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リアクション
エースたちと舞花たちが合流して階段を下りていくと、そこは円形闘技場の周囲を囲む、客席のような空間に繋がっていた。
闘技場の直径は、150メートルは越えているだろう。天井は高く、半球状に覆われている。
その天井も、壁も、床も、至る所を蔦が埋め尽くしていた。
そんな闘技場の中央に、三人の人影があった。
「今の揺れで扉ができたけど……ここが円形闘技場、鍛錬所の中央かな?」
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、HCを見ながら闘技場の中央に向かって歩いていく。
「犬が反応している……この近くに聖杯か、あるいはそれに近いほどの何か特殊な物があるみたいだよ」
クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)は、キロスが持っている聖杯の臭いを嗅がせた牧神の猟犬を連れてきていた。
「キロスとユーフォリアに連絡をしておくよ。ここに向かうように伝えておく」
その後ろでクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)はHCを手に取った。
「昔、ここで闘技大会とかやっていたっていう記録はないかな? 宝物庫とかに、商品として聖杯をおいてあったかもしれないよね!」
「確かに、ここから新たに繋がる部屋があると考えた方が良さそうだね」
クリスティーは、闘技場の奥側、左右に部屋がある事を見留めた。
「あの部屋を調べてみよっか!」
詩穂がそう口にした刹那、ぼこ、と床に穴が開く。
「っ下から来るよ!!」
クリストファーが叫ぶ。床にひび割れが走る。闘技場の中央に、直径一メートルはあろうかという太い蔦を無数に持つ、巨大な花が姿を表した。
ラフレシアのような巨大な花弁の中央は壷状になっており、その周囲を取り巻くようにあらゆる方向へと太い蔦が伸びている。
「人喰花の一種だね……恐らく、この鍛錬所中に蔦を伸ばしているのもこいつだ」
闘技場の客席から、エースが植物を見下ろして呟く。
「恐らくあれは人間に敵対心を持っているようだから、気をつけた方が良い」
「植物なら、焼き払うのが一番ですわね」
エリシアは、さっと空飛ぶ箒ファルケに跨がると、闘技場の中央目掛けて飛び立った。
「俺たちもサポートしよう」
エースも弓を構え、矢をつがえた。メシエも杖を構え、杖先に雷を呼び起こす。
「今のうちにあの部屋捜索しよ! トラップとか発動したらまずいもんね」
ノーンは舞花とともに、その場を離れようとした。目ざとく見つけた食人花が、二人目掛けて蔦を伸ばす。
その蔦をメシエの雷が打ち抜いた。
「邪魔はさせませんわよ!」
エリシアは花の周囲を飛び回りながら、真空派を無数の蔦目掛けて放った。比較的細い蔦は切れ、地に落ちる。
エースは花弁目掛けて、左右から矢を放つ。二本の矢は弧を描き、花の中央にクロスするようにして刺さった。
「消耗戦にならないよう、一気に倒そうね!」
詩穂は襲い来る蔦を覇者の剣で次々と薙ぎ、中央の花へと向かっていく。
「こいつは住み着いたモンスターだろうけど、まだトラップの敵もいるだろうしね」
クリストファーも野生の感で上手く蔦をかわしながら、詩穂の後を追う。
蔦が左右からクリストファーを捉えた。ぎちぎちと体に絡み付いていく。
「く……仕方ないね」
クリストファーの頭が、みるみるうちに龍へと変化する。巨大な牙を覗かせ、咆哮と共に噛み付いた。
耳をつんざく奇声を上げて、植物が揺れた。詩穂はその隙をついて、花弁の中央に剣を突き立てた。
クリストファーの体から蔦が離れる。
「離れて! 焼き払いますわよ!」
上空からエリシアが叫んだ。
「早く、こっちに!」
クリスティーの誘導で、詩穂とクリストファーは闘技場の隅にある扉目掛けて走った。
二人の背後から、花が最期の力を振り絞りいくつかの蔦を伸ばす。その蔦を撃ち落とすように、エースとメシエの矢と雷が降り注ぐ。
「いきますわよ!」
エリシアの声と共に、闇黒の業火が人食い花を取り巻いた。焦げる臭いと植物の上げる奇声。
その炎が消えた時には、焦げついてピクリとも動かない、人食い花の残骸が闘技場の中央に残っていた。
「倒したみたいだね。引き続き警戒を怠らず、調査を進めよう」
クリスティーはそう言って、ノーンと舞花が入っていった闘技場端の扉へと足を向けた。
「皆さん、無事でしたか」
皆が部屋に入ると、中にいた舞花は安堵したように、ふっと優しい溜め息を漏らした。
この部屋は管理室だったのか、壁沿いに何やらボタンやレバーなどが並んでいる。
「いろいろ調べてみたんだけど、このレバーが怪しいと思うんだよね」
ノーンがそう言って、中央にあるレバーを指差した。傍のプレートに、クリスティーが目を向ける。
「模擬戦用機晶姫の檻を開く……か。これかもしれないね」
「じゃあ、キロスたちが集まったら開いてみよっか」
詩穂がそう提案すると、同時に、部屋の外で轟音が鳴り響いた。
「トラップか何か発動したのかな?」
クリストファーは部屋から出て、闘技場の天井を見上げた。
……先ほどまで蔦に覆われていたはずのドーム型の天井が開き、鍛錬所内に複数の小型飛空挺が乗り込んで来ていた。
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