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今日はガチで雪合戦!

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今日はガチで雪合戦!
今日はガチで雪合戦! 今日はガチで雪合戦!

リアクション


<part1 会戦>


 ヴァイシャリー近郊の平野は、厚く降り積もった雪ですっかり覆われていた。
 街道や低木はもはやどこにも見えず、荒涼たる白の砂漠だけが広がっている。
 空も地面と張り合うかのように白一色だ。陰を帯びた雲の大海原からはいまだ雪が産み出され、吹雪となって下界に降り注いでいる。
 その平野に立ち並ぶのは、雪将軍の軍勢。
 相対して、百合園生と彼女らに味方する契約者たち。
 雪将軍は百合園軍とは最も遠い場所に仁王立ちし、その手前を二頭の雪竜が螺旋を描いて浮遊している。さらに手前には二体の雪巨人、百合園軍の直近には雪隊長と雪兵の大軍がいた。
「さてさて、そろそろ準備は良いかのう?」
 雪将軍が問うと、ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)が傲然と顎を突き上げた。
「ええ、よろしくてよ。すぐに白雪の下に沈めてさしあげますわ」
 雪将軍が積雪に突き刺した大太刀を握り締めて声を張る。
「それでは、始めるとするか! 存分に戦を交えようぞ!」
 その言葉に弾かれるようにして、両軍がときの声と共に砲撃を開始した。

「行くわよ!」
「行きますわ!」
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は開戦前に作っておいた大量の雪玉を、雪軍団目がけて射出する。
 芯に氷を詰めて極限まで強度を高めた雪玉。
 その徹甲弾とも言うべき脅威を秘めた雪玉が、雨あられと雪兵たちに襲いかかる。雪兵たちは頭を貫かれ、あるいは胴を穿たれ、すぐさま五体が破壊される。
「反撃でござる!」「ござる!」「ござる!」
 他の雪兵たちが、さゆみとアデリーヌに雪玉を発射した。
 さゆみとアデリーヌは直ちに今の場所を離れる。寒さにかじかむ足を無理やり動かし、髪を白雪になびかせ、濃い息を吐いて走った。
 ヒュンヒュンと風切り音を立て、雪玉が体をかすめる。普通の雪玉ならともかく、特殊な魔法の影響を受けたこれらは、当たったら野球の硬球どころの騒ぎではない。
 さゆみは開戦前に雪玉を貯蔵していた別の場所にたどり着くや、サイコキネシスで撃ち出した。さゆみたちを狙っていた雪兵たちの体に雪玉がぶち当たる。そこへさらにアデリーヌの作った氷柱の投げやりが突き刺さる。
「ござるーーーーーーーーっ!」
 えげつない攻撃を受け、響く哀れな悲鳴。
「早く……熱いココアとシャワーを飲まないと……」
「シャワーは飲めませんわよ……」
 寒さに震えるさゆみとアデリーヌに、慈悲の心はほとんど残っていなかった。

 両軍のあいだを相乱れる雪玉。その中を駆ける狼がいる。
「狼さーんのお通りだ〜。潰れたいやーつは前に出ろ〜♪」
 狂気を感じさせる歌を口ずさみながら、青と黄の眼をぎらつかせ、狼の耳を逆立たせた契約者。ハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)である。クルドリッパーを爪モードにし、エネルギー刃から氷刃に変えている。
 彼は怒り狂っていた。
「お前らのせいで!」
 通り抜け様に氷の爪で雪兵を切り裂く。
「今日の商談が!」
 前を阻む雪兵に爪を突き通す。
「中止なんだよ!」
 周囲を囲んだ雪兵たちを回転斬りで綺麗に両断する。
 雪兵たちはそれぞれ二つの大玉に分かれ、動かなくなった。魔力の瘴気のようなものが大玉から抜け、雪将軍の方へと飛び去る。

