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【琥珀の眠り姫】密林深く、蔦は知る。聖杯の謎

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【琥珀の眠り姫】密林深く、蔦は知る。聖杯の謎

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 円形闘技場に集まった調査隊、上空から現れた空賊たち、模擬戦用機晶姫が入り乱れる鍛錬所内。
 そのちょうど中央部分に開いた穴の淵では、キロスがアルテミスとリカインを相手に朽ちた人喰花の上で斬り合っている。
「キロスさんの周りにはどうしてこんなに女の人が集まるんですか!?」
「知らねえよ! というか、命狙われるのは別に嬉しいことじゃないだろ!」
 キロスはアルテミスの乱撃を受け止めつつ、七神官の盾で殴り掛かってきたリカインの攻撃を避ける。
「二人相手に、余裕そうね?」
 ふふ、と不敵な笑みを浮かべて、リカインは再度咆哮した。リカインは盾で防御をすると共に攻撃を繰り出す。
「っと!」
 キロスの眼前を、機晶姫のビームライフルから放たれた銃弾がかすめた。
「面白いじゃねえか」
 キロスは剣を振りながら、ちらりと周囲を見まわした。
 キロスのすぐ傍では、散らばった空賊たちを相手に、笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)が銃弾を次々と放っている。
「ここが踏ん張り時だね。とにかく片端から倒していこう!」
 ライフルを構え、弾幕を張る紅鵡。その背後で、轟音と共に壁が崩れた。
「懲りない面々ね……ゴキブリ並みにしぶといったらありゃしないわ!」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)と共に、紅鵡が相対する空賊たちの前に躍り出る。
 二人は闘技場内の壁を破壊する事で、固まっている空賊たちを各個撃破できるよう分断していたのだ。
「大人しく退却していれば良かったと、後悔するわよ」
 セレアナのライフルから、轟雷を纏った弾丸が放たれる。闘技場内で混乱に陥った空賊たちは、その雷に打たれて倒れる。
「っと、また随分と派手にやってくれてんな」
 キロスの周囲の戦闘員と機械剣カグツチで斬り合いながら、柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)がキロスに声を掛けてきた。
「遺跡ごと生き埋めにするってとこか?」
「とはいえ、聖杯を手に入れるまでは埋められたら困るけどな」
 そう言ってキロスは剣を振りかざすと、襲いかかってくる空賊たち目掛けて斬り掛かっていく。
 その時、一体の機晶姫が、紅鵡たちへとライフルを向けた。
「来るよ!!」
 機晶姫の頭部を狙って、紅鵡は銃弾を撃ち込んだ。セレンの二挺拳銃からも、次々と銃弾が放たれる。
 ビキニ姿で戦うセレンに、周囲にいる空賊たちは、あるいは戸惑い、あるいは嘲笑うように斬り掛かり……。
 その冷静さを欠いた判断の隙を狙って、セレアナのライフルが火を噴く。
「戦場だと分かっているのかしら?」
 セレアナの声は、セレンに額を打ち抜かれた空賊の耳には届かなかった。
「さ、片付けるわよ!」
 セレンは再び機晶姫に向き直ると、そのコアを打ち抜いた。

「もう大人しく降参しなさい!」
 スナイパーたちが戦う傍で、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、魔獣の幻影を纏った拳を振り下ろして空賊を叩きのめしていた。
「できれば、退いてもらえないかな」
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が日輪の槍をぶんと振り下ろし、空賊の武器を弾き飛ばした。
「撤退できないなら、降参してほしい。殺すつもりはないんだ」
 コハクの諭すような声も恐ろしいのか、武器を失った空賊は震え上がっている。
「空賊たちは不老不死の薬を手に入れるために戦ってるってことなの?」
 美羽は両手を上げた空賊の腕に手をかけて、問いかける。黙り込む空賊。
 仕方ない、というように、美羽はその腕を絞り上げた。
「あああああああああああ!!!!」
 空賊の悲鳴が木霊する。
「答えてくれないと、どこまでも絞っちゃうからね」
 ゆっくりと腕をねじ上げながら告げる美羽に、空賊は掠れるような声を上げる。
「ふ、不老不死の秘薬なんて信じていねえよ!!」
「あれ、そうなの?」
「俺たちはただ、金で雇われただけで、眠り姫のことだって、噂では知っているが、そんなもののために戦ってるんじゃ」
 喘ぐように空賊は答えた。美羽たちの周囲を銃弾が飛び交っている。剣と剣がぶつかり合い、弾きこすれる音がする。
「じゃあ、お金のためだけに、こんな危険を冒して遺跡内の能力者と戦うの?」
 コハクが横から訊ねた。
「……首領には恩義があるからな」
「あの女首領、人望のある人なのね。方向性を間違えなければ、良い人だったはずなのに」
「私たちにも、その空賊と話をさせてもらえる?」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が、美羽の傍に来ていた。
「うん、後は任せるね!」
 美羽はその空賊を縄で縛り上げると、コハクと共に、機晶姫たちと戦っている皆を助けに向かっていった。
「……で、そのシャンバラ古王国の不老不死の秘薬って噂、どこから流れてきてるのか知っているのか?」
 ダリルがダークネスウィップを手にしたまま、空賊に問いかける。
「ふ、不老不死の秘薬なんて俺は知らねえよ」
「つまらない嘘は止めろ。『不老不死の秘薬なんて信じていねえ』と言っていただろう。知っている事を話せ」
 空賊は口を閉ざした。そして、しぶしぶといった様子で再び口を開いた。
「……だが、俺たちは秘薬については何にも聞かされちゃいねえよ」
「恩義のある女首領様のやる事なら、下っ端は何一つ情報を与えられなくても命をかけられるんだな?」
「あの方を愚弄するな! 狩られた流れ者を拾ってくれるような人は、あの方ぐらいだ」
「狩られた――それは義賊に、かしら?」
 ルカが口を挟むと、空賊は「しまった」という風に大きく目を見開いた。
「……もういいだろ。俺程度の下っ端が知っている情報なんて、たかが知れてるんだ」
「それだけで十分分かった。所詮は義賊に体する逆恨みだろう」
 ダリルとルカは、ユーフォリアとシルフィスティへと視線を向けた。
 ルカたちと時を同じくして、キロスもその二人へと目を向けていた。