒカン族を無視して、アルビダ・シルフィングは他の場所へと行ってしまいました。