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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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【ぷりかる】始まりは消えた花冠から……

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第二章 祭司の救出


 四季の森、入り口。

「グィネヴィアの事はみんなに任せておけば大丈夫だし、ルカ達は祭司を捜しに行こうか」
「花冠を作る事が出来るのは祭司だけだからな。花が集まる前に救助したいところだ」
 ペルム地方からそのまま来たルカルカ・ルー(るかるか・るー)は『テレパシー』でグィネヴィア捜索組のためにグィネヴィアと交信した後、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)を引き連れ、祭司捜索に乗り出していた。
「そうだね。捜している途中で花を見つけたら摘んでおこうかな」
 ルカルカはフウラ祭司だけでなく花集めの方も協力しようと考えていた。捜索を優先するが、植物に出会った時は通り過ぎずに摘み取ろうという心持ちぐらいは持っていてもいいかと。
「それならポーチェラカがいいだろう。高温乾燥に強い花だ。悪環境の中でも耐えている可能性は高い」
 『博識』を持つダリルは熱帯地帯でも咲いているだろう花の種類を挙げた。
「じゃ、それを見つけたら忘れずに摘むという事で。早速、祭司を捜しに行こうか」
 ルカルカはダリルに答えるなり、勢いよく花探しが始まっている森の南方に足を踏み入れ、他の捜索者達と事前に決めた自分の担当区域へ向かった。

 四季の森、南方。

 ルカルカ達は花妖精から身を守るためにダリルの『空飛ぶ魔法↑↑』で飛んで森の中を捜索していた。
「フウラ祭司、いたら返事して!」
 ルカルカはあちこち呼びかけるが、返事は返って来ない。
「……花妖精達に襲われたと考えると意識を失っているかもしれないな」
 ダリルはルカルカの大声に何も反応が返って来ない事に万が一を推測していた。
「それなら急がなきゃ」
 ルカルカはダリルの推測を聞くなり、一層捜索に力を入れた。ちなみに二人は捜索対象が花妖精であるためランタンと耳栓は持って来ていない。装備したり解除したりが煩わしいくその時間さえも捜索に当てたいと考えているから。
 巨石や泉の方にも向かうもどこにもいなかったが、場所確認が出来たのでよしと考えた時、花妖精から情報を得たコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)から知らせが入った。

 連絡終了後、
「……仲間も知らないみたいだよ」
 ルカルカは残念そうにダリルに報告した。コルセア達が助けた花妖精もフウラ祭司の所在を知らなかったのだ。それぞれの捜索状況の確認だけで終わったのだ。
「それは仕方無いだろう。これだけ広い場所の上に不測の事態が起きたんだからな」
「だね。あっ、これダリルの言ってた花だ。摘んでおこうっと」
 ダリルと話していた時、ルカルカはポーチェラカを発見し、捜索に支障が出ない程度摘み取り、また捜索に戻った。
 その途中、大勢の要救助者で往生している九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)達に遭遇し、放っておく事が出来ずに救助に加わった。

 四季の森、入り口。

「……相変わらずあの人は巻き込まれて行方不明か。とりあえず俺は祭司とやらを捜しに行くか」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は馴染みのある展開にため息を洩らし、グィネヴィアは他の者達に任せ祭司捜索に森の南側に侵入した。捜索対象が森の花妖精なので道具は持たない事にした。

 四季の森、南方。

「……声を聞いてしまうだけで心停止とはマンドラゴラか。いや、怨霊とかもあるとかいうから、バンシーも加わってるか……そんな事はどうでもいいな」
エヴァルトは祭司捜索をしながら花妖精についてグィネヴィアの説明を思い出していた。その間もしっかり捜索の目は光っている。
「……暑い所だな。寒冷地ほどではないにせよ、この暑さでは体力の消耗が激しいだろうな。傷を負っているならなおさら」
 エヴァルトはしおれる植物を何度も見送りながらフウラ祭司の身を案じ始める。フウラ祭司が無傷であれば良いが、その可能性は少ない。
「……急ぐか。上空から捜したいが、場所が森だ。そうもいかんか」
 エヴァルトは上空から捜したいところだが、森のため見落とす可能性があるので駆け回って捜す事にし、他の捜索者と打ち合わせをして決めた担当区域の捜索を開始した。
 途中、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)達と情報のやり取りをしたり助けを請う花妖精に出会い人命救助にも従事する事に。