 百合園側の多くの者が極寒の天候に思うような力を出せないでいる一方、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の契約者であるノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は元気いっぱいだ。
「ガンガン行くよ!」
 腕にたくさんの雪玉を抱え、前方の雪兵に投げつけながら雪将軍の方へと突進する。
 元気なのもそのはず。ノーンは氷結の精霊なのだ。寒いのは苦手どころが大歓迎で、まさに水を得た魚、いや氷を得た雪だるまといったところ。
 空を飛び交う雪玉をひょいひょい避け、あっという間に雪将軍と距離を詰める。
 雪将軍が眉を上げた。
「うむ? お主、人間というよりはわしらに近い存在じゃな? なぜ人間に味方する?」
「人間に味方してるんじゃないよ! 迷惑かけてるから、お仕置きしてるだけだよ!」
 ノーンは雪玉を素早く作り出し、雪将軍の兜に投げつけた。
 が、兜にはなんのダメージも与えられない。
 雪将軍が大太刀を軽く振り下ろした。居合いのごとき速度。ノーンは回避する暇がなく、手の前に氷の盾を作りだして防ぐ。
「きゃあっ!?」
 酷い衝撃に叩き飛ばされ、ノーンは悲鳴を上げた。雪将軍から離れた空中に浮き、じっと痛みに堪える。
「長期戦に……なりそうだね!」
 そう言うノーンを、雪将軍の周りでとぐろを巻く雪竜が睨んでいた。

「来てくれてありがとねー、アニスちゃん!」
 上園 エリス(かみぞの・えりす)に礼を言われ、
「ううん、エリスはアニスのお友達だもん! 困ってたら助けるのが当たり前だよ!」
 アニス・パラス(あにす・ぱらす)は白い歯を見せた。彼女の一行はアニスを通してエリスから応援をお願いされ、急きょ雪合戦に駆けつけたのだった。
 一行の周囲はアニスのフォースフィールドである程度の寒気を防いでいるものの、雪将軍のもたらす冷気は極めて強く、完全には抑え切れていない。
 カタカタと小さく震えているエリスの前に、スノー・クライム(すのー・くらいむ)が立った。
「ああ、ほら、マフラーがきちんと巻けてないじゃない。ちょっとじっとしてなさい」
 軽く眉をひそめ、優しくエリスのマフラーを巻き直してやる。
「なんか保母さんみたいですぅ〜」
 それを見てくすくす笑うルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)。身長15センチと小さな氷結精霊である彼女は、賢狼の頭の上にちょこんと座り、特に寒がる様子もなく平然としていた。
 スノーは背を屈めて自分の賢狼に話しかける。
「いい? 戦いのあいだ、アニスとルナをしっかり守ってちょうだいね?」
 賢狼は頭を撥ね上げて威勢良くウォンと答えた。
「そろそろ俺たちも始めるぞ」
「ええ」
 佐野 和輝(さの・かずき)の呼びかけに、スノーが魔鎧として和輝に装着された。和輝は少年の姿から一転、漆黒の外套をまとった長髪の少女の姿に変じる。白の雪原に忽然と生じる黒。
「頑張るですよぉ〜♪」
 ルナは小さな体を目一杯に共鳴させ、戦意を煽る歌を戦場に鳴り響かせる。
 一行は雪兵の軍勢に向かって走り出した。
 雪隊長と雪兵たちがこちらに気付いて攻撃してこようとする。
 ――アニス!
 ――うん!
 和輝からの念話を受け、アニスは走りながらホワイトアウトを発動した。
 猛吹雪が雪兵たちを襲い、彼らの視界を奪う。
 アニスはサッカーボール大の雪球を和輝の正面に生成した。和輝は渾身の力を脚部に込め、雪球を蹴り抜く。
 雪球は空気を貫いて飛び、雪隊長の頭部に激突した。そのまま、雪隊長を空高く叩き飛ばす。
「次だ!」
 和輝はぐっと拳を握り締めた。

