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リアクション
『出演者募集 アイドルヒーローVS四天王』
「……うん」
出演者募集告知の貼り紙を見て、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナー、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)はひとつ頷く。
面白そうだ。
気が向いたので、出演を希望してみることにする。
面接は通り、何と四天王役に抜擢された。
やるからにはと、「下郎売の教本」を手に、役作りに取り組む。
衣装は支給されたが、持参の呪術師の仮面や狂科学者の銃などで更に雰囲気を出す。
松本 恵(まつもと・めぐむ)は、総選挙賞品のギフト券で、【「アイドルヒーロー/アイドル魔法少女」レストラン】を借り切った。
そして、そこで自分が主役のヒーローショーを開催することにしたのだ。
キロス達は、そのレストランで食事を終えたところだった。
無論代金はキロス持ちである。
入り口の所にイベント開催時間などの告知があったが見ていなかった。
突然、レストラン内に効果音が鳴り響き、エリシアが、大勢の手下と共に舞台に現れた。
「我が名は超科学魔女ブルプルワーズ! ニルヴァーナの支配者ですわ!
只今より、このレストランは我々超科学四天王が占拠いたします!」
手下達は、舞台を下りてレストランの壁際につき、ぐるりと客達を取り囲む。
「大変なのです!」
「ばっか、演出だろ」
うっかり騙されているハルカに、キロスが突っ込む。
「ようやく姿を現したな、超科学四天王! お前の野望は、僕が砕く!」
テーブル席から、すっくと恵が立ち上がった。
「チェンジ、ブレイズガード!」
掲げた変身ブレスレットが輝く。
「天空剣士、ブレイズガード!」
変身したブレイズガードは、ポーズを取って名乗った後、舞台へ駆け上がった。
「四天王なのに一人なのか、ブルプルワーズ! 他の三人はどうした?」
「ほほほ。四人もいたら、わたくしが目立ちませんわ。
ラスボスの称号はこのわたくしのもの。お前達、やっておしまい!」
手下達が、ブレイズガードに襲い掛かるが、ブレイズガードはそれらをことごとく返り討つ。
「少しはやるようですわね。しかし我が策の前に倒れなさい。
お前達、観客席から人質を連れてくるのです!」
ブルプルワーズは、テーブル席を見渡す。
壁際に立っていた手下達が、一斉にテーブル席に乗り込み、見繕っていた客、二、三人程を強制的に舞台上に引っ張って行く……という企画だ。
「きゃー」
『きゃー』
ハルカとアリスが腕を取られて立ち上がる。
通常、こういう時に選ばれるのは子供が基本なのだが、開拓中で危険も多いニルヴァーナにはまだまだ、子供の移住者は少ない。
このレストランの客も、子供の心を忘れない大きいお友達が多いのだ。
「くっ……卑怯だぞ!」
舞台に連れられたハルカ達を盾にするブルプルワーズに、ブレイズガードが叫ぶ。
「ほほほ。全ての民は我が奴隷。ひれ伏すがよいですわ。
お前達、やっておしまい!」
再び襲い掛かる手下達に、ブレイズガードは反撃できない。
おろおろとハルカは客席を見るが、キロス達は勿論、のんびり観戦している。
ひそ、とブルプルワーズが何かをアリスに囁いた。アリスはにやりと笑う。
「ほほほほ。いいざまですわ、ブレイズガード!
とどめはわたくしがさしてさしあげましょう!」
『隙ありー!』
その時、アリスが、わざとらしくブルプルワーズを突き飛ばした。
ハルカを引っ張って、ブレイズガードの方に逃げる。
「今だっ!」
立ち上がったブレイズガードが、一気に手下達を吹き飛ばして叫んだ。
「ライジング・ボルテニクス!」
「はっ、この力は、まさか、伝説の……ぐはぁぁぁっ!」
威力を弱めたものの、臨場感を出す為に本当に発動させた轟雷閃を喰らい、四天王兼ラスボスの超科学魔女ブルプルワーズは、意味あり気な言葉と共に一撃で滅びた。
『助けてくれてありがとう、天空剣士ブレイズガード!』
ノリノリのアリスが、胸元で両手を組んで、礼を言う。
ブレイズガードはこくりと頷いた。
しかし、ニルヴァーナに真の平和が訪れるまで、ブレイズガードの戦いは終わらないのだ。
ブレイズガードが遠くを見つめたタイミングで、レストラン内が暗転した。
「ハルカ、初めてヒーローショーに出たのです」
図々しくカーテンコールにも舞台に居残って、ブレイズガードやブルプルワーズ、手下達と一緒に客席に愛想を振りまいたアリスとハルカは、楽しそうに戻って来た。
「そいつはよかったな」
キロスはどうでもいい返事を返す。
ともあれ、食後のコーヒーをお代わりもして、ゆっくり休み終えたキロス達は、それぞれ満足して、店を後にしたのだった。
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