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リアクション
【ノース】
――大樹 ユグシール
その麓に立ち入ると、枝葉で空が覆われ陽の光が差さない暗いところだった。
「暗! 暗い! 何も見えない! ここどこだ?」
暗いとはいえ何も見えないわけではない。幹に打ち付けられたランプが薄ぼんやりと足元のコケを照らしている。しかし、壺に封印されている魔王 ベリアル(まおう・べりある)には何も見えない。透過性の高い菊右衛門でもなければ、壺の中まで光は差さない。
何故こうなったかのかを説明すると。昨日、あまりにもベリアルが子供よろしく遊びすぎたせいだ。
それならまだいいかもしれないが、この世界の通貨をあまり持っていないというのに、中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)の目を盗んで、この怪しい壺を露店で買ってしまったのが行けなかった。
壺を買ってご満悦に宿で寝ていたところ、ベリアルは綾瀬によって壺の中に押し込まれたのだった。どうやって入れたのかは考えないほうがいいだろう。
綾瀬は壺を地面に置くと、その中に向かって言った。
「おとなしくしててください。後で邪教の館にて、合体させてあげますので」
「僕は火龍剣の材料じゃないよ! 嫌だァ! 赤おじさんと同じにはなりたくないぃ!」
壺からくぐもった叫び声が漏れる。
「終盤ではあまり役に立たない剣を作るのもどうかと思うので、ここは私をベースに二身合体はどうですか綾瀬? 私が本来の姿に戻れるかもしれないわよ?」
漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が提案に「それもよさそう」と綾瀬が頷く。結局それでもやっぱりベリアルは合体素材。
「それでドレスに物理反射がついてくれたりするのでしょうか? 合体のことは後にして、一つここはこの世界樹様にお話を」
綾瀬がここを訪れたのはそれが目的。このユグシールがパラミタに樹立する世界樹と同じ存在ならば、これも何らかの意志を持つのでと考えている。
手を幹に当て、綾瀬が大樹に語りかける。
「突然で申し訳ございませんがお話の時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
……
「私達は『別の世界』から事故でこの世界に来ました。言わば、この世界の異物(イレギュラー)です」
……
「ですが、私達はこの世界を荒らすつもりがありませんわ。ただ、私達が元の世界に帰れるようご協力をお願いできないでしょうか?」
……
「勿論ただでとは言いません。私達にできることがあれば、なんなりと申しつけくださいませ」
――、
葉音がざわめく。
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