 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)は雪将軍の呼びかけに応じて参戦した傭兵だった。
 吹雪は雪将軍に進言する。
「将軍閣下! もし連中が卑劣にも合戦中に百合園に侵入した場合に備えて、自分がトラップを仕掛けておこうと思うのですが、いかがでありますか!?」
 雪将軍は兜の顎を撫でて思案する。
「うむ……それは有効かもしれぬな。一任しよう」
「了解であります!」
 吹雪は敬礼して戦場を離脱した。部下のコルセアとイングラハムを引き連れ、百合園を覆う雪の壁に近づく。手を触れると、三人は吸い込まれるようにして内部へ通り抜けることができた。
 百合園の校舎に入る。
「で、どこにトラップを仕掛けるの?」
 コルセアが訊くと、吹雪はきょとんとして聞き返した。
「ん? 自分がいつトラップを仕掛けるなどと言ったでありますか?」
「今さっき言ったじゃない。雪将軍の目の前で」
「うーん、知らないでありますねー」
 吹雪はそそくさと階段を上り、更衣室の前で足を止めた。もちろん百合園であるからにして、女子更衣室である。吹雪はためらいなく更衣室に侵入した。
 イングラハムがぽんと触手を打つ。
「成程、今のうちに百合園生のパンツを入手しておこうというわけであるな」
「ご名答であります。他の傭兵たちより先に価値の高い下着を確保しておくのであります!」
 不敵な笑みを交わす吹雪とイングラハム。
「あなたたち……」
 コルセアは呆れて肩をうなだれさせた。
 吹雪とイングラハムは次々とロッカーを開け、陽気に中身を漁る。
「なかなか高そうなブラであります! 名のある方の物とお見受けするであります!」
「ああ、間違いない。これは我の持つデータと一致する。ラズィーヤ嬢のパンツだ」
「なんと! それは高値で取引されそうでありますな!」
「くっくっくっ、ボロい商売であるな……」
 金欲の権化と化している少女とタコだった。
 ――早くなんとかしないと……。
 コルセアは黙って更衣室を出た。携帯の着信音を鳴らしながら更衣室に入り直し、携帯を耳に当てて電話を受けているふりをする。
「え? ええ。分かったわ。すぐに行く」
 そして、パンツをポケットに詰め込んでいる吹雪と、パンツを頭から被っているイングラハムに告げる。
「二人とも、指令が来たわよ。雪将軍の軍団が劣勢になってるから、早く戻って来いって」
「……仕方ないでありますね。下着はあとで頂くであります」
 吹雪たちは更衣室を駆け出した。
 百合園を出て、壁をすり抜け、雪平野の合戦場に戻る。
「ワタシは連絡係になるよう雪将軍に呼ばれているから、先に配置に就いて。ワタシが電話で位置を連絡するわ」
 コルセアはそう言って、吹雪たちと別れた。
 しばらく経ってから吹雪に電話する。
「いい? そこを十二時の方向に。百メートルそのまま……そこよ!」
「ここ、でありますか?」
 指示通りに進んだ吹雪は辺りを見回した。
 いつの間にか百合園軍の勢力圏にまで入ってしまっている。
 吹雪がぎょっとして引き返す暇もない。
「あら。敵がこっちまで来てるわ!」
「絶好のチャンスですわね!」
 雪玉と氷柱を放ってくる、さゆみとアデリーヌ。
「獲物か」
 雪球を蹴り放つ和輝。
「攻撃攻撃攻撃だよ〜っ!!」
 ポンポン雪玉を投げまくるノーン。
 大量の雪が吹雪に集中砲火された。
「謀ったなコルセア!」
 吹雪は歯ぎしりし、雪に呑まれていく。
「……あなたの行いが悪いのよ」
 コルセアは安全圏でそっとつぶやいた。