 四季の森、入り口。

「祭司救出に行くでありますよ!」
「そうね。花が集まる前に何とか救出しましょう」
 吹雪とコルセアは花集めとグィネヴィア救出を他の人に任せ、祭司捜索に乗り出した。
 「行くでありますよ!」
 吹雪の声を合図に二人は森へ侵入した。捜索対象がこの森の花妖精なのでコルセアが持つランタン以外は持って行かなかった。

 四季の森、南方。

「……凄い場所ね」
 コルセアは歩きながらあまりの暑さにしおれた植物や乾燥しきった大地に視線を巡らせた。もちろん祭司捜索は忘れていない。
「早速来たでありますよ!」
 『先制攻撃』を持つ吹雪は襲撃者を視認出来た時点で『しびれ粉』で鈍らせ『手刀』で気絶させた。
「ランタンで」
 『行動予測』を持つコルセアは瞬時に背後から襲って来た襲撃者をランタンで追い払った。
「……祭司は花妖精だから耳栓を持って来ていないから気を付けないといけないわね」
 コルセアは持って来ていない耳栓の事を話題にした。襲撃者が発する自分達の死に際の声に注意しなければならないのだ。
「声を発する前に追い払えばいいでありますよ!」
 先ほど問題無く花妖精を退けた吹雪は事も無げに言った。
「確かにその通りだけど。相手が大勢だと厄介よ」
 少々能天気な事を言う吹雪にコルセアは呆れたようにツッコミを入れた。
「問題無いでありますよ。その前に祭司を救出するであります!」
 吹雪は迷いの無い足取りで先を進む。これまた能天気故の答え。
「……本当に大丈夫かしら。でも他の捜索者もいるし」
 コルセアはランタンを見ながらため息を吐いてから吹雪について行った。

 捜索開始後、しばらく。
 吹雪達は傷付いた女花妖精に出会っていた。
「もう大丈夫よ。祭司がどこにいるか知らないかしら?」
 コルセアは『歴戦の回復術』で女花妖精の傷を癒してからフウラ祭司の居場所を訊ねた。
「……多分、巨石とか泉とかにいると思うけど。もし、花を探しているのなら違う所にいるかも」
 女花妖精は答えてから何とか飛び立ち、森の外へと行った。
 花妖精を見送った後、
「とりあえず連絡を取った方がいいわね」
 コルセアは他の捜索者にも伝えようとする。
 その時、
「祭司とやら、いたら返事を! 俺はエヴァルトという者だ。グィネヴィア姫の要請により参った者だ!」
 草むらを挟んだ向かい道からフウラ祭司を捜すエヴァルトの声が聞こえて来た。
「人でありますよ! そちらはどうでありますか?」
 吹雪は声を辿り、エヴァルトの所に行った。
「……あれは」
 コルセアも連絡を後回しにし、吹雪の後を追った。

 吹雪達とエヴァルト、合流後。
「……何度か呼びかけてはいるが、気配さえしない」
「そうでありますか。こちらもまだ見つかっていないであります」
 と吹雪とエヴァルトが話している間にコルセアはルカルカに連絡した。
「……助けた花妖精から情報を得たのだけど、巨石や泉にいるかもしれない、それ以外の場所かもしれないという不明瞭な答えが返ってきたのよ。連絡をし合ったところ巨石にはいないらしいわ。やはり、他の場所にいるみたい」
 と連絡を終えたコルセアは他の捜索者から入手した情報も一緒に吹雪とエヴァルトにも伝えた。ここでルカルカ達が巨石や泉周辺を確認した事を知った。
「……他の場所、か。捜索場所を分担しているとはいっても厄介だな」
 エヴァルトは周囲を見回しながら洩らした。人手はいても捜す範囲は多い。
「そうね。でも捜す場所は一カ所減っただけでも良しとしないといけないわね」
 コルセアもエヴァルト同意見だった。減った面積よりも捜索面積の方が圧倒的に多い。
「そうと決まれば捜索を再開するでありますよ!」
 これ以上ぼやぼやしていられないと吹雪は祭司捜索のために再び歩き出した。
「何か新しい情報があればすぐに知らせて」
 コルセアは手早くエヴァルトとの話しを終わらせ、吹雪に付いて行った。
「あぁ、分かった」
 エヴァルトもコルセアとの話しを終えるなり捜索に戻った。