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―アリスインゲート1―後編

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―アリスインゲート1―後編

リアクション

「いやー災難だだったすね! でも会社に入らずに済んでよかったんじゃないすか?」
 口調がチョコちゃんな富永 佐那(とみなが・さな)がESC勤務のLOに話しかける。
 ここは、ESC近くカフェテラス。ちょうど森林公園の側にあるここでエレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)と三人で午前の紅茶をしていた。
 襲撃のために正門はしまっており、入社出来ずにいた彼女を捕まえた。勿論ただのOLを捕まえたわけではない。彼女は秘書業務をしているとのことだ。一際化粧に力を入れているのを見てカマかけしたというわけだ。化粧の違いで部所を見分けられるのは佐那が女性であるかだろう。
「ほんとよかったわ。早番で受付に行った同僚が心配だけど、それよりも自分の身の安全よね。銃声とかすごい音してたしもしかしてあれが企業テロってやつ?」
 同僚を全く心配しているとは思えない軽い口調で佐那に話す。まさかそのテログループの一味とも知らずに。
「じゃないすかね? 【グリーク】からの差し金とか?」
「ああ言えてる。あっちの人たちて軍事力に物を言わせる野蛮人ばっかりだし」
 分り易いほどの差別思想か、それとも戦争をふっかけられた側の嫌悪感か。どちらにせよやはり【ノース】人の【グリーク】人に対する心象はいいものではないのはわかっていた。佐那は合わせて相槌を打つ。
「そーっすね。アングラではヤバイのが徘徊しているとか聞くし、国境街の難民が何人か連れ去られたりしてるとか」
「あ〜あそこの難民ね……そのうちみんないなくなったりしてね。そのほうがいいけど」
 自国の戦争難民に対しての発言とは思えない。何らかの理由があるのだろうか、もしくは勤務している会社の暗部を知っての嘲りか、しかし、そこには言及しない
「そいえば、街の大使館でバルドル王子あったすよ」
「あの可愛い王子様に? 本当? でもそれだと大丈夫かしら」
「大丈夫って何がすか?」
 カップを置きOLが身を乗り出す。
「ここだけの話、その王子様が今日会社を見学しに来る予定だったの。見学ていってもほとんど視察らしいんだけど。もしかして、今やっている騒ぎも王子様の命狙いとかだったりして」
「なんすかそれ? 国家反逆罪もいいところっすね」
 王族の視察の話は本当だったか。しかも、若い王子に人体実験を知られるわけにもいかないため、今日はまだアリサに何をするかも出来ないのも確定だ。まさに今のうちがアリスを助けるチャンスなのだ。