 怒りのままに戦場を駆け巡っていたハイコドに、雪玉の嵐が浴びせられた。
「わぷっ! くっそ多勢に無勢……! お前ら全員――わぷぷっ!?」
 あっという間に雪山に生き埋めになってしまう。凍りつく雪が体温を奪っていくが、ハイコドの頭はさっぱり冷えない。
 ――いい加減に、しろよ?
 ハイコドは物音で周囲に雪だるまがいないことを確かめた。攻撃さえしなければ、火を使っても構わないだろう。所持していたシリンダーボムを取り出し、起爆させる。
「がああああっ!?」
 爆発、衝撃、そして光。周りの雪山を吹き飛ばすことに成功するが、ハイコドまでダメージを喰らって地べたに投げ出される。
「おのれえ……」
 頭から血をだらだら流して起き上がろうとするハイコド。もはや常軌を逸している。
「元気になるですよぉ〜♪」
 ルナが大地の祝福でハイコドの傷を癒した。
 戦場にはハイコドが埋められていた雪山に加え、そこかしこに山ができている。戦いの爪痕、後遺症が刻まれているのだ。
 これなら、とルナは考える。わざわざ攻撃を加えるまでもなく、敵の攻撃を利用して攻撃することができるかもしれない。
「すぅ……」
 ルナは雀のように小さな肺にいっぱい空気を吸い込むと、小さな口から――鼓膜も割らんばかりの凄まじい叫びを放った。
 叫びは衝撃波となり、暴力となって、戦場に点在する雪山に干渉する。
 そこかしこで雪崩が沸き起こった。雪崩は敵の雪兵を巻き込み、押し流して、パニックを引き起こす。
「わー、わー、凄いねルナー!」
 手を叩くアニス。
「ふふーん♪ 攻撃して雪山を作れば作るほど、私の攻撃回数が増えるだけですよぉ〜♪」
 ルナは誇らしげに、えっへんと胸を張った。

「作戦目標を伝える」
 小型飛空艇ヘリファルテのかたわらに立つ相沢 洋(あいざわ・ひろし)が事務的な口調で部下たちに告げた。
「我が隊は敵前衛部隊に対して空爆を仕掛ける。みとはブリザードでの無差別爆撃だ。エリスは洋孝と共に行動、擲弾による攻撃を仕掛けろ。洋孝、お前はアルバトロスでエリスの上空投擲を支援。卓越した運転技能持ちになったんだろ? 見せてやれ」
 部下たちは敬礼すると、それぞれの小型飛空艇に分乗して飛び立った。
 乃木坂 みと(のぎさか・みと)は小型飛空艇オイレ。
 相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)は小型飛空艇アルバトロスを操縦し、後部座席にエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)が同乗。アルバトロスには積載限界まで雪玉が積まれていた。
 洋も小型飛空艇ヘリファルテで飛び立つ。
 四人は合戦場の上空に昇ると、ホバリングして戦場を見下ろした。
 洋が作戦ポイントを指差す。そこは数百体の雪兵と雪隊長が陣地を築いており、百合園の陣地へ多大なる攻撃を加えていた。百合園側も懸命に反撃しているものの、氷盾や雪玉の迎撃による防御が厚く、なかなか攻撃が通っていない。
「あのポイントを集中爆撃する。行くぞ」
 洋が先頭となり、爆撃部隊が空飛ぶマンタのごとく滑空しポイントに向かった。
 地上の雪兵たちが接近に気付いて雪玉による対空砲撃を始める。
「基本に忠実に空爆ですか。まあ、頑迷固陋な教導団らしいですわね。そういうの好きですわよ」
 みとが飛空艇を運転しながら言った。
「僕は下で殴り合いしたかったんだけどな〜」
 洋孝が本音を漏らした。
「まあ、洋様が突撃するよりはマシですし。ヘリファルテを砲弾にしての特攻空挺降下、あれは支援するのが疲れますもの」
 みとが上空から雪兵たちにブリザードを放った。
 吹雪が沸き起こり、雪兵たちの雪玉砲火を掻き回し無効化する。
「空対地攻撃はお手の物なんでな。今回は特攻空挺降下は避けるが、機銃がわりに掃射してやるよ」
 洋は氷術を詠唱し、大粒の雹弾による射撃で地面を舐めていく。
 雪兵たちが縦一列に掃射を喰らい、体を反らして痙攣する。
 雪巨人が巨大な雪玉をぶん投げてきた。洋孝が巧みに雪玉を回避しながらつぶやく。
「やれやれ……。なんか、パイオニアってコマンダーよりも参謀職に向いている基本職業だねえ……。コマンダーじゃくなくてパイオニア系に走るかな」
「したければすれば良いのではないでしょうか。以上」
 エリスが雪隊長に雪玉を投擲した。高度によって位置エネルギーを付加された雪玉が雪隊長の脳天に直撃し、体を臀部まで貫く。その衝撃で雪隊長の体を構成する大玉が破裂して飛び散った。
「個人的にはどーでもいいことですけど、一部情報ではパンツマイスターが参戦だとか。これは貞操の危機です。というかパンツ欲しがる男子の気持ちがあまり理解できません、というかしたくないです。以上」
「まあ僕は分かるけどねー」
 洋孝が苦笑した。
 四人が空からの攻撃で地表を蹂躙していると、国頭 武尊(くにがみ・たける)がポータラカUFOに乗って向かってきた。サングラス姿でUFOの上に仁王立ちし、ハードボイルドな顔つきで腕組みしている。
「敵を確認しました。敵……一体。パンツマイスターです、以上」
 エリスが淡々と報告した。
「よーよー、ここで会ったが一億と二千年目! 君らに恨みはないが愛しい愛しいパンツのため! 潰させてもらうぜえっ!」
 武尊はポータラカUFOのロングハンドで雪玉を放ってきた。地上からは彼のアイアンハンターが二体、同時に雪玉の砲撃を繰り出す。
「散開ッ!」
 洋の号令と共に四人は四方に分かれた。
「こいつぁ多勢に無勢! だがこれでどうかな!?」
 武尊はテレパシーで匂い立つパンツの映像を洋たちの脳裏に流し込む。
「なっ!?」
 みとの操縦が、一瞬、ほんの一瞬だけだが、予想外の映像によって鈍った。
 そこに武尊の雪玉が襲来。小型飛空艇オイレに激突する。飛空艇は途端に白煙を巻き上げて闇雲に回転する。。
「被弾しましたか……操舵不能、緊急脱出します。近接戦闘用意! ブースト!」
 影の翼が背中に顕現し、みとは飛空艇から離脱して戦場に降下した。詰め寄せてくる雪兵たちに、冷気をまとった杖を構える。
「ルール上、氷での攻撃は問題ないはずですよね? 頭をかち割られたい人はどうぞ、立候補を」
 雪兵たちが八方から、みとに飛びかかった。
「くそ!」
 洋が飛空艇で突撃し、武尊に氷術の射撃を行う。
「おっと! 危ねえ危ねえ」
 武尊はポータラカUFOを飛ばしながら雪玉の投擲で応戦する。
 二者はもつれ合い輪舞を演じて戦った。
 そのあいだに洋孝が自分の飛空艇をさらに上空へと上昇させ、エリスが雪玉を――石を詰めた特製の雪玉を投擲する。
「おわあ!?」
 武尊のポータラカUFOを雪玉が貫通した。UFOは制御不能になって回転し始める。
「はっはっはっ、これまでのようだな! アディオス! ジーク・パンツうううう!」
 叫ぶ武尊のUFOはきりもみしながら合戦場を離れ、近くの林に墜落した。
 ボン、という爆音と共に黒煙が沸く。パンツを求め、パンツに散った男の勇姿だった。